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75 - 第33話:幸福度ランキングの真実

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2025年10月30日

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第33話:幸福度ランキングの真実



朝のニュース


渋谷の巨大ビジョンには「世界幸福度ランキング 速報」と大きな文字が映し出されていた。


アナウンサーが微笑む。

「今年の幸福度ランキング、第1位は──大和国です!」


画面には、緑丸の旗を背に笑顔で暮らす市民たちの映像。

続いて「2位 佳州」「3位 オーストラリア」「最下位 未確認敵国」とテロップが流れた。


制服姿の高校生まひろは、黄緑のパーカーを羽織り、灰色のリュックを肩にかけてビジョンを見上げた。

「ねぇミウおねえちゃん……ぼくたちが世界でいちばん幸せなんだって。本当かな……?」


隣のミウはラベンダー色のワンピースにモカのカーディガンを羽織り、髪を後ろでふんわりまとめていた。

「え〜♡ すごいよねぇ。だって大和国では毎日“安心の物語”が配られるんだもん。

学校も配給もアプリも、ぜんぶ幸福のために用意されてるんだから♡」


コメント欄には「おめでとう大和国!」「未確認敵国ざまぁ」「幸せはここにある」と文字が踊った。





幸福度の仕組み


スーパーのレジ前。


棚には「幸福度貢献商品」のシールが貼られた大和牛やヤマト米。

購入すると「幸福度ポイント+1」と表示される。


まひろは首をかしげ、無垢な声で言った。

「ぼく……ただご飯を買っただけなのに、どうして“幸福度”が増えるのかな」


ミウはカーディガンの袖を直しながらふんわり答えた。

「え〜♡ だって、幸福度って“感じるもの”じゃなくて“集めるもの”だからだよ。

協賛品を買えば、市民全員のランクも上がって、大和国の順位も守れるんだよねぇ♡」





裏側の現実


中央庁舎の地下。


巨大なモニターに映るのは各国の“幸福度スコア”。

だが数値は、市民の買い物記録やSNSの「安心」「感謝」の投稿数だけで計算されていた。


担当官が無表情に言う。

「不安発言は自動削除。幸福度は上昇。

未確認敵国は“恐怖映像”を流し続けた結果、スコア最下位」


上司は頷く。

「大和国が常に1位であること──それが人々の安心に直結する」





夜の配信


まひろは水色のシャツに短パン姿。机に肘をつき、無垢な瞳でカメラを見た。

「ぼく……ただ“ほんとに幸せなのかな”って思っただけなのに、世界で1位って聞くと、安心しちゃうんだ」


ミウは髪をふんわりとまとめ直し、ピンクのリップを光らせながら微笑んだ。

「え〜♡ 数字は未来の約束だよ。

まひろが疑っても、ランキングが証明してくれるんだから安心していいんだよ♡」


コメント欄は「やっぱり1位!」「未来も安心」「幸福は大和国にある」で埋め尽くされた。





結末


暗い部屋。


緑のフーディ姿の**Z(ゼイド)**が幸福度ランキングの画面を見つめ、冷たい笑みを浮かべた。

「幸せを数値にすれば、誰も疑わない。

不幸は削除され、恐怖は未確認の敵に押し付けられる……。

幸福の物語こそ、最強の監獄だ」


無垢な問いとふんわり同意、その裏で“幸福度ランキング”は人々の感情を操作し、大和国を絶対の1位へと固定していった。

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