コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
衝撃の事実を知ってからは、俺───猿山らだ男は天乃を今まで通りに普通の目では見られなくなった。
「……んー……。 」
根気強くずっと天乃を眺めていても、いつもと変わらないように見える。それでも、少し違いがあるのはわかった。
あの男子集団に遊びを誘われた時は大体オーバーの感情表現をしていたり、怪我をしていても相手に殴られたであろうに、転けたと他の人に笑っていたり……なんだか、俺の知っている天乃ではなくなったような気がした。
「……。」
それでも、今は天乃に集中して仲直りをしたとしても、家庭環境の問題が俺に残っているのだから、裏の天乃を知りながら我慢をし続けるのは正直しんどい。……まだ、前の事情を知らない頃の俺の方が楽だったのかもしれないな。
「らだぁ。」
「!?!?」
はぁ、と一息ついたところで、ふと聞こえた喧嘩中の相方の声。目線を上げれば、目の前にいたのは天乃だった。
「あ、あまn───・・・」
「こっち来て。」
オレが喋り終える前に、天乃はオレの手を引く。その手は、昔と変わらずやさしく暖かった。
……………
「「………。」」
2人して沈黙の時間が続く。酷く気まずくて、少しばかり冷や汗をかく。
今いる場所は屋上の前の階段で、2人してそこで見合う形で立っている。天乃はずっとオレをまっすぐに見つめていて、正直何かを伝えたくて葛藤しているのはすぐにわかった。それでも、やはり喧嘩中の俺たちに伝えるか、伝えないべきか悩んでいるらしい。
「……はぁ。」
オレは一言ため息をついてから、喋り出した。
「聞いたよ。お前の……あー、友達とは言いにくいあの男子集団から。」
そう告げると、相手は「! な、なんで・・・」と困惑した表情でかなり驚いていたが、オレはそれに笑みを返した。
「当たり前だろ、親友なんだから。」
そう一言返すと、相手は驚いた顔しながらも、次には笑顔になって
「生意気なやつ。」
と返した。
久々のこいつとのどうでもいい会話は、この世のどうでもいいことよりもとても大事なことのように思えた。
「聞いたってことは、やっぱりオレが酷い扱い受けてることを聞いたの?」
「ま、そうだな。でもそれだけ。休憩時間ってのは長くねーから。」
そう告げると、天乃は悩んだ顔をして、また喋り出した。
「じゃあ、俺から話したいことがある。」
その言葉に、唾を飲み込む。いつもお調子者で、アホでバカなあいつからの漂う真剣な空気は、今まで以上に重かった。
「…どんと来やがれ。」
そう言うと、天乃は一つ深い呼吸をしてから真剣な眼差しでオレを見つめた。
「───オレは、らだぁが好きだよ。」
「……………は?」
真剣な空気を感じたのはなんだったんだろうと思うくらいに、軽々しい言葉が導入となった。それでも相手はこの言葉に語弊があると思ったのか「あ、友情的にね!!」と焦りながら返していた。いや、オレが突っ込みたいのはそこじゃねーんだよ。
「真剣な話じゃねーの…?」
呆れたようにそう返すと、天乃は「そうだよ!でも今から話すの!!」とムスッとした顔で伝えるため、オレは少し笑いながらもドンっと構えた。
「───オレは、らだぁが好きだよ。でも時々、羨ましいって感じちゃうの。」