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「───オレはお前が羨ましかった。」
突然の報告に、オレは息を呑んだ。それでも突っ込む場面でも、茶化す場面でもないことはわかっていたオレはそのまま真剣に話を聞いた。真剣に、天乃の話に耳を傾けた。
「頭が良くて、みんなから優しいって言われて、みんなの心配ができて………」
急な褒め言葉に、少しニヤニヤしてしまったのは内緒だが、それでも嬉しいのは本当だ。こいつは素直で、純粋だからそんな嘘をつくことはない。そうわかった上で聞くと、本当に胸が暖かくなる。
それでも、これからこいつの口から発せられる言葉はあまりいいものじゃないんだろうなってわかっていた。これが親友の勘よ。
「……オレは最初から何にもなかった。親も、兄弟も、感情も、心も…。」
「うん。」
緊張しながら話す天乃に、オレはちゃんと聞こうとしている誠意とこいつの緊張を和らげるために優しく返事をする。
「───何回死のうって考えたことか。お前はコミュニケーションが苦手だけど、才能があって…」
「………うん。」
───正直言ってしまえば、オレに才能はない。ただ強要されてきただけ。…それなのに、自由に生きれる天乃こそが辛い思いをしていたなんて想像だにもしていなく、少しびっくりした。
別に差別とかではなく、単純に。でも少しこいつの本音を聞けたような気がして嬉しかった。
「羨ましかったよ。オレはアホで、マジで間抜けで、迷惑ばっかかけて…正直、生きてる価値なんて無かった。」
俯きながら、緊張しながら話す天乃を俺は急かすことなくゆっくりと話を聞いた。
「でも、お前に出会ってから、毎日がめちゃくちゃ楽しくてさ!!」
「!」
ふと聞こえたこいつ特有のでかい声。良い言葉ばかり話すこいつに、オレは少し困惑した。なんと言うか……照れ?というのだろうか…少し恥ずかしい。
「優しくて、真面目で、かっこよくて、面白くて、楽しくて、楽しくて、楽しくて───・・・」
笑顔で語る天乃に、緊張はなかった。満面の笑みで、オレをまっすぐに見つめて、伝えた。
「オレ、お前のこと大好きになっちゃったんだよ!!」
興奮気味に伝えてきた天乃は、興奮のあまり俺に近づいてきてそう口にした。酷く動揺したけど、こいつのこの目の輝きは、すごく大好きだ。
天乃は少ししてオレと距離が近いことに気づいたのか焦って距離を取り、ごめんねと謝ってきた。
「ごめんね……俺だけが楽しくなっちゃって。らだぁは迷惑…だよね。」
少し悲しそうに答える天乃に、オレは少し悩んだけれど小さな声で答えた。
「……ばーか。オレも天乃といて楽しいに決まってんだろ。」
そう答えると、天乃は一瞬キョトンとした顔をして、次の瞬間には徐々に満面の笑みに近づいていき、オレを抱きしめた。
「もー、らだぁったら!!嬉しいこと言ってくれんじゃんっ!!!」
「暑苦しいから離れろっつーの。」
「本当は嬉しいくせに〜」
「おいっ!!」
両者ともお互いがいないと”自分が自分じゃなくなる”のは一緒のようだった。