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ガーネットは式の余韻に浸っていた。プロポーズされたその後、ディスケンス公爵家のルビー公爵令嬢と王太子殿下の結婚式が半年後に決まり、オスカーたっての願いでその前に式を挙げたいとのことで、プロポーズから三ヶ月後にガーネットの結婚式を挙げることが決まった。
もちろんガーネットはすぐにでも結婚したかったので、これについて特に不満はなく逆に自分だけがオスカーを愛していると思っていたので、オスカーにそこまで執着されることに満ち足りた気分にすらなった。
ところが問題はそれからだった。オスカー、ミラー侯爵、ガーネットの父親であるエバンズ侯爵、そして義父となるディスケンス公爵が結婚式についてそれぞれ意見を言い始め、一大プロジェクトの如く一致団結して計画し始めたので、ガーネットはひたすら結婚式前のプログラム、主に自分磨きなどのスケジュールをこなさねばならず、あっという間に式当日になってしまった。ガーネットはもともと小さい教会で式を挙げて……などと考えていた。だが、もちろん公爵家の結婚式ではそんなことはできるはずもなく、式は盛大に執り行われた。
そんな式を執り行うことに、若干気後れしていたものの、実際の式は想像以上に素晴らしいものでガーネットはなんの不満もなかった。
流石あれだけの侯爵や公爵が集まって計画を立てただけはあると言うものだった。
公爵家の結婚式ですら、この状況なのだから王太子殿下の結婚式はさぞ凄いものになるのだろう。
ガーネットは今日の式を終えてそんなことを考えていた。
だが、ガーネットにとって一番の山場はこれからだ。なんと言ってもこれからオスカーとの初夜を迎えるのだ。
メイドたちにすっかり身体を磨き上げられたガーネットは、二人の寝室の中央で佇み緊張しながらオスカーが来るのを待った。
こんなときはどうすれば良いのか、そんなことを考えていたが、ふと背後に気配を感じ振り向いた。すると面前にオスカーが立っていた。部屋に入ってきたのも気づかなかった。ドキリとして身体が跳ねる。オスカーはいつもと変わらぬ笑顔で
「やぁ、驚かせてしまったね」
と言った。オスカーを見ると軽くガウンを羽織っているだけで、鍛え上げられている身体のラインが強調され、これからこの身体に抱かれるのだと思うとガーネットはドキドキした。オスカーの顔を見上げると、ガーネットの布越しに薄く透けて見えている身体を見ているのがわかった。
恥ずかしくなり、胸を隠す。オスカーは微笑み
「ガーネット、緊張している? 私は今君のあまりの美しさに圧倒されているよ。君は君を形作る全てが美しいね」
と言って、ガーネットの頬を右手の指先で下から上に撫でた。冷静を装っているが、オスカーの息遣いが少し荒くなっているのに気づく。
オスカーはそのままその手をガーネットの背中に回し、一歩前に出た。
ガーネットはドキリとして、身体がビクッとする。オスカーはクスっと笑い
「大丈夫か? 私は君が嫌だと言ってもこれから君を私のものにしようとしている」
と言って熱のこもった瞳でガーネットを見つめ、左手でガーネットの髪の毛をもてあそぶ。
ガーネットは
「それは、私の望むことでもあります」
と、オスカーを見つめ返す。オスカーは一瞬驚き、笑顔になると
「ガーネット、君らしいね。そうやって私を翻弄する。そんなふうに煽られては、今夜は歯止めが効かないかもしれない」
と言った。ガーネットは頷くと
「私の全てをオスカーのものにしてください」
と言った。途端にオスカーに深いキスをされる。密着されたオスカーの身体から、ガーネットが激しく求められていることがわかった。ガーネットはそのままその身をオスカーに預けた。
激しく、官能的な一夜が過ぎたあと、目を覚ますとオスカーの胸の中に収まっていることに気づいた。もぞもぞしているガーネットにオスカーが
「おはよう、良く寝ていたね。私は君が愛しくて、可愛くて一睡もできなかった。君をこうして胸の中に閉じ込めていること自体夢のようだ」
と言った。ガーネットは恥ずかしくなりながらもオスカーをギュッと抱きしめると
「私だって、オスカーが愛しくて仕方ありませんわ。でも昨日は、そのオスカーがあまりにも、その、私を攻めた立てて、意識が飛んでしまったので」
と言うと、オスカーが微笑み
「君を攻め立てた自覚はあるよ、今まで我慢していたぶん、我慢が効かなかったすまない」
と言った。その時腹部にオスカーの高まりを感じ、オスカーをハッと見上げた。オスカーは苦笑し
「大丈夫、怯えないで。自分でなんとかできるから」
と、ベッドから出ようとした。ガーネットは慌ててその腕をつかみ
「待って! オスカーの欲望を叶えるのは、私の希望でもあるのです」
と言った。オスカーの顔がパッと明るくなり
「ガーネット、君は本当に最高だ!」
と言うと布団に潜り込み、官能的な時間はその後もしばらく続いた。
ガーネットは、こんなにも刺激的な日々は最初のうちだけと思っていた、が、それは意外にもずっと続くこととなった。オスカーは時間があるかぎりいつでもガーネットを求めた。
「こんなにも美しく素晴らしい妻を娶ったのだから、仕方がない。執務中だって、君とのことを思い出してしまう。愛しているのだから仕方がない」
と、オスカーに宣言され、ガーネットもそれに答えるという幸せな日々が続いたのだった。