テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ワンダーフォーゲルよ、聞いてくれ。
どこからが来た渡り鳥よ。
君は死についてどう思うか?
ある人は空への唯一の飛び方だと言い、
ある人は地の底への堕ち方だと言い、
またある人は世界の循環だと説いた。
自分は、どれも正しく、どれも間違いだと考える。
なぜなら、飛び方は知っているからだ。
腕を大きく広げ、羽ばたかせる。
我らはそれをしないだけだ。
なぜなら、堕ち方は知っているからだ。
谷底は見ず、ただ前を向いて歩く。
我らはそれをしないだけだ。
なぜなら、巡らないものもあるからだ。
あの子の思いも、あの人の願いも。
きっといつか、忘れ去られてしまうのだろう。
自分はね、思うのだ。渡り鳥。
死とは、過程が大事だと、思うのだ。
飛ぼうとし、堕ちようとし、忘れないようにして初めて、本当の意味での死が訪れる。
でも、君は既に空を飛べるだろう?
どう思う。
嗚呼、ワンダーフォーゲルよ。
もう行ってしまうのか。
良ければ羽をよく見せて欲しかった。
でもしょうがない。君は次の大陸へ進まなければいけないからね。
じゃあ、私も飛び立つとしようか。
また会えることを願うよ。
「最期に、言ってたんだって。『私はまだ飛ぼうとしていない』って。」
コメント
1件
読了しました。詩的な独白がとても美しくて、胸にじんわり沁みました。死を「飛ぶ」「堕ちる」「巡る」という三つの視点で描きながら、最後の「私はまだ飛ぼうとしていない」という言葉で全部が反転するような感覚…。飛ぶことを知っているのに、しないまま終わる切なさが刺さりました。物語としての余白も豊かで、何度も味わいたくなる一編です。
ちゅ~かめん
19
ぬいぬい
3,501
2
12