テラーノベル
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俺が渡辺家に来たのは、十六のとき。
父が亡くなり、
母もその後を追うように亡くなった。
どうしていいか分からず立ち尽くしていた俺に、手を差し伸べたのが、渡辺組の組長だった。
父が昔、世話になっていた縁らしい。
「生活も、学費も面倒を見る。その代わり働かないか? 」
と言ってくれた。
そして俺は渡辺組の人間になった。
しばらくして、
「翔太の世話係を頼みたい」
と言われた。
その時会った翔太様は、まだ十二歳。
少し警戒もあるが、興味津々で俺を見ていた。
💙「……お兄ちゃん?」
💚「はい?」
💙「新しい人?」
💚「はい。今日から翔太様の世話係になりました亮平です」
そう答えると、翔太様は一瞬考えてから、ぱっと笑った。
💙「お兄ちゃん、かっこいいね」
予想外すぎて、言葉に詰まった。
💚「……あ、ありがとうございます」
💙「ねえねえ、何歳?」
💚「十六歳です」
💙「じゃあ、俺より四つ上だね!」
四本の指を立てて笑っている翔太様。
それから──
💙「これ、わかんない」
俺の部屋に宿題を持ってきて、聞いてくる。
💚「どこですか?」
💙「ここ」
問題を見ると、基礎的なところでつまずいてる。
💚「ここは、こうしてみると分かりやすいですよ」
そう説明をすると、翔太様は目を丸くした。
💙「すげ…頭いいんだ」
💚「普通ですよ」
💙「俺さ、勉強嫌い」
💚「誰でも勉強は嫌いですよ」
💙「でも、お兄ちゃんが教えてくれるなら、頑張ってもいいかも」
ズキュン
この時、何かに撃たれた気がした。
──それから、
少しずつ、距離は縮まっていった。
普段から俺の後ろをついて歩くようになったり、
俺が学校に向かう時は、歩いて一緒に行きたいと言って、小学校まで送った日もある。
怖いテレビを見てしまったときは、一人は怖いと、一緒に寝たこともあった。
こんな純粋で、無防備で、まっすぐな子を、
誰かに汚されるわけにはいかない。
俺が守る。
何がなんでも。
──
💙「亮平?」
翔太様の声で、意識が戻った。
💚「はい?」
💙「信号、青だよ」
💚「…失礼しました」
車を発進させる。
今はもう、
「お兄ちゃん」なんて呼んでくれない。
過保護だって文句も言われる。
それでもいい。
翔太様が、安心して、なにもなく過ごせるなら。
コメント
19件
おぉ〜😳✨ きゅうサンの小説って…心に訴えかけて来るものがあるよね🤔
