テラーノベル
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信愛が連絡を済ませてからしばらくして、信愛がドアの前で待っていると、ベージュのビジネススーツを身に纏った銚子が姿を現した。
「あ!お母さん!」
信愛はやってきた銚子の姿を見つけると、ぱっと表情を明るくする。
「こっちこっち!」
そう言って勢いよく手を突き上げ、こちらへ来るよう大きく手招きした。
「分かった分かった」
銚子はスーツを着ているだけではなく、きちんと化粧をしていた。
その姿を見た信愛は、満足そうに頷いた。
「うんうん♬いい感じ♬
似合ってるね♬綺麗綺麗♬」
「まったくアンタは調子
いい事言って! 大変だったのよ?」
「ごめんってば」
銚子は呆れたようにため息をつくと、信愛に確認する。
「もう、その先生の奥さんには話してあるのよね?」
「うん!知り合いの園長先生が来る!って話してある」
「よし」
銚子は乱れがないか服装を整えた。
準備を終えると、二人はドアを開けて玄関に入る。
しかし銚子は足を止め、黙ったまま辺りを見回していた。
「お母さん?どうかした?」
「え?ああ、ううん。なんでもないわ」
「早く行こうよ。ひよりさん待ってるよ」
「ええ、そうね」
歩き出そうとした銚子だったが、ふと思い出したように信愛を呼び止める。
「あ、あと!」
「なに?」
「その奥さんの前でお母さんって呼ばないでよ?」
「分かってるってば」
そう答える信愛を見ながら、銚子の胸には小さな不安が残っていた。
(本当に分かってるのかしら?)
銚子は心の中でそう呟き、一抹の不安を感じながらも、ビングへ足を踏み入れた、その直後だった。
「おか──」
反射的に母を呼びかけそうになった信愛は、慌てて口をつぐむ。
(じゃなかった)
「園長先生!」
どうにか言い直した信愛は、何事もなかったかのようにひよりへ向き直った。
「こちらがひよりさん」
銚子は心の中で深いため息をついた。
(はぁ~、まったく、言った側から
これか・・・先が思いやられるわ)
そんな銚子の胸中を知らず、ひよりは立ち上がって丁寧に頭を下げた。
「はじめまして。高館ひよりと申します」
銚子も深々と頭を下げる。
「お話は伺っております。私は──」
銚子はしばらく考えて続ける。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「八幡保育園で園長をしております
宜保千鶴子と申します。宜しくお願い致します」
即興で考えた保育園名と偽名を口にする。
「本日はご足労頂きありがとうございます」
ひよりは丁寧に頭を下げる。
「いえいえ、とんでもありません」
「とりあえず、お掛けください
今お茶を持って来ますので」
「ありがとうございます」
ひよりが席を外すと、銚子は案内されたソファへ静かに腰を下ろした。
その様子を見ていた宗太郎が、信愛に小声で尋ねる。
「白縫さん?この人が?」
信愛は、どこか誇らしげに頷いた。
「はい、お母さんです」
信愛がそう答えると、宗太郎は改めて銚子へ向き直った。
「今日はすいません。無茶なお願いをしてしまい」
申し訳なさそうに頭を下げる宗太郎に、銚子は穏やかな表情を浮かべる。
「いいんですよ。それより、あの人形が?」
「はい・・その・・・有栖です」
宗太郎は傍らに置いていた人形をそっと抱き上げると、銚子へ差し出した。
受け取った銚子は何も言わず、腕の中の人形をじっと見つめる。
その様子を見守っていた茜が、待ちきれないように尋ねた。
「どうですか?何か感じます?」
さくらも続けて問いかける。
銚子はしばらく人形を見つめたまま、慎重に口を開いた。
「うー・・ん、そうね・・確かに
信愛から聞いた通り何かの気配は感じるわね」
「え?お母さんも霊感があるんですか?」
宗太郎が驚いたように目を見開く。
「え?ああ、まあ多少はね・・・」
すると茜が思い出したように口を挟んだ。
「信愛のお婆ちゃんは有名な霊媒師だったんだって」
「れ、霊媒師?」
「ああ、そういやそうだったね」
さくらも納得したように頷く。
銚子は少し困ったように笑った。
「あはは、そんな有名な霊媒師じゃありませんでしたよ」
「なるほど・・・」
宗太郎は銚子の言葉に納得したようだった。
だが、銚子の視線は再び腕の中の人形へと落ちていた。
何かがいる。
確かに、何かの気配は感じる。
銚子は人形を見つめながら、わずかに眉をひそめた。
「それにしても、なぜこの家には」
そこで言葉を止め、改めて室内へ意識を向ける。
「こんなにも──」
銚子が何かを言いかけようとしたその時、言葉を遮るように、紅茶とクッキーを手にしたひよりがリビングへやってくる。
「お待たせしました
良かったらお召し上がりください」
「わざわざありがとうございます」
銚子さ軽く会釈をした。
しかし信愛は、銚子が何を言おうとしていたのか気になっていた。
(ん?お母さんって今、なんて言おうとしたんだろ?)
疑問が残ったが、本題は人形だと思い直し本題に移ろうとする。
コメント
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×××さん、こんにちは🌷 第223話、拝読しました。 信愛ちゃんが「お母さん!」って言いかけて慌てて「園長先生」と言い直すところ、思わず笑っちゃいました。銚子さんの「先が思いやられるわ」という心の声が、もうおかしくて😌 でも、銚子さんが人形をじっと見つめたあと「何かの気配は感じる」と口にした瞬間、空気が変わった気がしました。そして、言いかけて止めた「こんなにも──」の続きがすごく気になります…!