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「うわぁ……凄い!」
「な? 都心のイルミネーションにも劣ってないだろ?」
駅周辺が色彩豊かな光の海に包まれ、奈美は感動の声を上げた。
駅前の広場には、青いLEDでライトアップされた光のトンネルが見え、大きなセンターツリーの周りには、写真を撮っているカップルや家族連れで人集りができている。
所々に、トナカイの光のオブジェもあり、神殿風のホール前の広場には、超有名な猫のキャラの大きなバルーンが見えた。
ここのイルミネーションに来る人の多さに、奈美は密かに驚く。
今日はクリスマスイブ。
多摩センター駅周辺のイルミネーションを、豪と一緒に見ながら過ごしている。
今年のクリスマスイブは日曜日、クリスマスは月曜日なので、豪と奈美は一日休暇を取った。
互いに想いを通わせたあの日。
まだ暑さが厳しい時期だった。
豪の好きな場所に奈美を連れて行きたい、と言ってドライブデートしたのが、ここである。
彼から『冬になると駅周辺がライトアップされて、中心には大きなクリスマスツリーがあって、すげぇ綺麗なんだよ』と教えてくれて、『イルミネーション、一緒に見に行こうな?』と言ってくれたのだ。
豪は、先月のベイエリアの夜景ドライブに続き、またも願いを叶えてくれた。
奈美は、彼に渡すクリスマスプレゼントを持参している。
きっと豪は、彼女が持っている物がプレゼントだと分かっているだろう。
でも、彼は一切触れてこないし、気遣いがありがたく感じる。
センターツリーを見上げながら、豪が申し訳なさそうな面持ちで、奈美を見やった。
「この近くに電鉄会社系のホテルがあったんだけど、そこに部屋を取ろうと思ったんだ。けど営業終了しちゃったんだよな。他のホテルもこの時期はどこも予約がいっぱいで部屋が取れなかった。せっかくのクリスマスイブなのに、ホテルでゴージャスに過ごせられなくてゴメンな」
豪が奈美に謝る事なんて、何一つない。
先月のお台場に行った時も、夜景が綺麗なシティホテルの部屋を予約してくれて、食事代も宿泊費も全額出してもらったのだから。
奈美は彼を見上げながら、緩やかに笑みを湛えた。