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「豪さん。私は今、初めて男の人と一緒にクリスマスを過ごす事ができて、すごく嬉しいし幸せなの。だから謝らないで?」
「奈美……? クリスマスに恋人と過ごすのは、俺が……初めてなのか?」
彼が奥二重の瞳を大きく見張った。
彼の中では、彼女が元彼ともクリスマスを過ごしたと、思っているらしい。
「そうだよ。クリスマスを男の人と過ごすのは……豪さんが…………初めてだよ」
奈美は気恥ずかしくなりながら、ぎこちなく頷いた。
「それに、豪さんは……またひとつ私の願いを叶えてくれた。それが本当に嬉しいの。だから…………ありがとう……」
彼が奈美をしばらくの間、じっと見つめた後、人目も憚らず、彼女を抱きしめて唇をそっと重ねてきた。
近くを通りかかる人が、二人を横目で見ながら歩いていく。
中には歓声を上げている若い人もいたりして、更に恥ずかしくなってしまった。
その後、二人は、様々な光のオブジェで写真を撮り、他のカップルや家族連れの人と写真を撮り合ったりして、充実した時間を過ごした。
ひとしきり写真撮影を楽しんだ後、夜の喧騒から逃れるように、ギリシャの神殿のような小ホールへと向かう。
階段を上り、屋上からの駅周辺のライトアップを手を繋ぎながら眺める。
ここにいるのは、豪と奈美の二人だけ。
時々吹き抜ける風が、肌を刺すように冷たい。
だけど奈美の隣には、大好きな豪がいて、彼の温もりが、彼女の心も身体も包み込んでくれている。
豪が視線を前に向けたまま、感慨深そうに呟いた。
「奈美と出会ってから、もう八ヶ月以上になるのか。早いな……」
「うん。色々な事があり過ぎて、あっという間だった」
奈美も、光の絨毯に包まれている駅周辺のイルミネーションに、目を向ける。
「やっぱり、豪さんは女性が喜ぶ事を、よぉ〜く知っている人だねっ」
いつも揶揄うように言われる事が多い彼女だけど、今日は、こっちから揶揄うように言ってみる。
「何だよそれ。でもそれは奈美限定だからな?」
余裕のある笑みを見せながら答える豪には、やっぱり敵わない。
でも、そんな彼が大好きだ。
どちらからともなく、豪と奈美は向かい合い、長く深いキスを交わし合った。