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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「い……岩ぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!?」

『グオォォォォオオオオオォオオ!?』

 反射的に、俺と化け物は同時に叫んだ。一人と一匹(?)は、冷や汗と共に青ざめる。

 そして俺は直感した。「あ、この化け物絶対良い奴だ」と。

 ……まぁ、勘だが。

 とりあえず俺が今すべき事は。

「何で岩が小石で砕けんだよ!? お前そんな投球力あったか!? つか、どんなバグだよ!!」

 目の前の妹に、全力でツッコミを入れることだった。

「いや〜、私にもよく分かんないよヒロくん。そもそもあそこまで飛んでったことにたいして、驚きだよ〜」

 そういえば。前に見た妹の体力テストでのボール投げの結果は、2〜3mがやっとなくらい、肩は強くない方だった。

「あははっ……」と呑気そうに笑ってはいるが……。口元が引き攣ってるあたり、本人も多少の動揺はしているらしい。

「今なら超電磁砲レールガンとかも、撃てるかな?」

 某ビリビリ中学生のお嬢様風に構え、コインの代わりに小石を指に乗せた妹は、悠長にそう言う。

「やめろ。お前のそのバグった今の威力とコントロールで考えると、この森全体が吹っ飛んで、生態系が滅茶苦茶になりそうだ……」

 まぁ、どんな生き物や生物が住んでるのか。今の俺にはさっぱりだが。

「とりあえずヒナ、あの化け物に今すぐ謝れ。俺の勘だが、アイツはそんなに悪い奴ではないと思う。多分」

 俺は化け物を指差しながら、妹にく。見てみろ。岩が砕けて以降、アイツ体をすくめて小刻みに震えてるぞ。

 妹は少し考えると、化け物の方をチラッと見る。

 化け物は妹に視線を向けられて、『ビクッ!』と反応する。そりゃ目の前で岩が砕け散ったら、そうなるだろう。

 きっと根は気弱な化け物なのだ。そう思いながら俺は、俺自身を納得させる。

 そう考えてる間に、妹は化け物に近づく。化け物は今にも泣き出しそうなくらい、ビクビクと震え上がっている。

 もしコイツが気弱な化け物なら、先程の光景を見て下手に手は出さないだろう。何となくだが、今の妹なら返り討ちにしそうだし、俺は化け物そっちの心配をする。

 妹は化け物の数歩前まで行くと、立ち止まる。そして――――。

「さっき枝を折っちゃってゴメンなさい」

 そう化け物に言って、頭を下げて謝った。

「実はさっきから驚く事ばかりで、つい感情が高まって……。冷静に考えれば、私がアナタの枝を折っちゃったのが悪かったんだもん。謝る前に逃げちゃってゴメンね。痛かったよね」

 妹はそう言って、化け物の折れた枝の部分に手を伸ばす。

「ココが私たちのいた世界と別の世界で、魔法が存在するとしたら……」

 妹の手から淡い光が出る。

「……治癒ヒール

 そう呟いた。

 化け物の折れた枝の部分が、少しずつ繋がっていく。

『ガウウゥウゥ……?』

 化け物は妹と再生した枝の部分を交互に見比べて、頭(らしき部分)を傾ける。

「もう痛くないとは思うけど、大丈夫? さっきはゴメンね」

 妹は化け物の頬(なのか?)を撫でながら再び謝る。妹は本当に申し訳なさそうに、そして繊細なモノを優しく扱うように。

 その光景を見ながら、俺は少し口角を緩めて目を細める。

(……ヒナなりに、本当に反省したんだな)

 一人「うんうん」と兄心で頷きながら見守ってると、妹が急にモジモジしだす。それを見て俺は少し「……うん?」不安を覚える。

「あの、もしアナタが良ければなんだけど……」

 おいおい待てよ、妹よ。まさか……!

「私と友達になってよ!!」

 やっぱりそう来たかぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!

 俺は妹の予想通りの言葉に、内心ついツッコンでしまう。

 俺の心の叫びなどお構いなしか、妹は不安げに……しかし澄み切った曇りなき眼で、化け物の返事を待っている。

「ヒ、ヒナコさん……? アナタ、一体何を言って……?」

 俺は一応、この妹に理由を訊ねてみる。

 なんということでしょう。この妹「待ってました!」と言わんばかりに、目を輝かせるじゃないか。

「だってヒロくん! ファンタジーだよ!? ファンタジーな世界なんだよ!? それなら人間以外のお友達が出来ても、良いじゃん!!」

 というか、だけどな!

(普通はエルフとかドワーフとか、そっちの方で友達作ろうとしないか? ファンタジーな世界ならよぉ!?)

 一方の化け物はどうしていいのか分からずに、助けを求めるように俺を見ている。いや、俺を見られても困るんだが……。

 俺はこの世界に来て、何度目かのため息をつく。そして頭を掻きながら、「あー……なんだ。お前が良ければ、ウチの妹と仲良くしてやってはくれないだろうか?」とダメ元で頼んでみる。

 化け物はそう言われさらに戸惑い、俺と妹を見比べる。それを数回繰り返し、そしておずおずと指先なのだろう枝を妹の方に差し出す。

 妹はパーッと花が咲いたように笑うと、人差し指の先を化け物の枝にちょこんとつける。

 まるでその光景は某自転車で空を飛ぶ宇宙人と人間の、感動の友情物語の名作SF映画を彷彿とさせる。クソっ、思わず例のシーンのBGMが脳内に流れやがる!!

 化け物は俺の方を見ると、何故か枝をこちらにも伸ばしてくる。

「え? まさか俺とも友達に……?」

 化け物はコクンと頷く。俺は少し戸惑いながらも、おずおずとその枝に指を伸ばす。

『ガウウ、ガウアーウゥ(ヤヒロ、トモダーチ)』

 そう言われた気がして、ちょっと感動したのは心に留めておこう。

 こうして俺と妹は謎のファンタジーな異世界(仮)で、初めての友人をゲットしたのである。

お兄ちゃんは『妹が!』心配です

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