壮馬の買い物が終わると、次に花純の服を見に行く。
二人は再び手を繋いで一つ上のフロアへ向かった。
(知っているお店でもあるのかな?)
壮馬は迷わず進んで行くので、花純は咄嗟にそう思う。
フロアの一番突き当たりまで行くと、壮馬はそこにある店に入った。
二人が店に入った瞬間、
「あら、壮馬さんいらっしゃい」
と女性の明るい声がした。
「凪子さんどうも。店がオープンしたって聞いたから来たよ」
壮馬はそう言って微笑んだ。どうやら二人は知り合いのようだ。
「ありがとうー嬉しいわー」
壮馬が凪子と呼ぶ女性は、モデルのようにスラッとスタイルが良くとても美しい女性だった。
どうやらこのショップの店長らしい。
そこで壮馬が花純に凪子を紹介する。
「彼女は戸崎凪子さん。優香さんの従姉妹だよ。結婚を機に大手アパレル会社を退職して、今はこのセレクトショップを経営しているんだ」
「えっ? 優香さんの?」
「どうも初めまして、戸崎凪子です。花純ちゃんの事はいつも優香から聞いているわ」
凪子は笑顔で花純の手を取ると、握手をしながらその手をブンブンと上下に振った。
「あ、藤野花純です。優香さんにはいつもお世話になっております」
と言ってぺこりと頭を下げた。
「優香はねー、花純ちゃんが来てくれてすごく助かってるって言ってたわ。あ、私達は従姉妹なんだけれどね、もうほとんど姉妹みたいな感じなの。だからしょっちゅうお喋りしていて大抵の事は知っているのよ」
凪子はそう言って微笑んだ。
そこで壮馬が言った。
「今日は花純のセレモニーに着られるきちんとした服と、あとはちょっとしたお出かけに着て行けるような服、それと普段着を見繕ってもらおうかな」
「了解! セレモニーはどんなセレモニー? 式典か何か?」
「今度うちのビルで空中庭園のオープニングセレモニーがあるんだ。その時に着られるものがいいな」
「え? 副社長セレモニーって?」
「ああ、庭園がリニューアルオープンする際にマスコミを入れてオープニングセレモニーを開くんだ。それには君にもガーデンデザイナーとして出席してもらうから」
「ガーデンデザイナーとして?」
「そう、そのつもりでいてくれ」
「…………」
花純は全く予想もしていなかった事態に驚愕する。
自分は改良プロジェクトのただのイチスタッフだと思っていたのに、
まさかそんな大それたセレモニーにデザイナーとして出席する事になるとは…正直かなり戸惑っていた。
その時凪子が言った。
「花純ちゃんが今度の空中庭園をデザインしたんでしょう? だったらガーデンデザイナーとして初お披露目になるわね。腕によりをかけて素敵な服を選ばなくちゃ」
凪子は早速もう一人のスタッフに指示を出して、店内にある商品の中から花純に似合う服を探し始めた。
約二時間後、壮馬はいくつものショップ袋を抱えていた。
荷物を一度車へ運ぶと、二人はその近くにある蕎麦屋で昼食をとる。
壮馬が提示したカレーと蕎麦のうち、花純は迷わず蕎麦を選んだ。花純は蕎麦が好きらしい。
食事を終えた二人は再び商業施設へ戻る。そして午後の買い物を開始した。
午後からはかなり人が増えて来た。
休日を楽しむ家族連れやカップルで各フロアが賑わい始める。
壮馬は花純が迷子にならないようにしっかり手を繋いでくれた。
花純は今日一日で、壮馬と手を繋ぐ事にすっかり慣れていた。
午後からの買い物は、先ほど買った花純の服に似合う靴やバッグを揃える。
壮馬は何のためらいもなく花純に似合いそうな物を次から次へ購入していった。
「もう充分ですから……」
花純はそう訴えたが壮馬は引かない。
「次にいつ来られるかわからないから、夏物は一通り揃えておこう」
そして二人はその後も買い物を続けた。
花純のファッション関係の買い物が終わると、今度は生活雑貨の売り場へ移動する。
スタイリッシュで使いやすそうなキッチングッズが所狭しと並んでいたので、花純は嬉しそうだった。
そして一つ一つをじっくり見ながら、必要な物だけを選んで購入した。
次に食器店へ移動する。
二人の茶碗や湯飲みと皿を購入する。
花純は和食でも洋食でもどちらにでも使えそうなシンプルな皿を、何種類か揃える事にした。
そして最後にコーヒーカップを見に行く。
この店には、カジュアルなマグカップからヨーロッパのブランド物まで揃っていた。
その時花純が足を止めた。
それに気づいた壮馬が聞く。
「気に入ったのがあった?」
「あ、いえ…」
花純は今足を止めた場所からすぐに移動しようとした。
しかし壮馬は気づいていた。花純が気になる品を見つけた事を。
「これが気に入ったのか?」
「あ、いえ…これはとてもお高いので大丈夫です」
しかし壮馬はそのカップ&ソーサーを手に取ってみる。
カップには小さな小花柄が描かれていた。
海外のブランド食器にしては主張が控えめで上品だ。まさに花純のイメージにぴったりだった。
「ハンガリー製か…そんなに高くはないから大丈夫だ。これが気に入ったんだな?」
「あ、いえ、私には勿体ないです」
「毎朝君がこのカップにコーヒーを入れてくれるんだろう? だったら買おう」
壮馬はそう言うと、スタッフを呼んだ。
「来客にも使えるようにセットで揃えておいた方がいいな」
その時ちょうどスタッフが来たので、壮馬はそのカップを6客と、ティーポットやシュガーボックス、そしてクリーマー等を一通り揃えてくれるよう頼んだ。
全てフルで揃えると、とんでもない金額になる。
思わず花純は壮馬に確認する。
「本当にいいんですか?」
「ああ、問題ないよ」
壮馬は穏やかに微笑む。
実は花純は以前からこのカップ&ソーサーが気になっていた。
ずっと憧れていた品だが値段を見て諦めていた。
いつかお金に余裕が出来たら、自分用に一客だけでも買いたいと思っていた。
それを壮馬は今目の前でフルセットで買ってくれた。
(大切に使おう)
花純は嬉しくて思わず笑みがこぼれる。
全ての買い物を終えると、既に夕方だった。
二人は荷物を持って駐車場へ戻ると車へ乗り込む。
てっきりそのままマンションへ帰るのかと思っていたら違うようだ。
「夜はレストランで食べて帰ろう」
「え? お昼も外でだったのに?」
「ああ、たまにはいいだろう?」
正直花純は今日一日歩き疲れてもうくたくただった。慣れないパンプスで歩き回ったせいか足も痛い。
だから夕飯を作らなくていいというのは有り難い。
壮馬はエンジンをかけると、すぐに車をスタートさせた。
「どこへ行くのですか?」
「着いたらわかるよ」
壮馬はそう言って微笑んだ。
今夜壮馬は花純を喜ばせようと思い、とっておきのレストランを予約していた。
コメント
3件
凪子さん〜🤩 セレクトショップ経営者になられたんですね✴️😆 流石です🥰 壮馬さん、ホントに花純んが可愛くて仕方ないんですね⤴️⤴️😆 二人のショッピング楽しそう🤭
わぁ~凪子さんだ❣️嬉しい♥️ ご結婚されて、幸せそうで良かった~🍀✨ 二人のお洋服や靴、バッグ等の他に雑貨類も👔👗👠🛍️ ハンガリーのあのブランドのカップ&ソーサー6客&フルセット.かぁ...凄~い☕️💐💕 もう来客(家族)の分までご購入しちゃってる....💖😁 壮馬さんは結婚する気満々ですね~♥️♥️♥️🤭 レストランのディナーも楽しみです👩❤️👨💕🌃🍴
わぁ〜い✨凪子さんだわ👩🦰🌹✨戸崎姓になってあの会社を辞めてセレクトショップのオーナー🏬すごーい👍おめでとうございます㊗️🎉 凪子さんは優香さんのいとこだったんですね⁉️ ビックリです🫢‼️ それといっぱい洋服も👔👚👗食器☕️もお買い物したらそりゃ疲れるよね😵※壮ちゃんは花純ンと手を繋いで歩いてそうでもなさげだけど🤭 花純ンも壮ちゃんと手を繋ぐことに慣れたらもう離れられないね😋💕