テラーノベル
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「逢瀬って何よ。悠聖、彩音には手を出すなって言ったでしょ!」
麗香は長い右脚を一歩前へ出し、仁王立ちのまま悠聖さんを睨みつけた。
「手を出すなんて人聞きの悪いなぁ。野獣の地で迷子になった子猫ちゃんを保護してあげただけなのに」
「何が迷子の子猫ちゃんよ! お前は犬のお巡りさんか! それに野獣は悠聖、あんたでしょうがっ」
麗香は左手を腰に当てたまま、勢いよく右手を伸ばし、悠聖さんを指差した。
「倫子、違うの。本当に私が迷っちゃって、それで……」
「この部屋に入ってしまったのを偶然俺が見つけて、それで色々と世の中の厳しさについて語り合っていたわけだよ」
彼は麗香の罵声にも動じることなく、満面の笑みを浮かべながら扉へ視線を向けた。
「えぇーっ!? 彩音、この部屋に入ったの? まさか、一人で?」
毒気を抜かれた麗香は、悠聖さんへ向けていた人差し指を今度は扉へ向ける。
「……うん」
返す言葉もなく、私はしゅんと肩を落として頷いた。
「何で先に入っちゃうのよ! 後で私が一緒に入って驚かせてあげようと思ってたのにーっ!」
「えっ!? 最初からこの部屋を私に見せるつもりだったの……?」
「当たり前じゃない」
麗香は頬を膨らませたまま、あっさりと言い切った。
「倫子、彩音ちゃんを驚かせるにしても、少しは心の準備をさせてやれよ。お前、パーティーの中身を何も説明してないだろ。彩音ちゃん、驚き過ぎて心臓止まるぞ」
「大丈夫よ。心臓が止まっても、ここにはドクターがいっぱいいるから。循環器内科医の私が率先して蘇生してあげるわ」
「やめてよ……縁起でもない」
冗談めかして笑う麗香を見つめ、小さく息をついた。
「――で、どうだった? 大御所さまのお遊びを見た感想は?」
声を弾ませ、ぱっと目を輝かせる。
「……大変、刺激的でございました」
ちらりと悠聖さんへ視線を向けてから、私は何とも言えない気まずさを抱えたまま答えた。
「でしょ? 彩音の知らない禁断の空間だったでしょう?」
麗香は得意げに笑う。
「この並びの部屋は、みんなそういうことに使われてるの。一方で、そこの花瓶から向こう側の部屋は商談用。企業の重役や病院関係者が、色々な話をしてるわ」
そう言って振り返り、麗香は廊下の奥を指し示した。
「……そういうことに使われてる?」
「もぉー、鈍いわねぇ。エッチに決まってるでしょ、エッチ!」
「なっ……!? この部屋全部であんなことが行われてるの!?」
首をすくめながら、私は思わず廊下に並ぶ部屋の扉を見回した。
「何人かでしてるのは彩音が見たあの部屋だけよ。あとは普通に一対一。でも、他の部屋には鍵が掛かってるから、覗きたくても覗けないの」
「いや……別に覗きたいわけじゃないから」
「なんだぁ。彩音ちゃん、エッチを覗きたいなら早く俺に言えば良かったのに。俺は人に見られても構わないよ」
悠聖さんは笑顔のまま、さらりと言った。
「えっ……!?」
見られても構わないって……勿論、冗談だよね?
いや、ここにいる人たちは常識人とは思えない人たちばかり。
悠聖さんの言葉も冗談じゃなのかもしれない。
「……いえ、本当に結構ですから」
引きつった笑みを浮かべながら、そっと半歩後ろへ下がった。
「ところで悠聖、もうこっちに用事はないの?」
麗香は再び腰に手を当て、呆れたような口調で言った。
「どうせ姿を消してから今まで、どこかの部屋で金持ちの女と遊んでたんでしょ?」
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コメント
1件
あー、やっぱり悠聖さんの飄々とした感じ、めっちゃ好きだわ。麗香との掛け合いが名コンビすぎるし、「見られても構わないよ」ってさらっと言っちゃうとことか、キャラ立ちしてるよな。それにしてもパーティ会場の裏事情、エッチな部屋と商談用で分かれてるって世界観の広がり方が上手い。彩音ちゃんが慌てふためく姿に思わずニヤけたわw