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月の裏側に森がある。 あらすじ
人類は長い間、自分たちが世界の中心だと思っていた。
地球があり。
月があり。
太陽がある。
それだけだった。
地球の外側に広がる無重力空間についても、多くの人はほとんど知らない。
太陽系という考え方すら一般には浸透していない。
GPSも存在せず、人が乗る衛星もなく、天体研究は驚くほど遅れていた。
その理由を知る者はいない。
世界最大の研究機関HASAだけが、月についての情報を秘匿し続けていたからだ。
かつて行われた月面着陸。
公開された映像の中に、ほんの一瞬だけ奇妙なものが映り込んでいた。
月面の向こうに見える緑。
植物のような色。
だがその映像はすぐに封印された。
そして誰も月の真実を知らないまま時代は流れていく。
ある日。
一人の少年が空から落ちてきた奇妙な種を拾う。
その種は芽を出さなかった。
代わりに光り始めた。
そして少年の前に、一羽の鳥のような生き物が現れる。
有楽。
月の裏側に住む知的生命体だった。
有楽はヨウムによく似た姿をしている。
しかしそれを指摘されることを極端に嫌う。
尾羽には緑と黄色の縦縞があり、人類を遥かに超える知能を持つ。
彼らは数万年もの間、地球を見守り続けていた。
やがて少年は有楽に導かれ、月へ向かう。
そこで目にしたものは、人類の常識を完全に覆す光景だった。
月の内部には森があった。
どこまでも続く樹々。
巨大な河川。
空洞化された月の内部に築かれた都市。
数百万種もの植物を保存する種子保管庫。
月はただの岩石ではなかった。
一つの世界だった。
有楽は語る。
地球には二つの時代が存在する。
樹セカイ。
そして枯れセカイ。
森が広がる時代と、砂漠が広がる時代。
地球は何万年もその循環を繰り返してきた。
有楽は樹セカイを維持するため、地球へ種を送り続けていた。
だがその活動を妨げる存在がいる。
枯れ敵。
巨大なオウムガイに似た知的生命体。
遥か彼方の無重力空間からやって来た放浪種族。
故郷を失った彼らは、地球を自分たちが住みやすい世界へ変えようとしていた。
森を減らし。
川を消し。
砂漠を広げる。
それが彼らにとっての理想だった。
そして彼らは人類を利用していた。
枯れ敵は人類をこう評価している。
人間の本能は自然破壊である。
どれほど善人がいても意味はない。
人類は最終的に世界を壊す。
一方、有楽は違う。
人類を高く評価してはいない。
だが希望は捨てていない。
自然を守る者もいる。
森を育てる者もいる。
だから人類を見捨てるべきではない。
その考えの違いは、数万年続く対立となっていた。
やがて少年は月の真実を世界へ公開する。
月の裏側には文明がある。
月の内部には森がある。
有楽という知的生命体が存在する。
その発表は世界を揺るがした。
人々は恐れる。
月は敵なのではないか。
有楽は地球を支配する気なのではないか。
なぜ今まで隠していたのか。
そして世界中で語られ始める。
月と地球戦争論。
地球は三つに分かれていく。
有楽と協力すべきだと考える者。
枯れ敵の考えに共感する者。
どちらにも頼らず人類だけで未来を決めるべきだと考える者。
混乱が広がる中、少年は旅を続ける。
月内部の森。
枯れ敵の砂の都市。
封印された月面着陸記録。
HASAの極秘資料。
数万年分の人類観察記録。
そして有楽と枯れ敵、それぞれの過去。
その旅の中で少年は気づいていく。
有楽も枯れ敵も、自分たちの世界を守ろうとしているだけだということを。
本当に問われているのは、人類自身なのだと。
人類は森を守るのか。
砂漠を選ぶのか。
それとも全く新しい未来を築くのか。
月の裏側で今日も有楽は種を育てる。
無重力空間の彼方では枯れ敵が新たな土地を探している。
そして地球では、一人の少年をきっかけに、人類史上最大の選択の時代が始まろうとしていた。
これは、
月の裏側に隠された森と、
その森を守り続ける有楽たち、
そして自らの未来を決めようとする人類の物語である。
コメント
1件
読み終えました…! 壮大な設定に一気に引き込まれました。月の裏側に森があって、地球を何万年も見守る有楽や、故郷を失った枯れ敵の存在。人類の自然破壊の本能を「利用」するって視点も重くて刺さりました。少年が真実を公開した後の世界の分裂の描写もリアルで、これからの選択がどう描かれるのかすごく気になります。有楽のヨウムっぽさを指摘されるの嫌がるの可愛くてクスッとしました🕊️ 続きが待ち遠しいです。