テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#主人公最強
しめさば
2,152
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
\\ サーセンシター!!!ガンガンガン! //
スライディング土下座──
──は、効かなかった。
『…………。』
魔神族たちは微動だにしない。
冷たい視線が、地面に頭を擦りつける私を無機質に見下ろしているだけだ。
「……ふっ……ダメか……あー……おでこ痛っ……でも、奥義が効いてないのはもっと痛っ……」
スライディング土下座を決めたおでこをさすりながら、私はゆっくりと立ち上がった。
「さてと? ワンパンされた竜王の辰夫さーん? どこ行ったー!?」
「……こちらです。うっぷ……吐くかと思いました……いきなりの土下座は、魔神族の打撃より衝撃でしたぞ……」
フラフラと壁際から歩み寄り、私の頭上からゆっくりと降りてくる辰夫。
私はふうと息を吐いた。
「作戦だし!? 謝って帰れるならラッキーだし!? ……ま、でもさ──辰夫? そんな軽口を叩けるってことは、まだいけるってことよね? てか、いけなくても引っ張り出すけどね」
「っはは! サクラ殿のその理不尽な軽口が、頼もしく思える日が来るとは! 当然、お供させてもらう!」
辰夫が勢いよく巨大な翼を広げた。
魔神のひとりがこちらを見下ろし、ぽつりと吐き捨てる。
『何をしている? 滑稽だな』
「ふーん……」
私はスキルウィンドウを開いた。
\\ ぺ⤴︎ぺ⤵︎ぺ⤴︎ペ⤵︎ぺったんこぉッ♪ //
(※なんか緊迫してる感じのステータス画面表示音)
(……効果音また変わってるな……イラッ)
「見くびらないでほしいわね……こっちは、ただの”美女”じゃあないんだから──!」
【スキル《怪力》発動】
全身の骨がバキバキと軋み、筋肉が限界まで膨れ上がる。
踏み締めた足元から、蜘蛛の巣のように地面にひびが走った。
「辰夫! 今度は私が前衛! あんたは背後からブレスよ!」
「承知!」
辰夫の咆哮がダンジョンを揺るがす。
私は地を蹴った。
一体の魔神族が前に出て、黒い爪を無造作に振り上げる。
──が、私はそれを”かわさない”。
「スキル!《貝殻生成》ッぁああああああああッ!!」
自分の左腕に盾として分厚い貝殻を何層にも生成し、魔神の爪を真正面から受け止める!
ギギィィィィンッ!!と嫌な音が鳴る。
「……折れてもいい、潰れてもいい!
でも──この拳だけはッ……
止まらねぇぞぉおおおおおおッらぁあああああ!!!」
【スキル《怪力》── 電車の扉が目の前で閉まったモード】
──それは、かつて社畜時代に味わった、あの忌まわしき「全視線集中」のトラウマ。
「……い、いや、別に? これ、乗るつもりなかったし?」
私は、おでこに青筋を立てながら、震える声で誤魔化した。
「……だから、そんなにこっち見んじゃないわよぉおおお!!
恥ずかしいだろがぁぁぁあああああッ!!!」
羞恥心が怒りへと変わり、筋肉がさらに膨張していく。
ヒビを帯びた貝殻(ナックル)が、暴力の塊として強化される。
ドォンッ!!!
拳が魔神の顎に炸裂!
空気が爆ぜ、衝撃波が空間を跳ね返る!
魔神の巨体が半歩、グッと下がった。
石床に──ズシィッ!!
重い足跡が深く刻まれる。
「次の電車の方が空いてるから、わざと見送ったんだよ!
……ち、遅刻だけどなぁ!!」
『……ぐっ……なんだ? ……この女……何を言っている?』
細身の魔神族が僅かにたじろいだ。
赤く腫れた右腕がズキリと痛む。
指先が痺れてうまく握れない。
肘の奥で骨がミシ、と嫌な音を立てた。
それでも私は、鼻で笑ってやった!
「──っはッ!
だからさっきから通りすがりのッ──
美女だって言ってんだろぉーおッ!!……辰夫ぁーッ!!」
「行くぞ! 我が秘奥ぉおおおおお!!」
辰夫が翼を広げ、竜の魔力を一気に練り上げる!
大きく開かれた口元から吹き出すのは熱じゃない──
黒き霧と、禍々しい瘴気!
「《崩哭(ほうこく)》!!!!!
……地の底より這い上がれ、滅の吐息よぉぉッッ!!!」
ズゴォオオオオオッッ!!!
放たれたそれは”破壊”そのもの。
空間が軋み、黒紫の奔流が魔神の背を一気に焼き貫いた――!
ボッ……バヂヂヂヂヂィィィ……ッ!!!
肉が焦げ、骨が焼け、空気すら悲鳴を上げる。
『……ぬ……っぐ、……がは……ッ』
細身の魔神の口元から濁った息が漏れる。
黒い蒸気が皮膚の隙間から抜け、その膝が沈んだ。
「おっと、『辰夫ぶれすぅーぶしゅー!』のが良かったですかな?」
「あはは!今回は許す!!
でかしたぁー! 辰夫!
それを私にやったらぶっ飛ばす!!!!」
「ははは! いつか放ってやりますぞ!」
「言ってろ! 連携行くよ! 辰夫ッ!!」
「応ッ! いざ、渾身の──!」
私たちは左右から挟み込むように魔神へと走る。
「くらいやがれぇぇぇぇぇえええええええあッッ!!!!」
交錯の瞬間、私の右回し蹴り(貝殻ブレイス装着)が魔神の下顎を容赦なく跳ね上げ──
ズドンッ──!!
「おおおおおおおおおおおおッッッッッ!!!!」
同時に、辰夫の強靭な尾が音速の刃となり、魔神を叩き落とす!!
バキバキバキィンッ──!!
音を置き去りにし、圧倒的な衝撃が魔神を襲う!
肋骨が砕け、魔神の喉奥から濁ったうめきが漏れた。
そのまま地面を抉るように、巨体が叩きつけられる!
ド グ ォ オ オ ン !!!!
激しい衝撃が走る。
魔神の巨体が、地面にバウンドし、宙に浮いた──
『っかは………ッ…』
「まーだだ……よいしょッ♪」
私は宙に弾けた魔神の左足を、両手でガッチリと掴む。
ガシッ!!
【スキル《怪力》── 疲れてるのに電車に座れないモード】
「座ってる学生よぉ? 絶対に私のが疲れてる!
疲れてる比べしても良い!だから席譲れやぁあああ!!」
「なんの話か分かりませんが、大人気ないのはわかりました!」
辰夫がツッコむ。いいね。ノって来たわ。
そのまま全力で、地面に向かって自ら回転しながら倒れ込む!
「こちとら社会で経済回してんだよ! テメーも回っとけぇえええええ!!!」
ギュルルルルルッ!!
「土下座したらッ! 許してやんよぉおおおーッ!!!!!
ドラゴンッ・スクリューぅうううらうううぁッ!!!!!」
魔神の巨体が地面に叩きつけられ──
ズッッドォン!!!!!
そのままめり込んだ。
──もうもうと、土煙が上がる。
その煙の中を、私はゆっくりと立ち上がる──。
「……んー……あー。嘘だわ。やっぱり許さねーと思うわ」
地に沈んだ魔神を横目に、私は乱れた髪をかき上げた。
その手が──小刻みに震えていた。
──魔神は頭から地面にめり込み、完全に沈黙していた。
一体の魔神族が、崩れ落ちて、動かなくなったのだ。
『……っ!?』
無関心だった他の魔神たちが、微かに反応を示す。
倒れ伏す魔神族の傍らで──
私は膝に手をついて、荒く息を吐いていた。
胸が激しく上下しすぎて、吐く息が震える。
「……っは、は……やった……倒せる……
コイツら……倒せるのよ……ッ!」
拳と膝を小刻みに震わせながら、それでも私は強がって見せた。
──足と指先の感覚がない。
今の一発で、何かを”超えて”しまったのを、身体が確かに知っている。
辰夫もまた、大きく肩で息をしていた。
その巨大な翼が、限界を告げるように小刻みに痙攣している。
「……ふ、ふはは……一体だけ、ですけどな……」
それでも、辰夫は笑った。
決して竜の誇りを失わないかのように。
「はぁはぁ……ち、ちょっとタイムしたいんだけどさ……
ムダ様が言ってた『ピンチの時は靴紐を結べ。文明人は待つ。』ってやつ試せば待ってくれないかな……」
「はぁはぁ……文明人には見えませんな……」
「……だよね」
(つづく)