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『はい……』
玄関から顔を出した瑠衣を見た、その筋の男たちが拍子抜けしたように一瞬表情を困惑させる。
『俺ら南洋ファイナンスの者なんだけど、お父さんはいるか?』
(え……借金取り……?)
瑠衣は父から会社をたたむとは聞いてはいたが、借金の事には一切触れていなかった事に気付く。
『父は……亡くなりました……』
『ほぉ……じゃあお母さんはいるか?』
『あの……母も亡くなって……』
『ありゃ。夫婦揃って借金苦で死んじまったってヤツか? なら……』
二人の男のうち、上背のある屈強な男が瑠衣の前に一枚の紙を突きつけた。
『じゃあ、連帯保証人に書いてある九條瑠衣っていうのは……姉ちゃんの事か?』
『え!? 私が連帯保証人ですか!?』
瑠衣はオールバック男が差し出した紙を今一度確認すると、それは借用書だった。
借入金額は五千万、契約者は父、保証人は母、そして連帯保証人は……瑠衣の名義になっている。
『っていうか、これ、私の字じゃありません……!』
『あ? でも姉ちゃんの名前が書いてあるぜ? しかも実印まで捺印されてるよ?』
茶髪男がヘラリと笑いながら舐めるように瑠衣を見つめる。
(実印なんか作った事ないし……何で? お父さんが私に内緒で……勝手に手続きしたって事……!?)
それまで、父が自殺で亡くなった事がとても悲しく思っていたのに、生前、瑠衣に気付かれないように、怪しげな金融会社から大金を借り、連帯保証人に瑠衣の名前が記され、実印まで作って捺印された事に、悲しみが掻き消され怒りが渦巻いていった。