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色鮮やかな絹傘を捧《ささ》げもつ、宦官達に先導されて、婚礼の列はゆっくりと進んで行く。


正装姿の束帯《そくたい》を纏った従者が運ぶ、豪奢な溜塗《ためぬり》の篭《かご》を見守るように、沿道に儀杖兵《ぎじょうへい》が、ずらりと並んで華を添える。


その後ろでは、呆然と立ちすくむ民がいて、豪華さと漂う優美さに圧倒されていた。


――人だかりの中を、高貴な空気を振りまきながら、列は静かに進んで行く……。


朱色に輝く宮殿の正門をくぐりぬけたとたん、先導する宦官達が立ち止まった。


正面には、国儀を記す、黄色の旗が無数にたなびく基壇《きだん》が見える。


その上には、二層式の吹き抜け楼を持つ建物がある。正殿、共真《きょうしん》殿だ。


ジオンは玉座に坐し、花嫁の到着を待っていた。


ついに、この日がきたかと、表情は固い。


正殿を支える幾つもの大柱は、威圧を発し、さらに、風になびく旗の音が不安を煽る。


眼下には、磐石《ばんせき》が敷かれた敷地が広がり、立ち位置を示す品段石が連なっている。


幾度と目にする風景であったが、一位から九位までの石碑の横に、正装姿の武官百官が平伏する様は、色とりどりの玉をばらまいたかのごとく。


思えば、これほど大規模な国儀は初めてだろう。


自身の即位式ですら、ここまで華やかではなかったはず……。


その時、一人の娘が現れ出た。


導かれるままに、基壇に向かってくる姿からは高慢さが漂っている。


送り込まれた国を値踏みするかのような雰囲気に、ジオンはめまいのようなものに襲われた。


見えるのは、妃ではなく、大国、明の信任厚い東の国、寧、そのもの。


歩む少女は頭から薄布をかぶり、拝顔できない。


しかし、鬢《びん》を大きく張らした髪を高い位置で一つに束ね、馬の尻尾のようにたらす異国の髪型は、ジオンの目をひいた。


次いで、纏う衣装に息を飲む。


朱色の上着には、五色の生糸で鳳凰の刺繍が施《ほどこ》され、桃色の裳《も》には、おしげもなく真珠が縫い止められている。


腰に巻かれた金細工の飾り帯には、七宝《しっぽう》がずらりと輝き、少女が歩むたび、小さく音をきしませた。


まさに、かの国の繁栄を物語っている。


驚きを隠せないジオンの前で、少女はぴたりと立ち止まると、ひれ伏すわけでもなく、軽く頭を垂れた。


謁見に、これほど嫌悪を感じるとはジオンは予想していなかった。


所詮、小娘とあなどっていたが、目にする花嫁には威厳がある。


ジオンは、格の違いを見せ付けられた。

朱(あけ)の花びら

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