はじめまして!
何時も読んで下さる方はこんにちは!
スイ星です!
先日聞いた曲があるんだけど、みんな知ってるかな?
『逢魔時の帰り方』ってやつ。
動画見てたら久しぶりに流れてきてね〜
何か妖怪とかそれっぽいの作ってみたいなぁって……(笑)
思い付いたんですよ!w
まぁそれで、最初は歌詞パロにしようかなぁ〜って思ってたんですけど、
矢っ張り中也と太宰さんのお噺書きたいなぁって……
うん………はい……、妖怪パロです……………。
ストーリー設定とか判らない所は聞いてもらえれば答えますし、大体固まってるので(?)大丈夫です!
多分書いていったら腐気味っていうか、腐になってると思うので、苦手な方は閉じてください!
それでは、『妖狐の私と生贄の君』
どうぞ〜っ!↓↓↓
昔々、或る処に。
一匹の妖狐が棲む山が在りました。
その妖狐は特別な力を持っており、山で育つ桃の実は、人の生命に小さな灯を与えるといわれています。
そんな或る日、山に数十人の人間が現れました。
人間達は山の麓に村を作り始めました。
然し畑の農作物は上手く取れず、食料が不足していき、人々は窮地に追いやられました。
そんな中、山の守り神である九尾の妖狐は、人々に幸の種を享受しました。
種は、どんな植物も枯れて育つ事の無かった土に、芽を生やしました。
忽(タチマ)ち芽は育ち、桃の花が咲きました。
やがて実が実り、桃の実は人々に幸福を与えました。
すると如何でしょう?
人々はその桃を食べた途端、力が漲り、どんな怪我も病気も直ぐに治るようになったのです。
村の人々は其の御恩を忘れぬように、九尾の妖狐を祀り始めました。
やがて村中には、桃の花が咲き乱れるようになりましたとさ。
──────と或る日の宵。
琥珀色に輝く満月は辺りを照らした。
特別な日でもない、何でもない日。
何時も通りに過ぎない日。
でもそんな日でも、淡く鮮明な記憶となる。
一軒の古民家の縁側に、二人の青年が胡座をかいて座っていた。
額から伸びる黒い角を月光で反射させ、右手に酒が入った瓢箪(ヒョウタン)を持つ。
瓢箪を傾け赤い盃に酒を注ぎ、一気に口に流し込んだ。
「ゴグゴグッ──────ぷはっ!///」
赫色の髪に澄んだ青色の瞳。
酒呑童子────中原中也は、極上の酒を味わい機嫌が良かった。
「あまり呑み過ぎないで呉れ給えよ?」
呆れ口調でそう云ったのは、中也の隣に座っていた九尾の妖狐────太宰治だった。
此処はとある山奥にある一軒家であり、その山には村が隣接していた。
九尾の妖狐である太宰は古くからこの山に棲んでおり、村の人間からは守り神として祀られていた。
「安心しろ!そんなに呑んでねェから!」
てらてらした笑顔で中也は云う。
「少しの量呑んでも酔い潰れる癖に………」
太宰は中也から視線を外しながら、苦り切った顔で呟いた。
「ん?何か云ったか?」
「別に?」
「ふ〜ん…………」
盃に溢れんばかりの酒を流し込み、中也は再び其れを一気に呑み込む。
「つーか手前、また贄追い返したンだろ?」
中也が話を切り出した。
「折角、喰われに来てくれンだから、喰ってやれよ」
「厭だよ、贄に来るのなんて全員十歳くらいの子供だし…………せめて綺麗な女の人だったらなぁ」溜め息混じりの声で、太宰が云う。「それに、抑々贄なんて送って来なくて佳いのだよ」
「私を守り神だなんて祀ってるけど、桃の種は私が村の人間を興味本位で見に行った時、落としたものを村人が享受しただなんて盛大に云ってるだけだし、この山だって私の力じゃない、山が特別なだけさ」
「はっ……そりゃあ無ェな」
中也の言葉に、太宰は目を丸くしながら視線を移した。
「この山は確かに特別だが、ソレは手前の妖力を受けてのもンだ。だから手前の心情が荒れれば、妖力に伝わって山も変化する」
太宰に指を指し、頬杖を付きながら中也は続ける。
「何時だったかなァ?雨が何年間も降り続いたやつww」
「なっ…!」
太宰が驚きの声を上げ、恥ずかしがりながら云った。
「中也何で其の事知ってるの!?」
「風の噂っつーもンだ」
口元に笑みを浮かべながら中也は云う。
「……っ」
少し悔しがりながら、太宰は中也を睨んだ。
「ははっ…!ンだよ其の顔、珍しいなァw」
中也が太宰の顔を見て笑う。
「そ……そう云う中也は如何なのさっ!贄とか来ないのかい?!」
話を変えるように、太宰が中也に聞いた。
「贄は来ねェな、何方かと云えば喰われに来る奴等ばっかだ」
「ぁーそう云う事、」
察したのか、太宰は興味が無くなったかのような口調をする。
「一昨日も『お前の首を取るっ!』って云ってかかって来てよ、直ぐに逃げ帰ってたけどなw」
「あぁそうですかぁー」
「まァ死にかけの奴を俺は喰うけどな。服とか喰う時邪魔だから、形見とか装飾とか、それっぽいのは全部取ってから喰ってるけど……」
「死んだ人間食べて美味しい?」
「否…………何方かっつーと超不味い」苦り切った顔をしながら中也は云った。「だからと云って生きた人間殺して喰うのも何か違ェし……」
「────ふぅん。中也ってさ…………酒呑童子の癖にそう云う拘りあるよね」
「癖ってなんだよ、癖って………つーか俺は中原中也だ。酒呑童子なんて人間達が勝手に付けた名だろ」
月を映し出した透明な酒を、中也は一口呑む。
「酒好きだから酒呑童子、か……」
呟くように溢した太宰は中也から顔を背けて、今度は態と聞こえるような少し響く声で云った。
「こんなに酒が弱いなんて人間達は知らないのだろうなぁ〜」
その言葉に、中也は素早く太宰を睨みつける。
「ンだと手前!喧嘩売ってンのか!?」
中也が太宰の胸倉を掴んで怒鳴り声を上げた。
「売る訳ないじゃあないか。あ、残りの酒没収ね。もう完全に酔ってるから」
そう云う太宰の手には、先程まで中也が持っていた瓢箪が握られている。
「あ゙!」中也は瓢箪が取られた事に気付くと、取り返そうと太宰の上にのし上がった。「返せっ!」
「やーだよっ」
太宰は悪戯っ子のような笑みを浮かべながら、瓢箪を中也から遠ざける。
「くそっ……!っーか手前だって贄か其処等の人間喰わねェと駄目だろっ!」
「何故?」
中也の言葉に太宰の気が緩んだ。其れを待っていたかのように、中也は手を伸ばす。
然し其れを予測していた太宰は、瓢箪を後ろに投げた。
「はっ!?」
中也が目を見開く。
そして投げられた瓢箪を、太宰の白く柔らかい尻尾が受け取った。
酒の事にのみ中也の関心が注がれる。
「オイっ、酒寄越せ────」
「中也」
中也の声を遮って、太宰は静かに中也の名を呼んだ。
「駄目って…………如何云う意味?」
その言葉に、中也は手を止める。暫くの沈黙の後、中也は真剣な声色で云った。
「俺達妖怪は人間を喰って妖力を補わないとならねェ、じゃねェと妖力が尽きて手前死ぬぞ?」
「死ぬのは本望だね」
笑顔を作って太宰が云う。
中也は顔をしかめて「そーかよ、なら何時か俺が手前を殺してやる」と云った。
「本当かい?」
その言葉に、太宰は呆気にとられたように目を丸くしながら、口先から言葉をこぼす。
「嗚呼」
中也が静かに云った。太宰の口元が緩む。
「ふふっ、流石私の相棒だ」
「相棒?俺は手前の相棒になった憶えなんてねェぞ?」
「あぁ、御免。此方の話」
中也が首を傾げた。
「それに私は人間を食べなくても、桃を食べてれば大丈夫だしね」
そう云って、小綺麗な形に切られた桃を、爪楊枝で刺して太宰は食べた。
「あ、そ………」
興味なさげに中也は太宰を見る。
「だから手前は九尾でも八尾の力程度なンだよ」
「何それ喧嘩売ってるの?酒弱い癖にっ!」
「あぁ゙!?ソレは関係ねェだろ!つーか別に弱くねェッ!」
「そんな事云って、今だってフラフラじゃあないか」
嘲笑しながら太宰は中也に云った。
「ッ煩ェ!」
「あっははは」
***
「もう帰るのかい?」
数歩前に居る中也に、太宰は玄関の外から聞いた。
「まァ、旨い酒も呑めたしな」
そう云って中也は太宰の方に振り向く。
「……………中也」
太宰が静かに中也の名を呼んだ。
「ん?なんだ───────」中也に太宰が桃を一つ投げる。「ぉわっ!」
顔に当たる寸前で、中也は桃を受け止めた。
「君にあげるよ、帰り道で好きに食べ給え」
「いいのかよ…………」
中也が少し遠慮気味の云い方で云った。
それを云うのも、太宰の山に実る桃は特別で、外へは持ち出しては成らない────と云うのが、村の掟である。
村が勝手に決めていた事だが、特に人間に興味を持たない太宰は、お好きにどうぞと云う感じで、然し中也はこういう事に関しては少し真面目なのだ。
「別に?村が決めた事だし、此れは私の好きにして佳いのだよ」
「…………」
月光を反射する桜桃を、中也は静かに見つめた。
「……ありがとな、太宰!」
にっと満面の笑みで中也が云う。
「____…」
太宰が目を丸くした。意外な事が起きて脳がフリーズしてしまったかのように、太宰は固まる。
「太宰?如何した?」
顔を覗き込みながら、中也は云った。
「……ぁ……えっと、いや………」
何か気不味い事があって言葉が詰まったのでは無く、なんて云えば佳いのか上手く言葉が出なくなって、太宰は言葉を切らした。
──────カラン………カラン………
太宰が、カラコロと下駄の音を響かせて、数歩前に出て中也に近付く。
中也の後ろ髪の毛先に、太宰が触れた。
「ぉ……オイ、何だよ…………」
急な太宰の意味不明な行動に、中也は目を丸くする。
小さく太宰は微笑した。
「君は赫色の髪だから、てっきり夕日が似合うと思っていたのだけど……」
髪から手を離し、少し儚げな笑顔を太宰はする。
「月光も随分と似合うじゃないか。青い瞳なんてより一層鮮明に見えて────とても綺麗で趣がある」
中也は目を見開いた。
何故ならこんな事を云われたのは初めてだったからだ。
見る事のない赫色の髪に、刻み込むように顕在する青い瞳。
誰が如何見ても異端。
それこそ、中也は生まれた時から両親にまで『鬼』と云われたのだから。
自分の、嫌いな所であった。
だが太宰は中也のその所を綺麗と云った。其れが中也にとって、何よりも嬉しかった。
「………………そ、ぅか…?」
顔をそらし、髪の毛を弄りながら中也は云う。
「嗚呼」
太宰が静かに答えた。
「────太宰」
中也は顔を上げ、太宰と視線を合わせて云った。
「また遊びに来るからなっ!」
とても嬉しそうで、何処か少年のような面影を感じさせるその笑顔は、中也が今まで太宰に見せた中で一番の笑顔であった。
「うん、楽しみに待っているよ」
太宰はそう云って、優しい笑顔で見送った。
***
──────あれから数百年後。
太宰は畳の上に寝転がりながら小さく呻った。
「はああぁぁぁ………暇だなぁ」
ゴロンっと寝返りをうつ。視線の先には酒が入った樽がある。
外に聳える木には桃が実っていた。
「もう充分時間が経ったじゃないか」語りかけるように太宰は呟く。「極上の酒も熟した桃も用意してあると云うのに………」
再び寝返りをうって、太宰は天井を見上げた。
「────詰まらないなぁ」
口先から溢れた太宰の言葉は、誰にも届く事はなかった。
待ってるからね、中也。
コメント
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え!?お亡くなりになられたりしてる??? え、いや待った取り合えず神作でした!!