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さらっと流しちゃったけど。
本当に大事な話だったのかもしれない。
そう後々思っても遅いことのように思えるが。
「私のこの話、信じる?」
信じるって言われてもなぁ…
でも畑葉さんがこんな大事そうな話の時に嘘をつくなんて早々有り得ないと思うし。
「半信半疑だけど、まぁ…信じるよ」
そう僕が言うと
「本当?!ありがと!!」
と言いながら僕の手を握ってくる。
急すぎて手汗がどっと溢れる。
僕は慌てて手を振り払うと
「顔真っ赤〜!!」
と笑いながらおちょくってくる畑葉さん。
さっきまで悲しそうな雰囲気を纏っていたのにも関わらず、
今はニコニコとしている。
それとも本心は隠しているのだろうか。
入学初日からずっと思ってたけど畑葉さんは
大人っぽいというより妖のようだ。
「あ!!見て!!上上!!」
そう言いながら夕空を指差す。
見上げると目に映ったのはカラスの大群。
真っ赤な夕焼けにカラスの黒が影のように映っていて、綺麗だと思える。
日中のカラスなんてゴミを漁る汚い鳥だと思っていたが、
何かと合わさることによってこんなにも印象が変わるだなんて。
その合わせるモノにもよるが。
「やっぱ夕焼けにカラスはいいよね〜」
「でも蝶々も負けてないから!!」
そう言いながらジャジャーンという効果音が着くように腕を広げ、蝶々を強調する。
そういえば最初に『蝶々が雅』だなんて話したっけな。
そんなことを考えながら蝶々を子供のように追いかける畑葉さんを眺める。
その時、畑葉さんに向かってくる車が見える。
僕は慌てて引っ張ると畑葉さんは『ちょっと!』と怒る。
それと同時に車が僕と畑葉さんの前を通り過ぎて行く。
「ぇ…」
「危なかった…」
僕が安堵の息と共にそんな声を吐くと
「嘘…車、来てた?!気づかなかった…」
と『私めっちゃショックです』みたいな雰囲気がこちらまで伝わってくる。
「ちゃんと周り見て」
そういつもより強めの口調で言うと
「はい…」
「私、もう帰るね…」
と落ち込みながらトボトボと大きな桜の木の方に歩いて行く。
『本当にあそこが家なのかな』と思いつつも、
「また明日」と言って家に帰る。
あ、また連絡先聞きそびれた。
そう自宅のお風呂の中で思う。
あそこが家なわけないよな…
だっていっつもいい匂いだし…
それこそ桜の花のような匂いで。
しかも可愛いし。
あれもきっと冗談なんだろうな〜。
そんなことを考えていると
「琉叶〜!!お風呂早く上がりなさ〜い!」
と少し不機嫌な母さんの声が廊下に響く。
『やばっ』と思いながら急いでお風呂を上がる。
「あんた好きな人でも出来た?」
なんの前触れもなく、
そんなことを言われ箸を落とす。
家族揃ってる晩御飯の食卓でそんな話題を出さないで欲しい。
「お前好きな人出来たのか?」
ほら、そんなこと言うから父さんも気になってきちゃったじゃん。
「別に…」
「普通に友達できただけだよ」
「え、でも女の子なんでしょ?」
「まぁ…」
問いに答えただけなのに母さんと父さんは互いに顔を合わせた後、
僕にニヤニヤとした顔を見せてくる。
心情がバレバレすぎる。
どうせ『狙っちゃえば?』とか思ってるんだろうけど。
畑葉さんと僕が恋なんて絶対に無理だ。
そんなことを思いながらも自身の頬が少し赤く染まっている気がした。
「おはよ──」
「ってイヤホン…」
せっかく『今日こそ元気に挨拶するぞ』って意気込んできたのにも関わらず、
畑葉さんはイヤホンで音楽を聞いているようだった。
わざと椅子をガタガタと鳴らしながら自身の席に着くも、
畑葉さんはイヤホンをとるような仕草を一切しなかった。
それになんだかイラついて『少し意地悪してやろう』そんな悪魔の囁きが聞こえ、
実行してしまった。
「何聞いてるの?」
肩をポンと優しく叩いた後、
真近くでそんなことを聞く。
と、
「近い近い!!離れて…!」
とゆでダコのように顔を真っ赤にしながら僕のことを押す。
「これ、聞いてたの!」
そう言って片方のイヤホンを畑葉さんの耳から僕の耳へと移動する。
と同時にスマホの画面を見せてきた。
クラシックとかアニメの曲とか聞いてんのかなと予想したのにも、結果は予想外すぎた。
スマホの画面に映る言葉は『さくら、さくら』という言葉。
しかも僕の耳にはあの童謡の『さくら』が流れている。
予想外すぎて声が出ない笑いを漏らす。
「ね、いい曲でしょ?」
「…って何笑ってんの!!?」
笑いすぎてお腹が痛い。
しばらく笑いが止まらない僕を見て、
畑葉さんは
「笑いすぎだから…」
と言う。
でもそんな畑葉さんも笑っていた気もするが。
「あー面白かった…」
思い出し笑いしながらそんなことを呟く。
「ほんと酷い…」
「でも、いい曲でしょ?」
追い打ちをかけるかのようにそんなことを言ってくる。
それのせいで収まっていたはずの笑いが込み上げてくる。が、我慢をする。
「今日の帰りも空いてる?」
「空いてるけど…」
いい加減、授業中に話しかけてくるのやめて欲しい。
いや、多分きっと僕が無視すれば諦めると思うんだけれども。
そんなこと出来るわけない。
なんか脅してきそうな気がするし。
授業が終わってから気づいたことがある。
それは今日、
委員会の集まりがあるということ。
「あ、ごめん、僕、委員会ある」
急遽決まった委員会の集まり。
僕が入ってる委員会は『企画委員』
定期的に委員の集まりがある。
イベント事について企画するのが仕事で、
体育祭や文化祭などの前は忙しくなる。
それ以外にも自分たちでイベントを企画してもいい。
が、生徒会に『企画案』をスピーチで提案する方法がある。
生徒会は厳しいっていう噂があるせいで、
誰も挑戦したがらないが。
「じゃあ待ってるよ…」
『ちぇっ』という声が聞こえそうな声色で畑葉さんは教室を後にした。
ていうか待ってるってどこで?
そんなことを思いながらも、
僕は委員会へ向かう。