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千年の炎 孤独の果て

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千年の炎 孤独の果て

6 - 第6話 揺らぐ心火(しんぴ)

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2025年11月17日

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竹林の夜は静まり返っていた。焚き火の炎は小さく揺れ、藤原妹紅はその前に座っていた。隣には白影。彼は炎を見つめながら、何かを探すように沈黙していた。


「……炎は、記憶を呼ぶのかもしれない」


白影の声は低く、風の音に紛れるほどだった。妹紅は彼を見つめる。白と黒の瞳が、炎の光を受けて揺れていた。


「何か思い出したのか?」


白影は答えず、ただ炎に手をかざした。指先が火の粉に触れ、わずかに震える。


「夢を見た。いや……夢だったのかもわからない。ただ、炎の中に誰かがいた。顔は見えない。声も聞こえない。でも、確かにそこにいた」


妹紅は目を細める。白影の言葉は、彼の内側に眠る何かが揺れ始めている証だった。


「それは……お前の過去かもしれないな」


白影は首を振った。


「わからない。ただ、炎に触れるたびに胸がざわつく。君の炎は、僕の中の何かを呼び起こしている気がする」


妹紅は焚き火に薪をくべた。炎がぱちりと弾け、竹林に火の粉が舞う。


「炎は、焼き尽くすだけじゃない。照らすこともできる。私がここにいるのは、照らされるのを待っていたからかもしれない」


白影は妹紅の横顔を見つめた。彼女の瞳には、千年の孤独が宿っていた。だがその奥に、微かな光が灯っていた。


「君の炎に照らされて、僕はここにいる。なら、僕の中の影も、少しずつ形を持つかもしれない」


妹紅は微笑んだ。それは、炎のように儚く、しかし確かな温もりを持っていた。


「お前が何者かなんて、すぐにわかる必要はない。ここにいる。それだけで、十分だ」


焚き火が静かに燃え続ける。竹林の夜は、少しだけ柔らかくなった気がした。白影の瞳に映る炎は、彼の心の奥に灯る小さな火となっていた。

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