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気づかれた…!?

「カンナちゃんにこんなところで会えるなんてー!」

「やば」とつぶやき、カンナさんはお客さまの中に戻ろうとした。

けど男の人たちは駆け寄って、そしてカンナさんを囲んでしまう…!

「ねーもしかして、愛本カンナちゃん?」

カンナちゃんはポカンとした表情を浮かべて、返答に詰まっているフリをする。

「ちがいます」なんて即答してもかえってうさんくさいもんね。

さすが、こういう場面に慣れているのかな。って思っても、男の人たちは全然引き下がる様子を見せない。

なんだかニヤニヤして、怖い。

まわりのお客さまも怪訝そうな顔をして見てくる。

カンナさん…。これってすごく不味い状況だよね…。

でも…このまま、いなくなってくれれば…。

はっとした。

わたし…すごく嫌なことを…。

そんなこと思っちゃだめだ。

助けなきゃ…。

だって、カンナさんは、晴友くんにとって大切な人。

カンナさんがトラブルに巻き込まれて困るところなんか、晴友くんは見たくないよね…。

わたしは、晴友くんに選ばれなかった。

でも、だからって、晴友くんにがっかりされるような女の子には、絶対になりたくない。

ザッ!!

わたしは男の人たちの顔にめがけて、砂を投げつけた。

不意打ちを受けて、男の人たちはしゃがみこむ。

その隙にカンナちゃんの手を引いて駆け出した。

「…あんた、どうして…!?」

「早く!走って…!」

「待てっ!」

「くそっ…絶対捕まえてやるっ」

数秒して、男の人たちが追いかけてきた!





砂浜を走ったところで男の人たちの足には敵わないと思い、人ごみにうまく紛れ込んだところで、わたしたちは出店と出店の間の死角に隠れた。

男の人たちは気づかずに通り過ぎていく。

よかった…。

ほっと胸をなでおろして出ようとしたところで、カンナさんが引き留めた。

「ばかっ。まだそこら辺をうろついているかもしれないでしょ。あいつらの執念、マジで怖いの知らないでしょっ。しばらく隠れているのよ」

と吐き捨て、はぁーとため息をついて体育座りをするカンナさん。

「…でも、ま、感謝するわ、ありがと。正直、あのまま捕まってたらヤバかったわ」

おもしろくなさそうに目を合わせないで言うカンナさんだけれど、さっきの見下すような感じは消えていた。

…ほっと、したのかな。

なんだか、急に同い年の子に見えて、わたしもほっとした。

「あの人たちなんなんですか」

「ストーカーまがいのファンよ。最近うるさくなってきて、事務所からも気を付けるように言われてたんだけどね。たちの悪い連中よ。こっちの弱みを握ってよからぬことに利用しようって魂胆。おおかた、わたしが事務所に無断でここに来ていたのを知って、脅そうとするつもりなのね」

ひぇええ怖い…。ファンでもそういう怖い人がいるんだなぁ…。

「幸い写真は撮ってなかったみたいだし、ま、セーフね。ほんと、マジ最悪。行き過ぎたヘンタイ野郎よ」

「…でもそれだけカンナさんが人気ってことですよね」

「当然でしょ。ま、ストーカーの一人や二人いてこそ、いっぱしのタレントってことよ」

と、カラカラ笑うカンナさん。

すごいなぁ。強いと言うか、たくましいよ。

やっぱり…わたしなんかじゃ、かないっこないよね…。

と、うつむいたわたしを見て、カンナさんは今度は少し力なく笑った。

「って言っても、刺されたりするのは嫌だけどね。だって、さすがの私にも、後悔していることはあるし」

カンナさんが後悔?

「私、晴友が好きよ。この気持ちは誰にも負けるつもりはない。そしてそれと同じくらい、晴友に対して後悔する気持ちがあった」

自信に溢れているカンナさんが後悔していること…?

どんなことだろう…。

「私、すごく太りやすい体質なのよね」

「へ…」

「晴友から聞いたけど、あんた、甘いものを食べても全然太らない体質なんだってね。みんなのスイーツをすいすい食べて目立って、それで『ファイターちゃん』とかって呼ばれてたとか」

晴友くんが…わたしのことを…?

「いいわよねーぇ。私なんか、ココアだけで太っちゃうのに。スカウトされた時も実はけっこう太ってて、半年で5キロ落とせって言われたのよ。ムカついたから2か月で落としたけど」

す、すごい…。わたしなんか、そもそも甘いものを我慢する事態が無理だ…。

「そうしてわたしは夢を手に入れた。でも、その代わり、晴友のケーキを食べる喜びを失った」

「……」

「晴友はいつもわたしにケーキを作って、そして、新作を食べさせてくれた。スカウトされた時も、みんなは反対したけれど、夢を持っていた晴友だけは応援してくれて、そして、ケーキを作ってくれた。…けど、食べられなかった。太るわけにはいかなかったから…」

「……」

「それどころか、イライラしてつい言ってしまったの。『そんなものいらない。ケーキなんかもう食べられないんだから』って」

「…」

「それだけ。そんなことだけれど、ただそれだけが、ずっとずぅっと後悔だった。だからね、このまえ晴友に久しぶりに会えた時、うれしかった。そして、晴友と手を繋いでいたあんたを見て、腹も立てたの。『この子誰?晴友を盗らないで!』って。晴友を取り戻したかった…」

どういう意味…?

一方的に言われてよく解からない。

「でもまさか、こうして助けてもらうとは思わなかったわ…。やっぱり、私の負けね」

負け?

どうして…?

負けたのは、わたしの方なのに…。

完全に混乱しているわたしに気づかず、カンナさんは辺りを見回した。

「どうやらあいつらはどこかに行ったみたいね。いこっか」

と立ち上がった、その時だった。

「よし、引っかかった!いたぞ!!」

男の人の声がした!

振り向くと、どこかに行っていたとばかり思っていた男の人たちが姿を現した。

こっちが動くのを見張っていたんだ…!

わたしたちは走った。

けど。人混みを避けて、とっさに海の家や倉庫が立ち並ぶ通りの裏を走ったのが不味かった。

あっという間に追いつかれてしまったのは、大声を出しても聞こえなさそうな人気のない所だった…。

イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で

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