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楽器の調整が終了した知らせを受けた侑と瑠衣は、二日後の土曜日、立川駅北口にある高級ホテルの地下駐車場にいた。
この日の朝から無口の瑠衣に、侑が彼女の緊張を解すように話し掛ける。
「待ち合わせは、一階のカフェラウンジだ。それにしてもお前、緊張しているのか? 表情が何だかガチガチだな」
「…………初対面の方と話すの、苦手なんです」
「ほぉ。そんな調子で、よく赤坂見附で娼婦なんてやってたな」
侑が皮肉めいた笑みを見せながら揶揄うと、瑠衣が頬を膨らましながら言い返す。
「あれは仕事でしたから!」
「まぁいい。そろそろいい頃合いだし、行くぞ」
地下駐車場のエレベーターに乗り込み、二人は一階で降り、顔合わせ相手を探した。
***
待ち合わせのホテルのロビーは、天井が高く、木製の梁のようなものが複雑に組み込まれ、柔らかな間接照明が心を和ませてくれるような、素敵な空間。
侑の後に続いていくと、彼が相手を見つけたようで手を上げている。
瑠衣も彼の背中越しに見てみると、遠目から見ても目立つ男女の姿に、どこか尻込みしてしまいそうになる。
距離が近付くにつれて瑠衣は、あれ? と思う。
(ちょっと待って…………このお二方って……)
そこにいたのは、以前、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツの創業パーティで見た事のある二人。
男性は、副社長の葉山圭に瓜二つのイケメン、適度な長さの黒髪をアップバングにさせ、涼しげな奥二重の瞳がまるで俳優のような方。
隣に座ってる女性は、長い黒髪に眉の少し下で切り揃えられた厚めの前髪、漆黒の大きな瞳が印象的なクールビューティな方だ。
(あ! アルトサックス吹いてた男性とピアノ弾いてた女性だ!)
侑と瑠衣に気付いた男性と女性は立ち上がり、男性の方が侑を見つけて爽やかな笑顔で迎えてくれた。