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「…………どうかしたのか?」
拓人は、隣で首を横に振る女の表情を覗き込む。
「う……ううん。何でもないよ」
困惑気味に作り笑いを貼り付ける優子に、彼はジト目を向けた。
「ホントかぁ?」
「ホントだって……!」
焦った面差しで、笑顔の仮面を被る女。
(この女の中には…………まだ……)
拓人が、フゥッと短く息を漏らし、周囲をグルリと見渡す。
「それにしても、夜景の綺麗な場所には、カップルがウヨウヨいるよな?」
「っていうか、私たち、思いっきり場違いじゃない?」
夜景の明かりに染まっている拓人を見上げながら、女がボソっと零すと、彼は後ろからスレンダーな身体を抱きしめた。
「こうすれば、俺らも、仲睦まじいカップルに見えるんじゃん?」
拓人が掠れた声音で、滑らかな頬に唇を落とすと、優子の身体がピクリと震えた。
「ってかさ、何キョドってんの?」
「キョドってないし!」
恥じらう女を見ながら、拓人はククッと小さく笑うと、再び柔らかな頬にキスを振る。
彼は優子を抱きしめたまま、仄かな熱を孕ませた頬に、何度も唇を押し当てた。
口を閉ざしたまま、拓人の唇を頬に感じさせている女の表情は、何を思っているのか読み取れない。
「…………抱きたい」
拓人の唇が、頬から首筋へと伝っていき、抱きしめる腕に力が入ると、優子が、辿々しく頷いた。
神戸駅から少し離れた場所に建つラブホテルに、拓人は車を滑り込ませた。
フロントに向かうと、七階にある部屋しか空いていない。
彼は迷わず部屋を選択すると、優子の指先を絡ませ、エレベーターに乗り込む。
狭い箱の中で、拓人は七階に到着するまで、女の身体を抱き寄せた。
エレベーターを降りた目の前に、二人が宿泊する部屋があり、ドアの上に設置されている部屋番号のネオンサインが点滅している。
鍵を開錠させた拓人は、女の肩を抱いたまま、部屋の中へ入っていった。