🖤side
俺たちはゆっくりと進んで行く。
俺たち、と言えるのが嬉しい。しょっぴーが恥ずかしいと言うので、みんなの前では普通にしている。
そのはずなんだけど。
🖤「……これ、普通かなぁ?」
🤍「めめ?どうかした?」
ダンスの練習日。
俺は遠くの方にいるしょっぴーを見ていた。
しょっぴーは阿部ちゃんや舘さんと仲良く話をしていたけど、明らかに距離的に俺を避けている。
視線の先をラウールに気づかれて、しょっぴー呼んでくる?と気を遣われる始末だ。
🖤「いいよ。それより…」
意識して話を逸らすが、しょっぴーはこっちを見向きもしなかった。
家に帰ると、先に帰っているしょっぴーがソファにいて、真剣に台本を読んでいた。
🖤「ただいま」
💙「おかえり」
顔を上げて、目が合うとしょっぴーはほんのり頬を赤く染める。
こういうわかりやすいギャップを見ていると、昼間のことも別にいいかと思えるけど、せっかく付き合ってるのにいつまでもこのままじゃ寂しいので、俺はしょっぴーに抗議した。
🖤「あの、昼間…」
💙「昼間?」
🖤「俺のこと、避けてるよね」
💙「え、そう、か?」
髪を撫で付ける癖。
動揺している時のしょっぴーの癖。
しょっぴーは俯いて、答えた。
💙「そんなつもり、ないけど」
🖤「今まで通りにするって言ったのはしょっぴーだよ?」
💙「……うん」
🖤「俺、ちょっと今のままだと、距離、感じちゃうんだけど」
💙「顔、近っ!!」
少し顔を寄せただけで、後ずさりするしょっぴー。ソファの端まで移動してしまった。
🖤「………もしかして、照れてる?」
💙「だって」
🖤「うん」
💙「すぐ、顔に出るから、俺」
それっきり、しょっぴーは横を向いてしまった。
え、何それ。
俺といると、好きって出ちゃうってこと?
🖤「なにそれ、可愛すぎるんだけど」
可愛いを更新してくる天才なの?しょっぴーって。
💙「もう、すぐ言う!それやめろって!」
🖤「だって、可愛いから。ねえ、しょっぴー」
💙「な、なんだよ」
明らかに照れているしょっぴーの頬に手をあてた。
🖤「キスしたい。いい?」
💙「え、今?」
🖤「うん、今」
目の前にずっと触れたかった唇がある。もう友だちでないのなら、キス、したい。
しょっぴーは、真っ赤な顔をして、何か言おうとしたけど、諦めたみたいに脱力した。
そしてぎゅっと目を瞑った。
………。
柔らかい感触が伝わる。
とりあえず触れるだけのキス。
大人のキスはまた今度。
💙「ん……」
🖤「キス顔、可愛い」
💙「だからもう、ほんとそういうのは」
目尻にまた昂った涙が溜まってきたので、俺は口をつぐんでただ見つめた。
しょっぴーもじっと俺を見ている。
💙「こんなことしたら、もっと好きになっちゃうよ」
思わず漏れたしょっぴーの言葉に、胸が疼く。
本当は弄ばれてるのは俺の方かもしれない。天然の男たらしだ、しょっぴーは。
いよいよ我慢できそうにない、と思った瞬間。
💙「お茶!淹れて来るな!」
急にしょっぴーがキッチンへ逃げて行った。
🖤「あ、場所わかる?」
💙「わかるわかる!だからちょっと!あの!ごめんっ」
なんだか必死な声がして、俺はソファに座り直した。
にやつく顔が戻せない。
なんか、もう、本当にどうしたらいいんだろう。こんな中学生みたいな恋愛は久しぶりだ。
🖤「そうだ。今日、夕飯、出前でもいい?ぼんやりしてたら買い物忘れた」
💙「いいよ……てか、カップどこだっけ?」
カウンター越しにうろうろ動き回るしょっぴーに棚の位置を教えた。
💙「……なんか、こうやって、めめんちの物の場所覚えてくの楽しいかも」
🖤「そのうち、しょっぴーの物も増えていくよ」
💙「俺はそこまで図々しくないぞ」
🖤「え?どんどんしょっぴーの物持って来ていいよ」
💙「……そういうの嫌じゃないの?」
きょとん、とした顔をするしょっぴー。俺は自分の部屋に恋人の物が増えるの嬉しいよと言ったら赤くなりつつ、意外そうな顔をした。
💙「そういうもんなのか。なんか、考え方違ってて面白いな」
こういう擦り合わせも、カップルが付き合いだした頃の醍醐味だと思う。しょっぴーは物が増えるのがあんまり好きじゃないからその発想はなかったと言った。
夕飯を済ませた後、いつも通りしょっぴーを見送る。
💙「楽しかった。また来る」
🖤「うん。気をつけてね」
💙「じゃあな」
『泊まっていけば?』
と言う言葉はギリギリで胸にしまった。
このままでは理性が効かなくなりそうだったのだ。
でも………。
ほんの少し触れた唇を指先で撫でながら、俺は俺でどきどきしていた。
コメント
8件
くぅ…めちゃくちゃキュンキュンする💕