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それからも指だけで何度か果てたが、なかなか身体の疼きはなくなってくれない。
ようやく皇宮に着いたようで、馬車がゆっくりと停まる。
座席にもたれて朦朧としているとそっと指を引き抜かれ、手指に付着した愛液をすべて舐めとるケイリクスから目を逸らした。
マントで包まれ、ケイリクスに抱かれて馬車から降りる。
出迎えた皇帝宮の使用人たちは、ケイリクスがメリーティアを連れていようと一切動じることはなかった。そのように徹底的に教育を施された者だけが皇帝宮の使用人になれるのだ。
ケイリクスは一見穏やかそうだがその実、皇后モナよりも恐ろしい人物だと皇宮の誰もが知っている。少しでも機嫌を損ねようものなら、乳母さえ平気で殺しかねない男だ。
ケイリクスは使用人たちの列の間を歩いていく。
しかし皇帝宮の門前でモナが待ちかまえているのが見え、一瞬足を止めた。
すぐに歩みを再開したケイリクスは、侍従に扉を開けさせ無言で通り過ぎようとする。
「――陛下、その女をどこへ連れていくおつもりですの」
「そなたに教える必要はないと思うが?」
「まさか情婦にするのですか! ヨハンセンを堕落させたこの魔性の女を!」
金切り声を上げるモナに怯えたふうにしてケイリクスにしがみついた。
ふたりの仲が険悪になればなるほど、思惑どおりにことが進んでいくだろう。
モナをどう貶めようかずっと頭を悩ませていたのだ。侯爵令嬢でしかないメリーティアは、皇后を相手にするのは少々分が悪い。
そこで皇帝であるケイリクスを利用しようと考えた。
彼がメリーティアに夢中になればなるほど夫婦の仲が悪化し、モナはメリーティアを排除しようとするだろう。前回と同様に。
だが今回、メリーティアは解毒剤であるモモネンの花弁を持っている。
しかし一方で不安もあった。
モナはモモネンの根から抽出される毒を好んで使うが、今回も必ず使用するという保障はない。毒を飲んだあと、花弁を呑み込む余裕があるかどうかもわからない。
そんな一か八かの賭けにはなるが、メリーティアを危険な目に遭わせたのがモナだとわかれば、ケイリクスは相手が誰であろうと容赦はしないだろう。
ケイリクスにモナを始末させるよう仕向ける。
それがメリーティアの計画であった。
「陛下もその女に惑わされているだけですわ。わたくしは陛下の御身が心配で申し上げているのです」
「メリーティアに殺されるのなら本望だ」
「……っ、狂っているわ……!」
ケイリクスはモナから視線を外し、皇帝宮へ足を踏み入れた。
皇帝宮へは許可された者しか立ち入ることができない。それはモナとて例外ではなく、扉の外から叫び続けるしかないようだった。
絢爛豪華だけれど、どこか空っぽな雰囲気のある皇帝宮。
ここに訪れるのは二度目だ。あのときは騎士たちに連れられていたが、今はケイリクスに抱かれて運ばれている。
この内装を眺めることができるのもたった一握りの特別な人間だけだ。しかし前回と状況は違っても、ゆっくりと眺める気分になど到底なれそうになかった。
隠し扉から一度地下道に入り、それから地上へ続く階段を上がる。鬱蒼と茂った木々のトンネルを抜けた先には、花々に囲まれたまるで絵画のように美しい宮殿が建っていた。
前回と少しも変わっていない離宮を前にして、メリーティアは四肢の末端から血の気が引いていく感覚を味わった。
もあ
44
鬼霧宗作
50
#復讐
りう。
45
さぶれ-SABURE-
1,239
ここは天国を象った地獄だ。
メリーティアとグウェンダルの子をケイリクスが殺したときの記憶が鮮明によみがえる。
「どうだ、メリーティア。そなたと余の愛の巣だ」
幸せそうに微笑みかけられて「気に入ったかい?」なんて聞かれた。喉からこぼれそうになる恨み言や嘔吐きを押し殺して「とても気に入りましたわ」と答えるので精一杯だった。
さすがに今はちゃんと笑えている自信がなく、ケイリクスの肩口に頭を預けて死角に入る。
ケイリクスに触れられているところから身体が腐っていくような、最悪の気分だった。
離宮の内装も記憶のままだ。一部違うのは、窓に鉄格子がはまっていないこと。無理やり閉じ込めたあのときとは違い、今回はメリーティアの意思で彼のもとに来たからだろうか。
寝室のベッドに散らされた真っ赤な薔薇の花弁にも強い既視感を覚える。そこへ下ろされると、薔薇の香りにむせ返りそうになった。
メリーティアの身体を包んでいたマントをそっとめくり、ケイリクスが鼻息荒く覆い被さってくる。
思わず彼の胸板に掌を添え、軽く押し返した。
すると手首を握られ、笑顔を消したケイリクスが掌に口づけてくる。
「まだ焦らすのかい? もう限界なんだ」
滾った雄芯を太腿に擦りつけられ、全身に鳥肌が立つ。けれど心とは裏腹に、媚薬で昂らされた身体はじわりと濡れた。
「焦らすつもりはございませんわ。ただ、先に避妊薬をいただきたいのです」
さすがに機嫌を損ねるかもしれない、と下手に出る。
案の定、ケイリクスはわかりやすく眉を顰めた。
「余の子どもはいらぬと? だが余はそなたとの子が欲しい。なに、ユージーンのことは心配する必要はない。女児であれ男児であれ、そなたとの子を世継ぎにすることを誓おう」
「でも……、まだもう少しふたりきりで楽しみたいと思ってはいけませんか……?」
しおらしく言うと、ケイリクスはいたく感動したようだった。
すぐさまベルを鳴らして侍女を呼びつける。メリーティアの要望どおり避妊薬を持ってこさせると、自分でそれを飲み干した。
「陛下が飲んでくださるのですね」
「安全な薬ではあるが、万が一そなたの身に何かあってはいけないからな」
ふつうの神経を持っていたなら、皇帝の身こそ尊いものだとメリーティアに避妊薬を飲ませただろう。
けれど自分が進んで口にしたということは、ケイリクスが自身よりもメリーティアのことを大事だと考えていることの表れだった。
彼がメリーティアの大切なものを壊すような猟奇的な一面を持っていなければ、気持ちを揺さぶられたかもしれない。けれどどれだけ今のケイリクスが献身的に尽くそうと、あの過ちはメリーティアの中から消えることも薄れることもなかった。挽回できるときは一生訪れないのだ。
「――一年だ。一年だけは我慢してやろう。それでいいかい?」
「はい。わたしの気持ちに寄り添ってくださってありがとうございます」
「そなたのおねだりにはどうにも抗えそうにない」
ケイリクスはくすりと笑うと、メリーティアの腰を跨いだまま下衣を寛げた。すでに滾りきったそれは年齢にそぐわぬ力強さがある。
彼が早漏で、一度しただけで満足するような男ならよかったが、そうではないことをメリーティアは知っていた。
ドレスを脱がす手間も惜しみ、膝をこじ開けて足を開かされる。
秘所に肉槍をあてがわれた瞬間、メリーティアは思わずぎゅっと目を閉じて息を止めた。
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