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「なぁ奈美。純と一緒に昼メシを食う仲なのか? アイツに変な事をされてないだろうな?」
「もう! 豪さん心配しすぎだし! 所長には『今年もお世話になりました』って挨拶されただけだよ」
「ならいいが。アイツ、前に『俺もそろそろ本気の恋愛がしたい』って言ってたけど、わっかんねぇからなぁ……。俺の奈美に手を出したら、いくら親友でも、俺は絶対に許さねぇ」
夫の溺愛発言に、妻は呆れながらも笑みを浮かべて、ため息をついている。
(え? 変な事をされてないだろうなって……? 奈美に手を出したら絶対に許さねぇって……。谷岡さんって人、女の人に手を出したり、相当遊んでるって事なのかな……)
恵菜は、奈美の夫が言っていた言葉が、喉の奥で引っ掛かり、気になって仕方がない。
「もう! 豪さんのせいで、話が脱線しちゃったでしょ!?」
頬を膨らませながら、夫を嗜める親友が、恵菜は少し羨ましいと思ってしまう。
「とにかく! 所長と恵菜は、カフェで会う以前に、一度だけ面識があって、私もビックリしたって事だよ」
「なるほどなぁ。『世間は狭い』なんて言うが、人との繋がりって、思いもよらない所で繋がってるんだよな」
豪が、前方を見やりながら、フッと笑みを零した。
立川を出発して約三十分後、豪の運転する車が、恵菜の実家の前に到着。
「あれ? 相沢さんの実家って、うちからかなり近くね?」
「そうなんだよね。歩いて十分くらいかな?」
「え!? 奈美、そんなに近い所に住んでるんだ!」
本橋夫妻の会話を聞き、恵菜が身体を僅かに仰け反らせた。
(今日は、色々と驚きっぱなしだなぁ……)
久々に親友と会い、充実した時間を過ごせた恵菜だけど、それ以上に、ビックリする事が多かった気がした。
「ねぇ恵菜。今度は、うちに遊びにおいでよ。近所なんだし、ぜひ来てよ」
「ええ、奈美の親友でしたら、いつでもウェルカムですよ」
恵菜が豪と奈美を交互に見ながら考えていると、夫婦は同じような表情で目を細めている。
「ぜひ遊びに行かせて下さい。今日はありがとうございました」
送ってくれたお礼を、奈美と豪に伝え、車から降りる。
「じゃあね、恵菜。今度はうちで会おうね」
豪が助手席のパワーウィンドウを開け、夫婦は恵菜に向けて手を振り、滑らかに車を発進させる。
恵菜は深々と頭を下げ、車が見えなくなるまで見送った。