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如月 未澄斗
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#刑事もの
鬼霧宗作
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拘留期限、最終日。
取調室。
坂田は厚い事件資料を机に置いた。
「橋本。」
「今日は最後だ。」
優太は静かに頷く。
「……はい。」
坂田は一枚の写真を取り出した。
鈴木大知。
笑顔でピースをしている、小学生時代の写真だった。
「覚えているな。」
「……。」
「親友だった。」
「うん。」
「彼は、自殺した。」
優太は目を閉じる。
「……。」
「放課後。」
「毎日、あの子たちに呼ばれてた。」
「遊びだって言われて。」
「でも。」
「遊びなんかじゃなかった。」
坂田は静かに聞く。
「いじめだった。」
「……うん。」
長い沈黙が流れる。
「その主犯を。」
「君が殺した。」
優太はゆっくり首を横に振った。
「違う。」
「そう言いたい。」
「でも……。」
拳を握る。
「分からないんだ。」
「僕には。」
「もし。」
「僕がやったなら。」
「それは僕じゃない。」
坂田は深く息を吐いた。
「だったら。」
新しい封筒を開く。
「この三人を見ろ。」
中から三枚の写真を取り出す。
制服姿の女子中学生。
事件の被害者だった。
「この子たちを見て、何を思う。」
写真を机の上へ置こうとした、その瞬間だった。
コンコン。
取調室のドアがノックされる。
担当検事が静かに入ってくる。
「坂田刑事。」
「時間です。」
坂田は時計を見る。
午後五時。
拘留期限。
二十三日目。
「……あと五分だけ。」
「できません。」
「頼む。」
「今、この写真を見せれば。」
「何か思い出すかもしれない!」
検事は静かに首を横に振った。
「法律です。」
その四文字が、取調室を支配した。
坂田は唇を噛む。
机の上には、まだ見せられていない写真。
優太は、不思議そうに坂田を見ている。
「橋本……。」
あと少し。
本当にあと少しだった。
「取り調べを終了してください。」
坂田はゆっくり写真を封筒へ戻した。
「……今日は終わりだ。」
優太は立ち上がる。
「坂田さん。」
「僕。」
「本当にやってないんです。」
その言葉に、坂田は返事ができなかった。
留置場の扉が閉まる。
数十分後。
橋本優太は釈放された。
警察署の玄関。
母親が深々と頭を下げる。
「ありがとうございました。」
坂田は何も言えない。
橋本は一度だけ振り返った。
「もし。」
「僕じゃない人格がやったなら。」
「その人を、止めてください。」
そう言い残し、警察署を去っていく。
坂田はその背中を見つめ続けた。
「………」
拳を壁へ叩きつける。
「あと少しだったんだ……。」
藤堂も俯く。
真実は目の前にある。
なのに、もう手は届かない。
法律は守られた。
しかし事件は、まだ終わっていなかった。
ー
翌日、坂田が出勤してすぐに現場へ駆り出される。
「………まさかな」
コメント
1件
第10話、読ませていただきました。拘留期限が迫るなか、あと一歩で核心に届かないもどかしさが痛いほど伝わってきました。坂田刑事の拳を壁に叩きつけるシーンには胸が締め付けられました。そして「自分じゃない人格がやったなら、その人を止めて」という優太の言葉…これが今回のいちばんの引きだと思います。ラストの「まさかな」から次が気になって仕方ないです。続きを楽しみにしていますね🌷