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オレは消えた幼馴染を探す為、この世界に来た―――
だけど、目の前に苦しんでいる人がいるなら手を差し伸べたいと思っている。
未央、少し寄り道しようと思うけど、悪く思わないでくれよな―――
村人達は傷が癒えたことでだいぶ動ける人が増えた。
少なくない死者もいた。
村人全体で生き残ったのは、65人で死者は20人。
もちろん、あの少女の母親もその一人だ。
ルイーズが村長にこう言った。
「村長すまない―――」
「村の守り手である、私が村を留守にしたばかりに助けに入るのが遅れてしまった―――」
「そんなことは今言っても仕方あるまい。」
「誰も山賊が攻めてくるなんて知らなかったんだから―――」
「それより、さっきの癒しの白魔法―――」
「そしてお主が連れてきたその少年はいったい何者かの?」
そう聞かれ、ルイーズさんはこう答えた。
「この少年とはリンの森林でマジカルモンキーに襲われているところを助けました。」
「行くところと食料に困っていたようだったので、村に連れてきました。」
村長はニコニコしながらそうかそうかと返事をした。
「しかし、少年よ―――」
「こんな事態に巻き込んですまんかった―――」
「正直お前さんの力がなければ被害はこんなものでは済まなかったぞ。」
村長はオレに向かってそう言ってきた。
オレにとって、この程度とは思ってしまう。
いくら、ここが魔法や剣の世界であっても、技術があり、それが体系化しているなら適応できないわけがない。
武力や暴力によって生命が理不尽に奪われる世界であっても、オレなら勝ち残れる。
現実世界でオレはひたすら己の技を磨いてきた―――
自らを―――
大切な人を守る為―――
勝利を得る為―――
強さを体得してきた。
「これからこの縛り上げた山賊たちはどうするつもりですか?」
そうオレは村長に尋ねた。
「ふむ。どうしようかの?」
「殺してもいいならオレが殺りますよ―――」
自然と進の口からそんな言葉が出ていた。
何体も魔物を殺しており、殺すことに抵抗感がなくなっていたから、人を殺すことに罪悪感を感じないと考えていた。
・・・・
いや、それは違うかもしれない。
それ以前に既に人を殺すことに罪悪感など感じていなかったのかもしれない―――
「殺すとなっ!?」
「正直そこまでしなくてもとは思うんじゃが―――」
村長が戸惑った様子を見せる。
「いや甘いですよ―――」
「今回亡くなった人も少なくない―――」
「村人―――、特に遺族が亡くなった人の悲しみを晴らす方法は、この山賊たちの死でしかないと思っています。」
進は真剣な顔で村長を説く。
「今回亡くなった人の遺族はこちらに来てください。」
そうオレは言ってその人たちを集めた。
「この山賊たちをどうします?」
「いや、どうしたいですか―――?」
「殺すことは簡単です。」
「それとも他の町に連れて行って、牢獄に閉じ込めてもらいますか?」
被害者遺族は、迷っているようだ。
「おい!黙って話を聞いてりゃ、兄ちゃんッ!!」
「俺達だって、生きる為にはこうして村々を襲うしかなかったんだっ!!」
「なぁ?許してくれよ―――」
「俺達だって、可哀想だろォーー??」
「金や権力が無ェーから、こうやって山賊やってんだよ!!」
山賊の一人が口を開き、進に対して、命乞いを始める。
だけど、そんな山賊の言葉など進の耳には届かない。
進の冷たい眼が山賊を突き刺す―――
進は一回小さくため息を吐く。
そして、一言―――
「黙れッ!!」
「貴様等の境遇がどうあれ、平和に暮らしてきた人達に害を与えていいはずが無いッ!!」
「恥を知れッ―――!!」
進は眉間に皺を寄せ、縛られた山賊を一喝する。
そこでオレはさらに続けて言った。
「断言してもいい。」
「こういう奴等は、牢獄から出てもいずれ罪のない人を殺しますよ。」
被害者遺族は顔を見合わせて、口を開く。
「いや後悔するぐらい苦痛を与えてから、殺してくれ―――」
「オレに殺させてくれ。妻を殺された―――」
「私は、妹を殺されたわ」
…
進は収納のスキルを使用して、辺りに武器を投げ出した。
中には山賊達が所持していた剣やナイフもある。
「分かった。」
「後は好きにしたらいい―――」
村人たちは次々に武器を手にする。
「おい!待ってくれよ!!」
「助けてくれェーーーっ!!」
山賊達は悲痛な声を上げている。
だけど、もう遅い―――
オレはその場を離れようとしたが、服を捕まれた。
振り返るとそこにはあの母親を殺された少女がいた。
少女は泣きながらオレに聞いた。
「ねぇなんでお母さんは死んだの?」
一瞬なんて返すか迷ったが、はっきり言うことが彼女のこれからに繋がるだろうと思い、オレは答えた。
「それはこの世界が不条理だからだ。力がない者は力がある者に簡単に奪われる」
「この不条理に抗うために必要なのは、力と強い信念だとオレは思う」
この真理はどこの世界に行っても同じだ。
この少女の質問に答えられているのか、オレ自身も分からない。
だからさらに続けた。
「だが、誰しもがそんな世の中を望んでいるわけでもない。」
「平和を望む者が力のある者であれば、この世界はもっと平和になる―――」
「逆も然りだ。」
「もし君がこの世界に自分のような家族を理不尽に殺されるやつを生み出したくないなら、君自身が強くなればいい。」
「力のある者の語り掛けにしかこの世界は答えてはくれない。」
「ただ・・・君の母親は最後まで君のことを守っていた。」
「それは、彼女の”強さ”であったとオレは思うよ。」
そう言って、少女の顔を見たら、驚いたように口を開け何も返事をしなかった。
それからオレは少し風に当たりたいと思い、その場を離れた。
それから1時間程度した後、村人たちによる、山賊の殲滅が完了した。