テラーノベル
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それでは、
どうぞっ。
ーーーーー
雨の音が好きではなかった。
それは昔からだ。
暗い空も、濡れた地面も、傘を叩く無数の雨粒も。
全部が何かを思い出させる気がして。
けれど、その日だけは違った。
その雨が、私の人生を変えたから。
深夜二時。
街の光がほとんど消えた頃。
黒いスーツを着た私は、高い堀に囲まれた豪邸の前に立っていた。
依頼内容は単純。
ある組織の幹部一家の粛清。
裏社会では珍しくもない仕事だった。
私は無所属。
どこの組織にも属さず、依頼だけを受ける。
だからこそ、誰からも利用されず、誰からも縛られない。
そして今まで一度も失敗したことが無かった。
今回も同じ。
そう思っていた。
任務は静かに終わった。
不自然なくらいに。
雨音だけが屋敷の窓を叩いている。
私は息を吐き、出口へ向かう。
これで終わり。
そう思った。
けれど、廊下の先に小さな影が立っていた。
幼い少女だった。
白い寝間着。
裸足。
長い髪は少し揺れている。
その子は私を見ていた。
理解したのだろう。
何が起きたのか。
誰がやったのか。
その瞳だけで分かった。
声は出なかった。
叫びもしない。
ただ目に涙をいっぱい溜めて立ち尽くしている。
私は動けなかった。
任務中にそんなことは初めてだった。
逃げればいい。
今なら間に合う。
誰にも見られていない。
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証拠も残していない。
それなのに。
その子から目が離せなかった。
_昔の私のようだった。
失うことばかりだった幼い頃。
誰も守ってくれなかった。
誰も迎えに来なかった。
誰も手を差し伸べてくれなかった。
少女の瞳が揺れる。
次の瞬間。
糸が切れた人形のように倒れた。
私は咄嗟に駆け寄っていた。
………本当に。
あの日の私は、どうかしていたと思う。
ーーーーー
目を覚ました少女は何も覚えていなかった。
名前は來亜。
それだけ。
あの日のこと。
家族のこと。
どうして倒れたのか。
何も覚えていなかった。
ベットの上で目を開けた彼女は、不安そうに私を見て言った。
🤍「……あなた、誰?」
私は少しだけ考えた。
そして答える。
🩵「柚葉。」
それが私たちの始まりだった。
next.
コメント
1件
ああ、もう、冒頭の雨の描写から一気に引き込まれました……。「その雨が、私の人生を変えた」って一文が全部を象徴してるみたいで。任務を終えた♡♡♡屋と、全てを失った少女・來亜。廊下で向かい合う場面、すごく静かなのに心臓がぎゅっとなりました。特に「昔の私のようだった」と自分と重ねて見てしまう主人公の内面が切ない……。倒れた子に駆け寄るシーン、彼女のプロとしての線がその一瞬で変わったんだなって感じられて、胸が熱くなりました。「柚葉」と名乗るラストも素敵すぎます。続きが気になる……!🤍