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美佳子はコウの目の前に座って反応を伺う。「食べて食べて」
と反応を気にしてるかのような眼差し。コウは手を合わせて
「いただきます!」
と言って用意されたカレー用スプーンで食べる。
一口、アツアツっと言いながら口に頬張ると、ん? とコウは普通の親子丼とは違う食感に端を止め、中身をつっついた。
出てきたのはかまぼこ、椎茸が短冊切りされて入っていた。
「かまぼこと椎茸……かさ増しってのはこのことか」
「うん。少ない鶏肉でも満足な食感、あっくんは大食いさんだからたっぷり食べさせたいからね」
「そもそもそのあっくんて誰や」
「私の彼氏ー」
にやにやっと美佳子は笑った。
「てかさ、いつも弁当か作り置きの親子丼食べてたとか?」
美佳子は会話よりも反応が気になるようだ。
「んまー最近はそうやけど実家の母さんはしっかり火を通す人でな。それが普通と思ってた」
「家庭それぞれだね。いろんなの食べたい」
コウはフゥン、と言って特に違和感はないようでホクホクしながら食す。
「これ母ちゃんにも教えたろ。居酒屋をやってんねん。実家」
「いいよ。メニューに入ったら『みかちゃん考案かさ増し親子丼』て書いといてね」
「母さんやお客さんににどこのみかちゃんって聞かれるなぁ……」
「コウ君、顔真っ赤。まさかまだお付き合いしたことないとか?」
「るっさい……」
コウは顔を真っ赤にした。
「そいやさ、卵料理得意なの?」
「あーそれはね……うちの実家は養鶏場やってるんだ。だから何かと卵と鶏は身近にあるし、食べてる。鶏さばけるわよ、こう見えても」
と美佳子はキラキラとした爪を見せつける。それでさばくのか? とコウは思う。
「だからか。親子丼も飽きるほど食べたやろ。他のものを入れたり工夫したりしとんのやな」
「そうそう。まぁ……この親子丼、「みかちゃん考案」じゃなくてうちのばあちゃんの「ハツエちゃん考案」と言ってもおかしくない……」
コウは想像で美佳子の祖母であるハツエを勝手に思い浮かべる。
「もうしんだけどね、優しいおばあちゃんでさ、忙しいお母さんたちの代わりに料理作ってくれたし、教えてもくれた。お母さんはもともと中華料理屋さんの娘のだったから中華料理寄りのレパートリーだけどね」
ははーんとコウは閃いた。
「ほぉ、何となくわかった……お母さんの中華料理屋にお父さんが卵を卸してたとか!?」
美佳子はびっくりした顔をする。
「……うわ、当てられた。なんで?」
「卵と中華料理……もしかしてとか思って」
「そうそう、業者とその料理屋の娘が恋に落ちて大恋愛! ロマンチックー」
美佳子はとびっきりの笑顔でテンションが上がっている。
「美佳子さんもあっくんとの出会いもロマンチックやったん?」
美佳子はその質問に反応した。
「よくぞ聞いてくれた!!! そう、わたしたちの出会いもロマンチックぅー、もっと聞くぅ?」
しまった、とコウは話が長くなるのが嫌いだ。
「あ、なら……お手製プリンもお出ししますので、いかがです?」
そう聞いてしぶしぶコウは美佳子の話を聞いてやるかとこくりと苦笑いしながら頷いた。
コウは美佳子お手製のプリンを食べながら話を聞くことにした。
「わたしはね、一応養鶏場継ぐっていうテイで農学校出身だったんだけどさ……やっぱりおしゃれ好きだし、都会に憧れて、ちょうど親とも仲悪くて逃げるように東京に来て、好きなブランドのお店で働いてたの。まぁ楽しいし、芸能人もたくさん見たし。でも何か物足りなかった」
美佳子は綺麗になったキラキラの爪をいじる。
「美佳子さんは倖田來未さんか浜崎あゆみさんといえば倖田來未さんの方が好きそうやな」
「うんうん! クゥちゃん大好きー!」
「姉ちゃんがよう聞いとった」
「そうなんだーんでさ、でさ」
美佳子は話を逸らされるのは嫌なようだ。
「仕事は楽しかったけど家は寝て帰るようなもん……ご飯もレトルトとかコンビニ弁当。抜く時もあったわ。あと友達もできなくて。そんな私を見かねた地元の友達からメールが来たの」
「ほぉ」
「招待制のWebサービス⚪︎ixiだったの」
コウはまたでた、⚪︎ixiと思うが彼女にとっては重要なコンテンツだったようだ。
「⚪︎ixiに招待されてから地元の友だちと交流するようになってすごく懐かしい気持ちになったし仕事もセーブしなきゃなぁって少し都心から離れたアパレル店に転職したんだ」
やっぱり話が長くなりそうだ、と思いながらも底にカラメルがあるかもしれないとか期待しながら奥を掘り進めても無いことに少しガッカリするコウ。でも普通にプリンは美味しい。
「転職してから余裕が出てから親とは何とか仲直りできてさ、うちからたくさん卵が定期的に送られてきて。食べることをおざなりにしていた私はおばあちゃんやお母さんが教えてくれた料理を思い出しながら毎日自炊するようになったんだよー」
「食は大事や。俺もできるだけ自炊しとるわ」
「すごいね! でも大変でしょ」
「大変だけど、健康のこと考えたら」
#衝撃のラスト
山根利広
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「私も、最初のころの不健康な生活が祟って病院通い……あのころの自分に叱ってやりたい!」
美佳子は見た目丸っとしていで、病気をしているようには感じ取れなかった。
「でもさ、彼氏はなかなかできなくってさ。たまたま⚪︎ixiのなかでのコミュニティで『農学校卒業した人』というのがあってそこでの集まりが近くであったから行ったの。そこで出会ったのがあっくんなのです!」
話のゴールが見えてきた、とホッとし底つきたプリンの容器を美佳子にご馳走様、とコウは渡した。
「まわりの中で派手すぎて浮いていた私に全く振り向いてくれなくて……一応お友達になったけどさ。で、あっくんが熱出して倒れた時に押しかけてたまご粥を作ってあげたら……そこで告白されたの」
「押しかけたまご粥!」
「押しかけとか言わないで……ついでに風邪もらっちゃったけどいい思い出」
美佳子は思い出に浸っていた。
「それから付き合い始めて半年、私の実家の養鶏場に行きたいって、あっくんが言ってくれたの」
「自分から彼女の実家に行きたいっていうのはなかなかおらんな」
「でしょー。ずっと料理作ってあげてたし、ふふふ」
「彼の家の実家の酪農場はお兄さんが継いでて、自分もなにかやりたかったって。だから実家の養鶏場見て僕に継がせてください! って私のプロポーズの前に言ったのよ……」
コウは笑ったが、少し怒った顔の美佳子を見てへこへこした。
「でも嬉しかった……ちゃんとあの後プロポーズし直してくれたし。だから私もあと半年仕事をして引き継いで退職なのよ」
「そか、ちゃんとしてるんやなぁ……あっくんは」
自分のラブロマンスを語って美佳子はスッキリしたようである。が。
「それにしてもコウくんはなんでここにいるの」
コメント
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「美佳子編 第二話」読了です🥀 美佳子さんの祖母ハツエちゃんのレシピが実は…っていうエピソード、じんわり温かくなりました。押しかけ卵粥からのプロポーズ裏話も「それで付き合ったの!?」ってちょっと笑っちゃったけど、ちゃんと積み重ねがあって素敵だなって思いました。コウくんが話を聞きながらプリン食べてるシーン、なんかほっこりしたし、最後の「なんでここにいるの」で次が気になりますね。