コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
6.淡い芽吹き 篤人と一緒に住むようになって4日目、金曜日の朝。
「あんっ……まって、会社遅れ、ちゃうってば!!」
「まだ6時だよ」
「もうっ……ばかっ!! あんっ!!」
早く起きて、ゆっくりしようと思っていたのに、彼に脚の間を弄られて、嬌声をあげていた。
まだ、終わって欲しくない。
復讐を成し遂げたい気持ちと、彼とずっと一緒にいたい気持ちが交錯する。
それでもこうして抱かれている時くらい、|ただの《・・・》恋人同士であると勘違いしていたい。
お願いだから、終わらないで。そう願わずにはいられなかった。
目を覚ますと、篤人の無防備な寝顔が目の前にあって胸がトクンとひとつ鳴る。
かわいい寝顔。何度も見てきたけれど、まだ慣れない。そっと前髪をかき分けるとそっと目を開けた篤人。
「かのん、おはよ……」
「お、おはよう」
「いま、何時?」
サイドテーブルの時計に目を遣ると、時刻は6時少し前。そう伝えると寝ぼけた篤人が軽くキスを落とす。
急に胸を服の上からいじられて、思わず身体をよじった。
「待って、朝だよ?」
「いいじゃん、別に。いつでもしてくれるんでしょ?」
「でもっ……」
「いや?」
いやじゃない。むしろいますぐ抱かれたい。すっかり淫靡になった自分の身体の奥が、むずむずっと疼く。
何も答えられずに黙っていると、胸の先端を篤人がくりくりと弄る。
「やっ……」
「本当にいや?」
口角を上げた篤人は嬉しそう。私の答えを待たずに、ショーツの中にそっと指を滑らせる。
「濡れてるよ、ここ」
くちっと水音がして、脚の間を擦り、花芽を篤人が軽く摘む。
ソフトに触れたり、時々ぎゅっとしたり、脚の間をいじめられて、軽く果てる。
嫌がっていても、本当は嫌がっていないのが篤人にはバレバレだろう。
「やっ……またっ……!!」
快感の波に巻き込まれて、背中がのけ反る。がくっと彼の胸に埋もれて、はぁはぁと息をする。
「……朝ごはん、用意してくるね」
できたら呼ぶと告げられて、彼は布団から出ようとする。朝から|する《・・》のは悪いと思っているのだろうか。でも……。
──このままじゃ、やだ。
そっと彼の手首をつかむ。じっと濡羽色の瞳を見つめ、ぐいっと布団の中に彼を引きずり込んだ。
もう少し、時間あるよ?
「あのさ」
篤人が息を吐いて、サイドテーブルから、避妊具を取り出す。どきどきと胸が高鳴る。
「……なに?」
「何じゃないでしょ。誘っといて」
パチンとつけ終えた彼が、私のパジャマのパンツとショーツを足首まで引き下ろす。
ごろんと向きを変えられて、後ろから抱きしめられる。彼が自分の硬い質量で、脚の間をぬるぬると擦るとびくびくと蜜口が疼いた。
「んんっ……あうっ……」
「気をつかって我慢したのに」
「だって……」
「欲しいなら、欲しいって言って」
彼は本当に意地悪だ。そっと後ろから抱きしめて、耳元でそう言われたら、もうどうにかなりそう。
「……しい」
「何? 聞こえない」
ふーっと耳に息を吹きかけられて肩をすくめる。抱きしめていた彼の手が、上衣の下から入ってきて胸を弄った。「篤人が……ほ、し……っ、あああっ!」
ぐんっと奥まで一気に突かれて、嬌声を上げる。繋がったところが、いやらしく水音を立てた。
「はぁっ……はぁっ……」
「花音。セックス、好き?」
「そんなの、言えなっ……い!! ああああーっ!!」
セックスも好きだ。でもそれは篤人とするから好きなの。
「素直じゃない子には、おしおき」
篤人のおしおきは、朝から激しい。攻められて果てて、情事が終わっても快楽の灯火はなかなか小さくならない。
私が動けずにいると、その間に篤人は朝ごはんの仕度をしてくれた。
何とか身体を起こして、サイドテーブルの時計を見ると6時50分。
マンションから会社までは徒歩5分。8時半に出れば十分間に合う。
ここはとてつもなく通勤に便利だ。アパートよりは30分以上時間に余裕があるし、満員電車にも乗らなくて済む。
精神状態はすこぶるいい。ずっとここにいられたらいいのにな。芽生えてしまった気持ちが、篤人の優しさを養分にどんどん大きくなっていく。
彼への気持ちを自覚している以上、同居するのはなんだかつらい。
でも逆に考えれば、いまは恋人契約中。思わず好きだと言ってしまっても契約だから……でごまかせそうな気もする。
ほんの少し、恋人気分が味わえたら十分だ。でも、もっと積極的に彼を求めることだって、恋人なのだから問題ない。
復讐が終わるまで、どれだけ時間が残されているかわからないけれど、恋人としていられるのならその時間を大切にしたい。 もそもそとベッドから這い出て、ザッとシャワーを浴びる。リビングに戻ると、トーストの焼けるいい匂いが鼻をくすぐった。
「食べれそう?」
「うん……」
優しく篤人が声をかけてくれて、頬が緩む。
ダイニングテーブルの前に座って、ふたりでいただきますをした。穏やかな朝食の時間がすごく嬉しい。