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「まぁ、そんな事はもういいや。たいして問題じゃないよね」
「へ?いや、結構重要な事じゃ?」
ロイさんは私の額に額を重ね、私の縛られている手に手を伸ばしてそっと撫でた。
「……あぁ……。性的興奮を誘う程の人形を作ったのが、この『手』なんだね?」
素手を人に触られた事は記憶の中には一度もなく、何が起こるか分からず顔が強張る。
「だ、だめっ!」
スッとロイさんの指が刺青をなぞると、呼応するように蒼く光り、脳裏に彼の思念が走った。
——それらはどれも、酷い格好をさせられている自分の姿ばかりだった。
思念の卑猥な内容のせいで気分が悪くなるのに、体の方は別の反応をしてしまい、自分の中で相反する感情を処理出来ない。気持ち悪くて吐きそうなのに、下っ腹の奥は熱っぽくなってずくんっと疼く。
「人間の欲情を無遠慮に引き摺り出す程の『人形』を作る君の体は、いったいどんな味がするんだろうね?」
ゴクッとロイさんの喉が鳴り、そのことで伝わってくる興奮度のせいで私の顔が青冷めていくのが分かるのに、自らの体の芯には熱いものを感じた。
「ずっと触れてみたかったんだよ。芙弓の、この『手』に。繊細な人形を、『人間』だと見紛う程の物を作り出せる、この『手』に……」
「い、イヤだ……イヤ、怖い、気持ち悪い……」
ガタガタと震える体を逃げるように動かすと、「ちょ!その動きはマズイんじゃない?」とロイさんは焦った声で言い、困り顔になった。
「あんまり刺激されるとホント……我慢がきかなくなっちゃうんだけど、もしかしてそれが望みなのかい?」
「ち、ちが!」
逃げようともがいた行為は、私の脚に当たる『何か』を強く刺激してしまっただけで、もちろん彼の拘束から逃げる事など出来なかった。
最後の手段として私は「——助けて!ねぇっお願い!」と、ロイさんの残留思念の入る人形の方に顔を向け、悲痛な声で叫んだ。
「……えっと、それは『僕』に頼んでいるのかな?」
きょとんとした声が返ってきたが、『彼』はすぐに、私が助けを求めた相手が自分であると気が付いてくれた。
「んー……いいよ、助けてあげる」
傍観者を決め込み座っていた『彼』の口元が優しく微笑み、ベッドの上で猫の様に四つん這いになりながら私の声のする方へ近づいて来る。その様子を見てホッとする私に対し、ロイさんは少しムッとした顔をした。
「で?『僕』は何を助けてあげればいいのかな?耳でも舐める?早く芙弓がイケる様にだったら、何だって手伝うよ」
予想外の言葉が耳に入り、私の全身に寒気が走った。
「あはは!流石は『君』も『僕』だね。なんだ、イイ奴じゃないか」
ニヤッと二人が微笑み合う。状況を悪化させてしまった事に気が付き、私は「いゃぁっ!」と短い悲鳴をあげて体を捩った。
「もう、無駄だってわかってても抵抗しちゃうんだから」と、ため息混じりに人形の『彼』が言う。
「あのね、芙弓。僕が思うに、性行為に対して感じる嫌悪感は、ソレを知らないせいで生まれてくるモノだと思うんだ。だから、これが気持ちのいい行為だって分かったら、気持ち悪いなんて感じなくなるんじゃないかな?」
穏やかな声で、ロイさんがとんでもない事を言う。
「推測に頼ってこんな事なんかしたくない!」
「「推測じゃない、確信だよ」」
ロイさんと『彼』が同時に言い切った。
「あはは!まさかここまで考えが重なるとはね!ちょっと楽しくなってきたぞ」
「そりゃそうさ。『僕』は『君』なんだし!」
勝手に意気投合し始める二人を見上げながら、後悔の念が私を支配する。
「じゃあ、僕が今どうしたいか……分かるよね?」
人形に向かいロイさんは微笑むと、『彼』は「もちろん」と弾む声で答え、私の拘束されたままだった腕のネクタイを解いてくれた。
(あれ?解いて……くれるの?)
「……あ、ありがとう」
予想外の行動に、素直に出る感謝の言葉。
「どういたしまして」
何故かロイさんの方が優しい声でそう答えた。
一方『彼』はというと、そのまま私の腕を掴み、さっきまで縛られていた手首を丹念に舐め始めた。
「手首、赤くなっているから優しくしてあげてね」
「もちろんだよ、大丈夫さ」と答え、『彼』が頷く。
「な?ちょ、もう離して!」
熱い舌先が手首を舐め、掌や指先までもを唇や舌を使い愛撫する。 滑りのない舌でそっと舐められると、まるで鳥の羽で撫でられているみたいで背中にゾクッと熱い感覚が走った。
「ちょっ……ホントにダッ……メ、んっ」
「芙弓はこっち向いて」
「……え?」
舌を這わせる『彼』の動きにばかり気を取られていた私の顔を自分の方へ向けさせると、ロイさんは私の唇にキスをしてきた。重なる唇がとても熱い。人形との口付けでは味わえない、吐息と滑り気のある深いキスに、頑なな心が少し溶かされてしまうのを感じる。
「さぁもっと感じて、これが僕の体温だ」
唇が離れ、互いが淫靡に光る糸で繋がる中、ロイさんが吐息混じりにそう言った。『彼』の手は私の耳を指先で撫で、ロイさんのしっとりとした舌が首筋をラインにそって舐めていく。
「んぁ……ヤッ」
指の一本一本までも丁寧に『彼』の熱い舌が這う中、ロイさんは私の室内着の前ボタンを上から一個ずつ外していく。寝そべっていると悲しい位に限りなく平らな胸が少しずつ露になり、私の目頭から、恥ずかしさが引き金となって涙が零れ落ちてきた。
「や、やめてぇぇ、見ないでぇ」
首を横に振りながら訴えたが、彼らが聞いてなどくれるはずが無く、私の胸元が完全にロイさん達の前に曝されてしまう。
「今日も下着つけてなかったんだ?胸が無くても女の子なんだし、着けた方がいいよ?」
「あ、あるもん!」
怒りと恥かしさで顔を真っ赤にしながら、私は叫んだ。
「え?……これで?」
普段だったら多少は膨らみのある部分を、ロイさんが指先でスッと撫でた。
「ふあぁぁぁっ!」
「ふむ。感度はいいんだね。この先、いっぱい食べさせたら大きくならないかな?」
そう言って、ロイさんは私の胸の尖りを指先で擦り始る。
「可愛いね、ココも小さくって。ほんのりピンク色なのがまるで、桜の花弁みたいで綺麗だよ」
「さ、さわっ……——んあっ!」
「ん?『もっと触って』って?わぁ、芙弓ったらエッチなんだから」
「ちが!」
『触るな』って言いたいのに言葉がまともに出てこない。 指先で胸の尖りを撫でられているだけで静電気にも似たモノが背筋を伝い、私から言葉を奪っていく。
「あはは。ココ、立ってきてるね。気持ちいいのかい?」
「……う、うそっ!」
「『僕』には見えないけど、嘘じゃないと思うよ?芙弓の手も体もすごく熱いし。信じられないんなら、起こしてあげるから自分の目で見てみるといいよ」
人形である方の『彼』が私の上半身を起こし、背後に座って、後ろから私の腰に腕を回す。頭を軽く『彼』に押されて顔が下向きになると、「ほら、見えた?自分が感じてる姿……」だなんて台詞を『彼』は甘さの混じる低い声で囁いた。
「イヤ!」
私が短く叫び、二人の間から逃げ様とした途端、「ダーメ。絶対に逃がさないよ?」と『彼』が言い、私の両手首を掴んで自由を奪う。
「どうしようかな、この手。自分の胸でも触ってみる?……それとも、もっと下かい?」
「ぃやぁぁぁぁっ!」
瞼をきつく瞑り、悲鳴をあげながら激しくもがくが、やっぱり無駄な様だ。
「可愛いね。無意味な抵抗をし続ける姿って、どうしてこんなにそそられるんだろう」
普段の顔からは到底想像も出来ない狡猾な表情を浮かべ、ロイさんが囁いた。そして私の胸の先を指で摘み、コリコリと少し強めの愛撫をする。
「んくっ……んんっ!」
「うん、やっぱり可愛い……」
ロイさんは満足そうに微笑むと、今度は私の胸の先を口に含み、涎を絡めながら舌で舐め始めた。
「うあぁっ!」
刺激の強さに驚き、色気の無い声をあげながら背が反れる。
「大丈夫、怖いくないよ」
耳元で『彼』の低い声が響き、温かな舌が私の耳を丹念に舐めだした。耳と胸の両方を同時に攻められて体に力が入らない。頭の中は真っ白になり、性的なモノへの嫌悪感だなんだといったものを感じる隙間すら生まれない状態だ。
コロコロと、ロイさんの口の中で自分の胸の尖りが転がる感覚と、逆の胸を指で弄られ続けられているせいで秘部の奥にヘンな疼きまで感じ始めてきた。
吐息は激しく乱れ、心拍数をも不規則にされていく。せめて、あられもない声だけはあげぬ様にと必死に我慢してはいるが、それもどこまで持つか……。
「ねぇ、『ロイ』」
『彼』がロイさんに向かい声をかける。くちゅちゅっと卑猥な水音をたてながら私の胸先を舐めていたロイさんは名残惜しそうに胸から口を離して「なんだい?」と返事をした。
「僕はこの通り何も見る事が出来ない。だからもっと、芙弓の声が聞きたいな」
意地悪く口角を上げながらされた発言のせいで私の体がビクッと震える。彼等に次は何をさせるのか、考えるもの恐ろしかった。