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エストスクエア内にドラッグストアがあった事は知っていたが、初めて入店した店内は思いの外広く、なかなか瑠衣が見つからない。
ドラッグストアといっても薬だけでなく、日用品や食料品など多岐に渡って商品を取り扱っており、多数の通路を何度も行き来している。
(しかし広いな……)
侑は注意深く辺りを見回し、瑠衣を探す。
数分ほど探し回っただろうか。
男が立ち入りにくい売り場の前で、瑠衣が躊躇うような面差しで一点を見やっているのが見えた。
怪しいヤツだよな、と自分の事を思いつつ、侑は彼女に気付かれないように、離れた場所から様子を伺う。
(瑠衣のヤツ、何を買おうとしているんだ……?)
やがて、瑠衣は意を決するように腕を伸ばし、細長い小箱のパッケージを手に取り、箱の裏を返して穴が開くほど見つめていた。
侑のいる場所からだと、彼女が手にしている物が分かりにくい。
これ以上、瑠衣の様子を影から覗いていたら不審者と思われそうだと考えた侑は、売り場を立ち去り、店の外に出た。
生理用品コーナーの片隅にあった妊娠検査薬を見つけた瑠衣は、ひと通りパッケージに書いてあった説明文に目を通した後、小さくため息を吐いてレジへ向かう。
検査失敗に備えて、二回用の妊娠検査薬を購入する事にした。
(まさか玄関で先生に遭遇するとは思いもしなかったな……。先生には、自分で検査した後に……言おうと思ったのに……)
沈んだ気持ちで会計を済ませ店を後にすると、侑が腕を組み、瑠衣の行手を阻むように待ち構えていた。
「……っ」
思わず目を見張りながら身体をビクっと震わせると、侑がゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
悪い事をしたような気持ちになった瑠衣は、彼から顔を背けた。
「瑠衣。買ったのは、足りない食材じゃないよな?」
彼が何かを知りたい時に耳にする、感情を抑えた低い声音。
追い詰められた瑠衣は、観念したように無言で辿々しく肯首した。
「…………何を買ったんだ? 答えろ」
取り調べの刑事のような口調に、瑠衣は眉尻を下げながら唇を震わせると、彼に八つ当たりするように細長い小箱のパッケージを侑の目の前に突きつけた。
「これだよ! 自分で調べた後に、先生に報告しようと思ってたのに……!!」
パッケージを見た瞬間、それまで鋭い視線で瑠衣を貫いていた侑が困惑気味に顔色を変え、微かに瞠目すると、瑠衣は彼の横を走り去っていく。
「瑠衣!!」
侑は『全く、アイツは……』とぼやくように息を吐き出しながら長い前髪を掻き上げると、瑠衣を追い掛けた。