テラーノベル
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朝、北斗が窓を開けると、鳥のさえずりが聞こえてきた。
見ると、電線に小さい鳥がとまっていた。知っている鳥ではなかったが、綺麗な声にうっとりする。
「鳥さん、素敵なモーニングコールをありがとう」
ニコッと微笑み、支度を始めた。
リハーサル室に足を踏み入れると、まだ誰も来ていなかった。
部屋の隅に荷物を置き、ウォーミングアップをしながらほかのメンバーを待つ。
「次は誰来るかな…。賭けよう。えー、高地かな」
しばらく体操をしていると、ノックの音が聞こえた。
ドアが開き、誰かが顔を出した。「さあ誰だ」
「すみません…」
入ってきたのは、男性のスタッフだった。やや落胆する。
ス「ちょっとスピーカーを借りに来たんですけど…。使う予定のないやつ、ありますか?」
置いてあったスピーカーから、一つ取って手渡しする。
スタッフが去ると、こんどは柔軟体操を開始した。
「みんな遅えーなー」
そして、またドアが開いた。ノックはなかった。
「よっしゃ、次はジェシーだ!」
慎太郎「あ、おはよう北斗」
「おはよう。くぅ…」
慎太郎「? なんか、ジェシーって聞こえた気がするんだけど。いないよ?」
北斗「何でもないよー」
慎太郎「ふうん」
北斗「じゃあ次は樹かな」
慎太郎「何それ」
北斗は慎太郎に笑いかけた。
「賭け。誰が来るかなーって当てるゲーム。ジェシーだと思ったけど外れた」
慎太郎「面白そう笑。俺はきょもだと思う」
次にやってきたのは、ジェシーと大我だった。
北斗「くっ、外れたっ」
慎太郎「いえーい、一人当たった!」
ジェシー・大我「??」
慎太郎「次は樹かな」
北斗「いや高地だ」
ジェシー「何してんの二人とも」
大我「次来る人当ててるんじゃない」
ジェシー「あー」
ガチャっとドアが開き、顔を見せたのは高地だった。
高地「おはよー」
ジェ・大我・北斗「おはよう」
慎「外れた…おはよっ」
北斗「じゃああとは樹。俺の勝ち!」
慎太郎「いつから勝負してんだよ、最初北斗一人でやってただろ」
そして最後、ダンス練習が始まる時間ギリギリに樹は姿を現した。
高地「あら遅かったな、樹」
大我「事故ってないかなって心配したんだよ」
北斗「珍しいな」
樹「いやごめん! 道が渋滞しててさ、遅くなっちゃった。一応北斗に連絡はしたんだけど、電話出なかったから…」
北斗「え?」
慌ててバッグからスマホを取り出し、確認する。通知が一通入っていて、しかもマナーモードになっていた。「あ、しまった」
樹「しまったじゃねーよ笑。ほかの人に掛けてもよかったけど、運転中だし」
北斗「いやー、ごめん。昨日、ドラマの撮影だったからマナーにしてた。これから気を付ける」
ジェシー「なあんだ。じゃ、練習始めるか」
大我「軽っ」
6人はダンスの練習を始めた。
みんなスイッチを切り替え、真剣に踊っている。リハーサル室には、音楽と、6人のステップの足音だけが響いていた。
だが。その音は、突然、北斗の耳に届かなくなった。
北斗(ん?)
突然音が聞こえにくくなり、こもったようになる。
まるで耳栓をしているみたいだ。思わず足が止まる。頭を振ってみるが、何も変わらない。
その様子に、メンバーが気付いた。
慎太郎「あれ、北斗? どうした?」
しかし、その声も聞き取りづらかった。
「ああ…だ、大丈夫」
樹「本当に? 頭痛いの? ちゃんと言ってよ」
特に、右隣にいるはずの樹の声がほとんど聞こえない。声がするのはわかるが、言葉がわからなかった。
たまらず、聞き返した。
「え、何て?」
樹「頭痛いとかじゃないかって聞いてるの」
北斗「うん…違うよ、大丈夫」
練習が終わり、解散したあとはその足でドラマ撮影に向かった。
やや不快感は和らいだが、聞こえにくさは続いていた。
楽屋を出て、スタジオに入り、スタンバイする。
と、遠くでスタッフが北斗の名前を呼んだ。
「松村さーん、ちょっとお願いします!」
だが、声がどこから飛んできたのかわからなかった。
周囲を見渡しても、誰が呼んでいるのか見当がつかない。近くのADに尋ねる。
「今、誰が僕のこと呼びました?」
「あっちのプロデューサーさんですけど…」
「あ、わかりました、ありがとうございます」
手で指し示されたほうに急ぐ。
プロデューサーに言われた変更点をしっかり頭に入れ、その後はリハーサルに挑む。
そのシーンを進めていると、あることに気が付いた。
北斗(何かキーンって音がするな…)
耳元で、高い機械音のような音が鳴っている。撮影機材のトラブルだろうか。後で訊いてみよう。
リハーサルが終わると、一緒に演じていたヒロインの女優に訊いた。
「あの、さっき、変な音しませんでした?」
女優は首をかしげた。
「そうですか? どんな音ですか」
「何か、機械音のような、キーンっていう…」
「いや、何も…。え、耳鳴りとかじゃないですかね、大丈夫ですか?」
「ああ…はい、すいません」
おかしいな、と北斗は思った。確かに音が聞こえたのに。
北斗(まあそんな日もあるか)
特に気にせずに、その日の撮影を終えた。
続く