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あるところに、美女の岩藤と、美男の与太郎がいた。
美男である与太郎は、気の弱く、貧乏。
美女である岩藤は性格が悪かった。与太郎は岩藤から暴言や暴力を振るわれていたが、気の弱い与太郎はやり返すことはできずにいた。
石藤:「さっさと稼いでこい、この泥亀!」
与太郎:「ひえぇ、勘弁しておくれよぉ……。そんなに怖い顔しちゃ、せっかくの器量が台無しだよ。分かった、分かったから、その振り上げた拳を下ろしておくれ。今すぐ行ってくるからさぁ……」
石藤:「おだてたつもりかい!おためごかしはいいんだよ!器量が良かろうが悪かろうが、飯を食わなきゃ死ぬんだよ!あたしの顔を見てる暇があったら、一銭でもいいから稼いでこいってんだ、この穀潰し!」
と石藤。
与太郎:「今からお天道様にお願いして、空から小銭が降ってこないか確かめてくるから、それまで戸を閉めないでおくれよ!」
与太郎はうちを出て行った。
しかし、何もすることがなく、途方に暮れる与太郎。
その頃、石藤は塩をまき、*金持ちの男性をうちにいれる。
石藤: 「おや、お前さん。あんな泥亀、追い出して正解だったよ。あたいの顔を見てる暇があったら稼いでこいって言ってやったのさ。さあさあ、あいつの分まで、ゆっくり飲んでおくれよ」
徳兵衛:「ははは、石藤さん。あんたも人使いが荒いねぇ。あの与太郎ってのは、今頃表でべそをかいてるだろうよ。いい気味だ」
与太郎:「はぁ……。結局、一銭も落ちてなかったし、仕事も見つからなかったよ。石藤も、そろそろ怒りが収まってる頃かな……。おーい、石藤。あたいだよ、戻ったよ……」
石藤:「なんだい、泥亀。まだ帰ってきたのかい。言っとくけどね、もうお前の座る場所なんて、この家(うち)には一寸だってないんだよ」
徳兵衛:「おう、与太郎。聞いたぜ、お前は一銭も稼げない穀潰しだってなぁ。いいか、これからは俺がこの女(アマ)の面倒を見てやる。この長屋の店賃(家賃)も、酒代も、全部俺の金だ。……分かったら、さっさとその薄汚いツラを消しやがれ!」
与太郎: 「えっ、えぇっ!? 石藤……浮気をしてたのかい? あたいを追い出したのは、この人と暮らすためだったのか……」
石藤: 「当たり前だろう! お前みたいな貧乏風といるより、徳兵衛さんみたいな金持ちといる方が、あたいは幸せなんだよ! さあ、二度と敷居をまたぐんじゃないよ、この不浄物が!」
与太郎が泣きながら追い出され、戸がピシャリと閉まったその時。
徳兵衛は上機嫌で石藤の肩を抱きますが、彼はまだ見ていなかった。
石藤の背後、夕闇の中にゆらりと浮かぶ、薄汚れた着物を着て、ガリガリに痩せこけた「本物の貧乏神」の姿を。その化け物は、石藤の首筋にべったりと吸い付き、徳兵衛の懐にある財布を、じろりと品定めするように見つめています。
徳兵衛: 「ははは! 邪魔者が消えて清々したぜ。さあ、石藤。俺の金で、明日からはもっと贅沢をさせてやるからな……」
石藤: 「ええ、嬉しいわ、徳兵衛さん……(その声は、一瞬だけ、地を這うような不気味な響きに変わる)」
与太郎: 「はぁ……。お腹は空いたし、体は凍りそうだ。石藤は今頃、あの徳兵衛さんと温かい布団で寝てるんだろうなぁ……。あたいは、このままお星様になっちまうのかなぁ……」
謎の女: (傘を深く差し、顔を隠したまま、鈴を転がすような声で)
「……もし、そこのお人。そんなところで寝ていては、命が持ちませぬ。……さあ、こちらへ。ついておいでなさい」
与太郎: 「えっ? あ、あたいに言ってるのかい? ……お化けじゃないよね? でも、いい声だなぁ。分かった、どこまでもついていくよ……」
女に連れられて着いたのは、町の外れの竹林にひっそりと佇む、小さくて綺麗な平屋だった
謎の女: 「今日から、ここを貴方様のお住まいになさいませ。私は、貴方様のお世話をさせていただく身。……何も心配はいりません。さあ、まずは温かい粥を召し上がれ」
与太郎: 「わぁっ! 湯気が立ってる! あたい、こんなに優しくされたのは生まれて初めてだよぉ……。石藤の煮転がしより、ずっといい匂いだ」
それからというもの、与太郎は指一本動かす必要がない。
食事: 毎朝、出汁の効いた味噌汁と炊き立ての飯が並ぶ。
衣服: 穴の開いたボロ布ではなく、糊のきいた清潔な着物が用意される。
仕事: 女がどこからか持ってくる「内職」を手伝うだけで、なぜか不思議と小銭が貯まっていく。
与太郎は、彼女の顔を一度も見たことがない。いつも薄衣や傘で隠れているが、その仕草や声からは、とてつもない「品格」と「優しさ」が溢れていた。
ーその頃石藤と徳兵衛はー
その頃、与太郎のいた長屋では、とんでもないことが起きていた。
徳兵衛: 「……おい! 石藤! 俺の金蔵の鍵はどこへやった! 昨日の夜まで山ほどあった小判が、全部『石ころ』に変わってやがるんだ! どういうことだ!」
石藤: 「うるさいよ! 金がないなら、その着物でも質に入れな! あたいは贅沢がしたいんだよ! 稼いでこい、この穀潰しがッ!」
徳兵衛は、かつての「金持ちの余裕」を完全に失い、石藤(貧乏神)に身も心も吸い尽くされていく…。
金持ちの男・・・徳兵衛という名前の石藤の浮気相手。