テラーノベル
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権兵衛の何気ない一言が胸に刺さったまま、屋敷を出た瞬間、純はほとんど反射的に走り出していた。
冷たい風が顔を切る。
息が苦しい。
でも止まりたくなかった。
さっきの光子郎の、焦点が合うまでのわずかな“間”。
権兵衛の、さっきまで自分の存在に気づいていなかった声。
頭の中で、ぐるぐると回る。
(やばい……本当に……始まっちゃってる……?)
そんな考えを否定したくて、僕はさらにスピードを上げた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
部屋に着くなり、バッグを投げ捨て慌てて端末を開く。
「……検索……!」
指が震える。
検索窓に『存在消散病』と打ち込む。
──ヒット数0。
──類似も0。
──似た症状も0。
『嘘でしょ……?そんな……』
病院で言われた難病なら、普通は少しは情報が出るはずだ。
有名じゃなくても、文献や論文はあるだろう。
でも何度検索しても、ページを変えても、スペルを変えても 何も出ない。
(そんな……本当に、僕だけの……?)
不安が喉に張り付く。
呼吸が重くなる。
もう一度、何度も、“存在 消える 病気”“忘れられる 病気 実例”などを入れて、検索を繰り返す。
そして…
一つだけあった
画面の下のほう
広告みたいに小さく表示されていたサイトが目に入った。
『……これ……?』
タップした瞬間、ページが開く。
そこは、明らかに他の医療サイトと雰囲気が違った。
色味は薄く、文章はとても短く、レイアウトも素人が作ったように雑だ。
でも、タイトルだけがはっきりしていた。
『存在消散症について(未承認疾患)』
医療機関が書いた文体ではない。
記録のような、日記のような……そんな文調だった。
スクロールするたびに心臓が強く脈打つ。
『長くて一年、短くて三ヶ月ほどで周囲から認識されなくなる』
『……三ヶ月……?』
喉がひりつく。
自分の血の気が一気に引いていくのがわかる。
さらにページを進める。
『症状は、気配の低下、視線が合いにくい、名前を忘れられる、小さな異変から始まる』
──全部、当てはまっている
権兵衛のあの反応
光子郎の視線の“遅れ”
(本当に……僕…)
指先が冷たくなっていく。
そして、最後の赤い文に目が止まった。
そこで文章は途切れていた。
次の行も、次のページもない。
まるで書きかけのまま、投稿した人が“消えてしまった”かのように。
『そんな…ほんとに…全部……そんなの…やだよ…』
小さく震える声が部屋に落ちた
『存在が消える』
その言葉は今僕にとってこの世で一番怖い言葉になった
続き⇨♡500〜700
コメント
10件
いやいやいやいや!!? 師匠ノベル美味すぎません!!?マジ尊敬✨
あのさ、言ってもいい? ノベルで夢小説作るの上手くね? てか、とうとう純くんヤバくなってきたか…?😱 次回が気になる💭👀✨ これ…ハッピーエンドになるのかな… あ、見た人強制ね 1人100~200いいねしろ((殴