テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「………う、ん…」
病院の真っ白なシーツの上で、お姉ちゃんはゆっくりと瞳を開けた。なかなか治らない病気だったのだが、奇跡がおきて退院することが決まった。父と母は涙をこぼして喜んでいたが、妹は喜んだが泣かなかった。
「お姉ちゃん、退院おめでとう!」
「ありがとう。なんだか不思議な夢を見てた気がするんだ。私と同じぐらいの子と遊んだ気が…」
「そんなことより、退院のお祝いにおもちゃ貰ったでしょ?ちょうだい!」
退院の手続きを待つ間、妹はお姉ちゃんの病室に駆け込んで、お姉ちゃんの手にある可愛らしいおもちゃをおねだりした。
「えっ…でも、これは私のだから……」
お姉ちゃんが困ったように断ろうとした瞬間。
「いいじゃん!ちょうだいよ!!」
妹はお姉ちゃんの手にあるおもちゃを乱暴に奪い、満足気に喜びながら病室から出た。お姉ちゃんは悲しそうな顔をしていたけれど、そんなのはどうでもよかった。欲しいものはなんでも欲しいからだ。
病院からの帰り道、どこからか甘い香りがした。
(なにこれ……すごく良い匂い…)
妹は甘い匂いにつられるように、ふらふらと歩き出す。
気がつくと、昼間のはずなのに、辺りは街灯一つない真っ暗な森の中だった。
「きゃっ…!?な、に……カラス!?」
目の前の視界が真っ黒になるほど大量のカラスが飛び去り、腕で顔を覆った。恐る恐る腕を下ろすと、目の前にはさっきまで無かったはずの巨大な黒い屋敷が佇んでいた。
「な、なにここ…でも、お菓子の匂いがする……」
引き寄せられるように扉を開けると、屋敷の中は全てが真っ赤だった。内装に驚きながらも、甘い匂いがする奥のほうへ進んでいく。
辿り着いたのは、広大なダイニングルームだった。長いテーブルの奥にはお姉ちゃんと同じぐらいの歳の男の子がいた。男の子の周りには沢山のお菓子とおもちゃが置かれていた。
(何あのお菓子とおもちゃ…!ほしい!ほしい……!!)
🐦⬛「ようこそお客さん。そのおもちゃ…感じたことがある気配がするね。僕はレイ。僕と一緒に楽しいお茶会を始めよう」
男の子のレイは、人懐っこい笑顔で手招きをした。部屋の奥からは白黒の奇妙な仮面を付けた4人の従者が現れ、大量のお菓子とおもちゃを用意した。
それから奇妙な生活が始まった。レイの持つおもちゃをもらい、独り占めして遊ぶ時間はすごく幸せだった。
気がつけば17日経っていた。家族は心配してるだろうけど帰りたくなかった。
(こんなに沢山あるおもちゃとお菓子は全部…私のものなんだから!)
17日目の夕方、いつも通りダイニングルームに来てお茶会を始める。
妹はテーブルにある大量のおもちゃを両腕で抱え込む。
「ねぇ、あっちの棚にあるおもちゃもちょうだい!」
🐦⬛「ダメだよ。それより、今日はお姉ちゃんにお菓子を用意したんだ。これたよ!」
白黒の奇妙な仮面を付けた従者が、妹の目の前に大きな皿を置いた。
そこには、4枚積み重なったパンケーキにはちみつがドロドロと注がれていて、上にはバターが乗っていてとても美味しそうだった。とても甘い匂いに、妹の目が輝く。
「わぁ……!美味しそう!!」
🐦⬛「これ全部君のだから、全部食べていいよ」
妹はフォークを突き刺して、パンケーキを口の中に放り込んだ。
驚くほど濃厚なはちみつの甘さとパンケーキのふわふわが口いっぱいに広がり、手が止まらなかった。皿にあったパンケーキは綺麗さっぱり無くなった。
「ん!美味しい!レイ、おかわり!!もっとちょうだい!」
🐦⬛「もうダメだよ。それでおしまい」
「ケチ!じゃあ私が作ってやるんだから!!」
立ち上がろうとした瞬間、突然の睡魔に襲われた。
🐦⬛「目を覚ましたらまたたくさん用意してあげるから、お部屋のベッドで寝なよ」
「う、うん…」
妹はレイに案内され、ベッドのシーツの上に倒れ込んだ。
真っ赤な内装の屋敷とは違う、真っ白な部屋。そこに横たわった瞬間、妹の意識は底のない深い闇へと沈んでいった。
静まり返ったダイニングルームで、無邪気に笑ってたレイの目つきが一瞬で冷たくなる。
レイは妹のいた椅子へ近づくと、彼女が最後まで離さなかったお姉ちゃんから奪ったおもちゃを、小さな手で無造作に拾い上げ、大きな窓へ向かう。ガタリと窓を開け、何のためらいもなくそのおもちゃを外の暗闇へと放り投げ、底の見えない闇の彼方へと落ちて消えていく。
それと同時に、妹が眠る白い扉がじわじわと赤く染まる。扉の隙間から、これまでになくドロドロとした真っ黒なモヤが溢れ出し、レイの体を優しく包み込んだ。レイがその黒い闇を大きく吸い込むと、彼の体はまた少しだけ大きくなった。
🐦⬛「けけけっ!wハニーグリードパンケーキはどうだった?君にぴったりのおもてなしでしょ?」
レイは赤く染まった扉を愛おしそうに撫でる。
🐦⬛「もっと欲しいって言ったよね? けけけっ!w ……次にそれを用意して、僕たちにお給仕するのは、君の番だよ」
これで従者が増えた。赤く染まった部屋で彼女はピクリとも動かずに倒れ、生気が無い。レイは白黒の奇妙な仮面を持ち、狂気に満ちた笑顔を浮かべ、静かに言った。
🐦⬛「──さぁ、始めよう」
To be continued
コメント
3件
うわぁ…第8話、めっちゃ怖かったけど止められなかった😭💦 妹の「欲しい!欲しい!」って気持ちがどんどんエスカレートして、最後のパンケーキシーンでゾッとしたよ…。あの甘い匂いにつられて、幸せのどん底に落ちていく感じがリアルで良かった。レイくんの笑顔の裏にある狂気、ヤバすぎる…続きが気になりすぎて今夜眠れないかも✧\(>o<)ノ
#一次創作
なべたろう🩵🐧推し
178
1,629
もな
68