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エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件

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エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件

83 - 第83話 圧倒的な暴力に一体何の意味があるのかこんなものは正義でも何でもない

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2024年12月22日

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~アクアマリノ 中心街~

進の治癒の白魔法を見た神殿騎士の男は、急に動揺し、狼狽え始めた。


「早く、戻ってガリア様に報告しなければ―――」


「待てよ!逃げるのかさっき冒険者風情とか言っていた相手に対して。」


オレは挑発のスキルを発動し相手のヘイト値をあげる。


「グッ、いいだろうそんなに痛い目に遭いたいならオレ自ら貴様を動けない体にしてやる!」


「いいねそうこないと!」


進は不敵な笑みを浮かべる。


「どうした剣を抜かないのか?」


男は進に剣を向けながら言う。


「お前程度に剣など必要ない!」

と、進はハッキリと言う。


「貴様と言う奴はどこまでこのオレをコケにすれば気が済むんだ!」

「後悔しても知らんぞ!」


進と男は戦闘態勢に入る。


ジリジリとお互いの間合いを測り、相手の動きを注視する。


先に男が仕掛けた。


「聖剣技:天暴絶乱閃!」


男の一閃が大地を割り、進に向かう。進はそれを紙一重で避ける。


その一閃は前の家々を全て破壊した。


「かなりの威力してんだ聖剣技ってのは―――」

「全部あんな威力しているのか―――」


進はつい呟く。


進は、自身の持つ神聖剣で聖剣技を放ったらどれほどの威力になるか想像し震えた。


「どうしたオレの聖剣技に驚いたか!」

「白魔法の力を剣に纏わせ放つ、その相乗効果により、絶大な威力を発揮するそれが”聖剣技”だ」

「貴様ら凡人には到底到達することのできない領域だ!」


男は自慢げに言うが、進も既に聖剣技はいくつか習得済みであることをこの男は知らない。


「どうした今なら剣を抜いても構わんぞ!貴様の五体満足なウチにな」


「いいや関係ないね。」

「やはり貴様程度に剣を抜く必要はない。」

と、すっぱりと男の皮肉めいた勧めを断る。


「後悔するなよ…!」

「聖剣技:天暴絶乱閃!」

男は再び同じ技を繰り広げ始める。


それを進は避ける。


「あの男この街を壊す気か?」


男の激しい攻撃に中々反撃に転じることができないでいた。


「しょうがない、このまま他の人に攻撃が当たるかもしれないのは避けたいから、賭けに出るか」


「聖剣技:天暴絶乱閃!」

6度目の聖剣技が放たれる。


進は今度の攻撃を避けずに真正面から受け止める。

「どうした小僧!自ら受けて耐えれると思ったか!?」

「甘いぞ!オレの聖剣技の威力を舐めるな!」


「ススムさん!頑張って!」

マリーの声援が聞こえる。


オレはカッと目を見開き、自身の右手に白魔法の力を集中させる。


「ハッ!!」


その瞬間、男の天暴絶乱閃の威力は完全に掻き消した。


「な、何をした貴様!?」


「簡単なことだ。同じ白魔法で威力を相殺した。」

「もちろんオレの方が白魔法の威力が大きかった。」

「ただそれだけだ。」


「そ、そんなことがあり得るか!!」

男は激高し、再び天暴絶乱閃がそれら全てをオレは同じように掻き消した。


「く、、あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないっ!!」

男は頭を抱え、狼狽える。


進は、その瞬間を見逃さず、一気に距離を詰めた。

右のストレートを放った。男はハッと気づき、剣でガードした。


剣と拳がぶつかり合い、その場に激しい衝撃音が鳴る。


進は剣に拳をぶつけたまま男の懐に入り、相手の太ももを掴んで、そのまま押し倒した。


柔道技で言う朽木倒を掛けたのである。


「なんだとッ!?」


男がガシャンと大きな音を立て地面に倒れ込む。


そして、進は男のマウントを取り、右の拳で顔面を殴った。


その次は左の拳で殴った。



何度も何度も―――


ただひたすらに殴った。


「ガハァ!!」


男は悲鳴を上げる間もなく唯々血反吐を吐くを繰り返した。


な、なんだこの小僧は、強い、強すぎる。


なぜこのオレがこんな一方的に殴られているんだ?



「待ってくれ!ま、参った!!」

「この勝負はお前の勝ちだ!!」

「だからもう止めてくれ!」


男は敗北を認め、進に殴るのを止めるように懇願するが、進はひたすらに殴るのを止めない。


唯々男の両の頬を殴り続けた。男の葉が何本も抜けても、進の拳が殴り続けて手の皮が剥がれてもお構いなしに殴り続けた。


「もうお前たちには関わらないから!」

「もう止めて、ぐふッ!」


進の拳が男を殴る。

男にはただ恐怖を感じていた。オレを殴っている進の表情を見たからだ。


無表情なのである。


怒りを露わにするでもなく、弱者を甚振って笑うでもなく、こんな暴力を振るって悲しむでもなく、ただ無表情なのである。


機械的な進の行動に恐怖しか感じなかった。


「もう…止めてく…れ」

男の声が微かになっていき、意識がなくなっていく。


進は男の意識が完全になくなるのを確認し、マウントを解除する。


「兄ちゃん!お前凄いな!あの神殿騎士を倒してしまうなんて!」

「あの少年も助かったよ!」

「貴方は正義の味方よ!」

街の人たちは口々に進を褒め称えた。


なんて都合のいい奴らだ。


ただあの少年が殴られるのを見ていたお前たちも同罪だ…


と進は思い、

「こんなものに一体何の意味があるのか、こんなものは正義でも何でもない。」

とボソッと呟いた。


進は倒れた神殿騎士の男を見つめたが、その男を見る目は完全に興味の失ったおもちゃを眺めるようだった。



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