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第56話:カナルーンを使ったゲームセンター
夕方の街並み。ネオンが灯るアーケード通りに、巨大な「協賛ゲームセンター」の看板が輝いていた。入口には「安心ラベル付き娯楽施設」と大きく書かれ、列を作る市民たちが次々と入っていく。
水色のパーカーに短パン姿のまひろは、小さなバッグを肩にかけ、ワクワクした表情で中へ入った。隣にはラベンダー色のブラウスにベージュのスカートを着たミウ。イヤリングを揺らしながら、ふんわりと微笑んでいる。
「え〜♡ ここはカナルーン入力で遊ぶんだよ。普通のゲームより安心なんだよねぇ」
館内の端末にまひろが手を伸ばす。淡い緑色のインターフェースに光が流れる。
「ゲームセンター」
↓
「シューティング イチカイ」
↓
「カイケイ」
↓
「ケッサイ」
↓
「オワリ(アンズイ)」
ピッと音が鳴り、端末からカードが発行される。それを機械に差し込むと、画面に「協賛シューティング」と表示された。
ゲームが始まると、敵を倒すたびに「幸福度ポイント安心イチ」と画面に表示され、スコアと共に市民ランクが加算されていく仕組みだ。
クレーンゲームの前では、子どもたちがカナルーン入力で操作していた。
「ハジメル → クレーン → アンズイ」
景品が落ちると「安心認証」と書かれたラベルが一緒に出てきて、子どもたちは誇らしげに受け取っていた。
「ぼく、ただ遊んでるだけなのに、ポイントが増えるのはちょっと不思議だなぁ」
まひろが無垢な瞳で呟くと、ミウはにっこり微笑んだ。
「え〜♡ カナルーンで遊ぶと、未来に貢献したことになるんだよ。だから安心なんだよねぇ」
だが、天井に取り付けられた監視カメラは、すべての入力と遊び方をリアルタイムで記録していた。
誰がどんなゲームを選び、何分遊んだかまでも「安心記録」としてネット軍に送信されていく。
暗い部屋。
緑のフーディを羽織ったゼイドが、モニター越しにゲームセンターの映像を見ていた。
「娯楽でさえ、入口は呼び出しカナルーン、終わりはアンズイ。
安心という言葉で遊びすら縛れば、人は喜んで自分を差し出す……」
モニターの中では、市民たちが「アンズイ!」と声を合わせ、笑顔でゲームを終える姿が続いていた。