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テラーノベル(Teller Novel)
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「 あんた此の子がどんな気持ちで告白したと思ってんの !? 」


下駄箱に反響した甲高い声


声でも眼でも露骨に苛立ちを示してくる眼の前の女達






遡る事 、 5分前 。






羽優と帰ろうと下駄箱にふたりで居た 。


小さな長方形の扉を開けた先に一通の封筒が置かれていた 。


「 なになに 〜 ? 呼び出し っ ?? 」


羽優の何故か弾んだ声とは裏腹に俺は心底うんざりで早く彼女と帰りたかった 。


「 悪ぃ 、 ちょっと校門で待ってて 」


「 可愛い子かな 〜 、 誰だろな 〜 」


拗ねる事も悲しむ事もせず 、 ひとり愉しそうに話しながら去っていく羽優


手紙に記されたクラスと知らない女子の名前


‘ 話があるので下駄箱で待ってて下さい ’


丸みを帯びた少し読み難い字で書かれていた


「 ぁ 、 卯木君 ? 」


階段を降りてきた背が小さい女に声を掛けられる


「 … うす 」


「 良かった 、 待っててくれて 笑 」


後ろに居る2人の女は連れだろうか 。


女という生き物はどうしてか群れたがる


俺には理解できない感情だった 。


そういえば羽優はあまり群れる事が無い 、

というか友達と居る所をほぼ見ない 。


「 人待たせてるんで早めに済ませて貰って良いすか 、 」


出来る限り嫌味に聴こえない様に言葉を選ぶ


俺の言葉に瞳を僅か大きくして深呼吸していた


「 私さ 、  好きなんだよね卯木君のこと 。 」


ひとり頬を赤らめて返事を待っている様だった


断るつもりで口を開こうとすると同時に少し早口で捲し立てる様な口振りで一言放たれた 。


「 付き合って欲しいんだけど迷惑かな ? 」


嗚呼 、 引ける雰囲気じゃない 。


脳を支配するのは羽優の事だけで眼の前の女など興味は微塵も無い 。


「 … や 、 彼女居るからごめん 」


よく有る ‘ 好きになってくれて有難う ’

なんて台詞は絶対に言わないし思いもしない 。


「 は ? 」


脚を動かそうとした時 、 低い声が耳に届いた


告白してきた女じゃない


連れだった 。


「 あんた此の子がどんな気持ちで告白したと思ってんの !? 」


「 否 、 彼女居たら断るだろ 」


もうひとりの連れに慰められている涙目の女に眼を遣る


「 ごめん 」


一言残して戻ろうとする


顔を上げた先に彼女が 、

校門で待ってたはずの ‘ 蒔田 羽優 ’ が居た


不覚にも風で揺れた髪が綺麗だと思った 。


俺が名前を呼んだ直後少し走り気味に近付いた


涙目の女に 。


「 ねぇねぇ 、 杜真に告白したの ? 」


「 … 煩い 」


「 ぁ 、  ごごごめんね っ !?

そういう意味じゃなくて 、 さ 、 」


焦った様にポケットからハンカチを出して差し出した 。






「 私達 、 良きライバルじゃん ! 笑 」






下駄箱の入口から差し込む夕陽に照らされた彼女の笑顔は何より美しかった 。


「 仕方ないからいいよ 。

彼女でも何でも私が勝つし … 」


「 お ! 強気だね 〜 ? 笑 」


鈴の音のような笑い声に想う 。










嗚呼 、  此奴には恐らく生涯敵わない 。












私 の 長 い 走 馬 灯

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