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眠狂四郎
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彼がいなくなったのを確認してから、バッターは出入り口の影から姿を現した。
通路の端では、先ほどのエルセンが呆然とした表情でピンク色の空を見上げている。
バッターは彼に近寄り、話しかけた。
「さっきのやつは誰だ?」
バッターの声を聞いたエルセンは、首が飛んでいくんじゃないかと思うほどの勢いで顔を上げ、そして顎が外れんばかりに驚愕した。
「え、あ。あ、あなた。無事……なんですか…?」
「ああ」
バッターのその変わらない物言いに、エルセンは少しほっとしたように肩の力を抜いた。
「あ、あの。それで…亡霊たちは…?」
「一掃した。今はもう、畜舎は清浄だ」
「じゃあ、あなたは…」
エルセンは一瞬顔を明るくしたが、すぐに何かを思い出したかのようにうつむき、言った。
「あなたはきっと、すごくラッキーだったんですね」
「で、あいつは誰だったんだ?」
バッターは有無を言わさず改めてエルセンに聞いた。
エルセンは、少し戸惑ってから説明を始めた。
「あの人が…彼がデーダンさんです」
聞き覚えのある名前に、バッターは合点がいったように少し頷いた。
彼の名は以前にも一度だけ語られていた。覚えている読者には、今さら説明は不要だろう。
エルセンは続けた。
「彼は、クイーン直属の監督官なんです」
エルセンの返答に、バッターはわずかに表情を曇らせた。
それから、ただ一点を見つめながら、言い放った。
「亡霊ということか」
「…いえ。それはないです…」
エルセンはバッターを不思議そうに見ながら冷静に言葉を返す。
「クイーンが亡霊を雇うことなんてありませんから。デーダンさんが亡霊だなんて、ありえません」
「だが、やつは敵意を持っていた」
瞬間、バッターの表情はさらに険しくなった。
「倒さなければ」
「だ、だめです。そんなことしないでください」
エルセンは必死そうに手を前に突き出しながらバッターの言葉に割り込んだ。
「彼はクイーンの使いなんです」
エルセンはバッターの視線を受け止めきれず、目を泳がせながら言った。
「あ…あの…ええと…煙鉱山での仕事を終わらせてきたらどうです、か…。…お、お願いします…」
「…」
バッターは一泊の間黙ったが、エルセンは続けた。
「それに、彼はアルマに居ます。アルマには、正式な許可がなければ入れませんよ。だから…お願いします…。煙鉱山に戻ってください…」
「分かった」
今度は一拍の間すら置かずに言ったバッターに、エルセンはほっとしたような顔をした。
すぐさまバッターはエルセンに背を向け、歩き出す。
そんなバッターを、エルセンが呼び止めた。
「あ、あの。そういえば、梯子の先の道…塞がっていたはず…ですよね? 開けておきます…」
エルセンはそれだけ言うと、逃げるように畜舎へ戻って行ってしまった。
バッターが昇って来た梯子を、今度は下ると、確かにそこにあったはずのブロック達がなくなり、通れるようになっていた。
バッターが周囲を警戒しながら奥に進むと、途中から壁に掛けられているランタンが消えているのを発見した。
それも、一つ二つといった話ではない。奥の方までずっとそうだ。
バッターは壁に手を付け、壁沿いを進むことにした。
だが、一本道と思われた坑道は、行き止まりばかりだった。
バッターは何度も進路を変え、暗闇の中を歩き続ける。
途中で見つけたのは、ブロックに塞がれた小さな道だけ。
そうして、最後に選んだ左の通路の先で、ようやく広間へ辿り着いた。
その広間の壁には、上げ下げするタイプのスイッチが取り付けられており、バッターはそれを下ろしてOFFにした。
すると、なにやら遠くの方で、がこん、と音が聞こえてきた。
バッターが来た道を戻ると、ブロックで塞がれていた通路からブロックが消えており、奥へ進めるようになっていた。
奥の方に進んでいくと、灯っていなかったランタンが灯っており、周囲がしっかりと確認できるようになった。
バッターは辺りを少し見回してから、いつも通り歩き出した。
すぐに突き当たり、左に曲がると、そこには見知らぬ影が立っていた。
エルセンでもジャッジでも、はたまたデーダンでもない。
そいつは、顔の下半分全部を覆うタイプのマスクの様なものを付けており、上半身は白い無地のTシャツ。下半身には黒いズボンを履いていた。
男はバッターを見るや否や、へっへへ。と笑いながら言った。
「そろそろ、キャラクターの経験値も溜まってきたんじゃないか?」
「なんだって?」
意味不明な問いにバッターが聞き返すと、そいつはまた、へっへへ。と笑いながら言った。
「つまりさ、並みの読者は、ややっこしくてつまーんねえお喋りなんざ、そんなに必要としちゃいないってこと。アクションはたあーっぷり。謎解きは少なく。こうあるべきだって」
回りくどい言い方を意にも介さず、バッターはそいつに聞いた。
「お前は何者だ?」
「オレはザッカリー。どんなゲームにも物語にもいなくっちゃならない、由緒正しきアイテム商人ってヤツさ」
ザッカリーは、再び笑いながら自己紹介をした。
「これからオレは、いつでもあっちこっちに出向いて、気づくとアンタの目的地に先回りしてる羽目になんのさ」
ザッカリーは言い終えると、腰に手を当てて軽く身体をひねり、バッターを覗き込みながら言った。
「へっへ、まあ、タワゴトはこのへんにしとくか。アンタにじっくり耳を傾けてもらえるほど、オレは重要なキャラクターじゃないんでね。さあーて、アンタがどれほど金持ちか、見せてもらおうじゃないの」
それからザッカリーは、どこからともなく商品を並べ始めた。その中には、バッターやアドオンにぴったりの防具や、武器などが並んでいる。
バッターは、自分とアドオン用の武器と防具を購入し、いらなくなった装備を売り払った。
「はっはあー。存外、金持ちじゃないの。今後もご贔屓に頼むぜ? なにせ、アンタの冒険が終わるまで、オレはアンタ以外に商売できねえんだからな」
そう言うと、ザッカリーはひらひらと手を振った。バッターはそれ以上言葉を交わすことなく、次の部屋のドアへ手をかける。
ドアを開けて中に入ると、受付とエレベーター。そしてランタンが一つあり、受付の中にはエルセンが一人だけ立っていた。
「…???」
エルセンは、ドアを開けて入って来たバッターを見て、目を瞬かせた。
「…えっ、どうやって…。どこから来られたんですか…?」
「煙鉱山から来た」
未だに戸惑いを隠しきれていない様子のエルセンは、もう一度バッターを見ながら言う。
「でも…どうやって… え? そ…そんなの無理だ…あそこには一つも明かりが点いてないんですよ…。そんな…来れるわけが…」
「信念が俺を導いた」
バッターは、当然のことのように恥ずかしげもなく言って見せた。
「し……信念?」
「ああ。鉱山を浄化するのが俺の任務だ。…しかしここの亡霊どもは、とりわけ数が多いみたいだな」
バッターはドアの隙間から奥を一瞥し、吐き捨てるように言った。
エルセンは、亡霊……と小さく呟き、不安そうにバッターを見つめた。
「ここはどこだ?」
バッターはエルセンにそう聞いた。
瞬間的にエルセンははっと顔を上げ、バッターを見た。
「あー…ええと…」
そうして、エルセンは説明を始めた。
コメント
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読み終わったよ〜!ZONE1その4、めっちゃ面白かった…! デーダンってクイーン直属の監督官だったんだね。バッターが「奴は敵意を持っていた」「倒さなければ」って言った時の空気、ゾッとしたよ…。でもエルセンが必死に止める姿に、なんだか切なくなった。 そしてザッカリー登場!「並みの読者はややっこしいお喋りよりアクションだ」ってメタ発言、ニヤッとしちゃった。バッターが「信念が俺を導いた」って言い放つシーン、かっこよすぎて痺れた…! 次も絶対読みたい。続き、楽しみにしてるね🌙