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#衝撃のラスト
山根利広
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朝、依頼先に行く前に天狗様のいる山の下の寺に行く。2人の坊主たちが朝の掃除をしていた。 そのうちの一人が虹雨と由貴に気づいてすぐ倉田を呼びに行った。
「おやおや、朝も早いですな。お互い」
「めっちゃ眠い」
虹雨はサングラスをとって目を擦った。昨日のミツオの口から出た女王蜂のことを口にすると苦笑いしていた倉田の顔がハッと変わった。
「まだ幼虫が残っていたのか……天狗様が捨て身で成敗したのだが」
「……まだ社会における女性への待遇が良くならない、とのことでしようか。彼女たちを救うためにという名目で女性たちの恨みつらみを吸い取りそれを養分としてまだ生き残ってたとか」
女王蜂。
〇〇県の山奥にある女性だけが住むとある施設。
仕事や家庭での辛さ、苦しみに耐えきれず逃げ場がない人たちを救い出し共に生活しようという駆け込み寺的なものとして過去に存在していた。
しかし救いとは裏腹に逃げてきた女性たちの恨み孕みを吸い取り、大きな憎悪を生み出して生き霊などになり人間界に恐怖を与え続けてきた。
関係ない人たちまでもを巻き込み神隠し、事故死、病死など望まない結果を招き挙げ句の果てにはそんな罪深いことをしてしまったと追い込まれた女性たちは精神を壊していく。
そしてその精神を壊された女性たちもまた恨みつらみを増長させてまたしも養分となり女王蜂のパワーとして吸い取られる。ボロボロになるまで使い果たされたら終わり。
その施設には多数の大人の女性たちの遺体があった。
「あれは地獄だったな。直接は僕ら見とらんけど倉田さんげっそりやったわ」
「流石にあの倉田さんは子供の俺らが見たらあかん、て判断させてくれたおかげでトラウマにならんかったしな……」
「女性たちの中に子供連れてた人達おったけど子供は助かったのが救いだわ」
倉田はふと二人の会話を遮った。
「ちょっとまて」
「なんすか」
「……やはりその子供たちは救うべきではなかった」
「まさか殺そうとしてた? 幽霊や怨念ではない、子供たちを」
倉田の足元に無数の猫たちが板の間にか群がっていた。そのうちの一匹を倉田が掬い上げ頬擦りする。
「母親を殺された、亡くした恨み……それが残っていたのではないだろうか」
と、倉田が言うと虹雨、由貴は声を合わせてあああ……と声がつい出てしまった。
にゃー
とあたりは猫だらけ。猫捨寺と呼ばれているこの寺。しかしここまで猫が集まる時は何か起きる、そういう時だと虹雨は察した。
「まだ断定はできぬが……子供だからと甘く見てきた自分がいけなかった」
倉田は寄ってきた猫たちに鞄みたいな袋から餌みたいなのを遠くに撒いて散らした。虹雨と由貴たちは久しぶりにこんなに猫を見たと少しゾッとしてるのもある。
「……あなたたち2人の世話をしてたのもあって子供には甘くなってたかもしれませんなぁ」
としみじみ倉田はいうが
「何を言う、こきつかったくせに」
「そだ、そだ! あれが子供にやる所業か!」
虹雨と由貴はそうでもなかったようだ。やんややんやもう30超えた2人であったが倉田はそのピーチクパーチクしている姿を見て笑っている。
「何笑ってる、この鬼畜!」
「鬼畜は言い過ぎだ。天狗様は手加減してるだけでもっと鬼畜だぞ」
「天狗様の方が全然優しいぞ……まぁもういいけど……これからまたこき使われるぞ、由貴」
由貴は倉田を見る。180近くある自分よりもさらにでかい倉田は2人を見下ろす。子供の頃、倉田はこんな顔だったか? と思いながらも不気味な笑みを浮かべる倉田は絶対怒らせてはいけない、子供の頃からずっと思っていた。
「2人とも、わざわざ情報ありがとう。天狗様にも女王蜂のことを伝えておく。他の仲間たちの情報網辿って探ってみるが……お前らも今の仕事と同時にネットで調査して欲しい」
「わかった。あの2人が出会った掲示板で女王蜂の施設の名前が上がった経緯とかも調べてみる」
虹雨は左手を倉田に差し出す。ほい、ほい、と。
倉田はそれを見てハイハイという顔をした。
「まぁそれよりも今日の仕事をやらなくてはならんだろ」
「そうですけど……今回は天狗様からの指示じゃないんですね」
「そのようだな、その格好……プッ」
「笑うな!」
そう、虹雨と由貴の今の格好は農作業ぽい地味な色のつなぎを着て長靴、大きな虫アミを2人は持っている。
「美帆子……所長によると夫である元探偵の真津さんの仲間の探偵である方が長年受け持っていた業務を受け継いでてこれを俺らがやれって」
「ほぉー、雑務ですか」
「なんで俺らがこんなことしなきゃいけないんだよ」
「そう伝えましょうか、美帆子さんに」
「いや、それだけは……」
虹雨と由貴は首を横に振る。仕事をしなければお金にはならない。それはわかっている。由貴も仕事を失い自殺しかけてようやく探偵事務所と提携したばかりである。
「で、今日のご依頼内容は?」
虹雨は顔真っ赤にして言った。
「猫捕獲……」
にゃーーーーー! と境内にいる猫たちが逃げていった。
「今日はお疲れ様でした」
美帆子が報告書に目を通す。
「お疲れどころじゃない……」
虹雨と由貴は真津探偵事務所で本日の業務の報告をしに美帆子のもとにやってきた。2人は全身汚れていて、ボロボロである。事務所に来なくてもいつもみたいにネットで報告書を送信すればよかったのだがこんな日に限ってシステムエラーが続いてわざわざやってきたのである。
「本当すいませんね、私が過去から依頼されている件を引き継いでもらって」
と事務所に真津マスターがコーヒーを持ってきてくれた。
「……引き継ぎの引き継ぎなんですよね」
「まぁ、そうなんですけどねぇ。本当すぐ失踪する猫でしてね、私の時もでしたがその前の仲間もとても苦労しましたよ」
真津マスターは苦笑いしてそそくさと部屋を出て行った。きっとまた失踪するであろう、そう虹雨と由貴は思った。
「まぁこれ以外はちゃんとあなた達の能力を活かせる仕事ばかりだから。ありがとう、ご報告」
「いえ……じゃあ。由貴、行くか」
虹雨が席を立とうとすると由貴が部屋の中をキョロキョロしている。何かを探しているのだろうか。
「どうしたの、由貴くん」
美帆子に声をかけられてハッとして由貴は狼狽えて飲みかけていたコーヒーをこぼしてしまった。
「あらあら……そのままにしてね、すぐ台拭き持ってくるから。お洋服にもついちゃってるじゃない」
「大丈夫です、服はもともと汚れていたし」
虹雨も近くにあったティッシュペーパーでコーヒーを拭き取る。そそっかしい由貴であるがあまりにも激しい狼狽であった。
2人は事務所を去る。とてつもなくヘトヘトである。車に乗って家に向かう中。
「由貴、探してたんやろ……渚さんを」
「ええええっ、な、んな……」
虹雨はやっぱり、と笑う。由貴は助手席で狼狽えている。
「渚さんに一目惚れしたんやろ」
「……一目惚れっていうか……綺麗な人だなって。虹雨はそう思わへんか」
「まぁ綺麗な人ってのは思ってたけど。なんとも」
「なんともって……そいや虹雨ってさあまり浮いた話聞かんよな」
由貴は虹雨に話を振った。
「恋人もおらんやろ」
「うん、おらん。お前もだろ」
「るっさい……虹雨はタイプな女はおらんのか」
由貴が茶化すと虹雨は笑ってはいなかった。
「好きな人はおるけどな」
「誰やー、お前の好きな女って。渚さんにもなびかないって……美帆子さんとかさ」
由貴は笑っている。
「……女と限らんやろ、たわけか」
ふと虹雨はつぶやくがそれは由貴には聞こえていなかった。
コメント
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読了しました! 今回の話、めっちゃ重かった…女王蜂の施設の話とか、表面だけじゃない“救い”の闇がえぐかったわ。逃げ場を奪われた女性たちの怨念を吸い取るって、もう完全にホラーやん。しかもその子供たちが今、猫の形で…?ってゾッとした。 でもラストの虹雨の「女と限らんやろ」ってセリフで一気に空気変わったな。何気なく言った感じが逆にリアルだった。由貴には聞こえてなかったみたいだけど、読者にはしっかり刺さったわ。 こんな重い話の合間に猫捕獲やコーヒーこぼし挟んでくるテンポ、麻木さんほんま上手い。続きめっちゃ気になる🔥