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ザァ、ザァ……


鳴り止まない雨、再び濡れる髪も服も気にならないぐらい、心に大きな穴が開いたような気持ちだった。

皇宮の外へアルベドの転移魔法によって脱出した私達は、真っ暗な夜の闇の中でただひたすら、状況が理解できずに混乱していた。貴族達は、雨で濡れるから従者に魔法をとせがんでいたが、この闇の中では光魔法などろうそくの火のようなものだろう。先ほどまでの月明かりや星明りがあれば、また話は違ってきただろうが、今は分厚い黒い雲に覆われて、明り一つすらない。何故だか、皇宮の周りについていた灯さえも全て消えてしまっているのだ。


(どうなってるの……?)


私にしか見えないシステムウィンドウは、未だにクエスト内容が表示されておりそのタイトルに私は戦慄した。

そして、それと同時にリースから感じていた違和感や禍々しい気配について何となく想像がついてきた。


(助けに、いかなきゃ……)


このクエストをクリアしない限りこの夜は続くのだろうと、私は思い周りの目を盗んで皇宮へ戻ろうとしたとき、水たまりがはね、こちらに向かってくる誰かの足音が聞え、私は足を止めた。


「お姉様!」


暗闇でも分かる、蜂蜜色の眩しい髪を揺らしながら、涙なのか雨なのか分からない雫を頬に垂らしたトワイライトが私の方にかけてきた。彼女は、私を見つけるとほっとしたようにその純白の瞳を潤ませ、今度ははっきりとその人見に涙を浮べた。

私はそのままの勢いで、トワイライトに抱きつかれバランスを崩しそうになったが、後からやってきたアルバに支えられ何とか体勢を立て直した。


「エトワール様、ご無事でしたか!」

「あ、アルバも……トワイライトも」


私は、今の状況に混乱していて、彼女たちにかける言葉が見当たらず、取り敢えず彼女たちも無事で良かったねと言う意を込めて彼女たちを見た。

トワイライトもアルバもほっとしたように私を見ると、濡れますからとトワイライトは防水魔法を、アルバは来ていた上着を被せてくれた。アルバの上着には防水魔法がかかっているようで、私の身体はたちまち体温を取り戻した。だが、私の心は一向に安まらず、心臓が冷えて凍ってしまいそうだった。


「お姉様、顔色が」


と、先ほど何度も聞いたような言葉をかけられ、私は顔を上げた。


トワイライトが心配そうにこちらを見ているものだから、私は姉として大丈夫だよ何て強がって笑ってみせた。そうしたところで、リュシオルも合流し、私の無事を確認すると、コソッと耳打ちをした。


「どうなってるのよ、これ」

「わ、わかんない……でも、リースが」

「リース殿下が?」


私は、リュシオルにこの場にいる全員に聞こえないように小声で状況を説明した。でも、説明という説明はできず、これは緊急クエストなのだけしか、きっと伝えることができなかったと思う。


「リースが、リースが……」

「分かったから、落ち着いて」


目が回りそうで、倒れそうな私を宥めながらリュシオルは大丈夫、大丈夫と私の背中を撫でてくれた。

そうして、彼女はなにやら眉間にしわを寄せ、考え込んだ。トワイライトのヒロインのストーリーでは、こんなクエスト、イベントはなかったのだ。そもそもに、このリースの誕生日はトワイライトと踊ったところまでしか画かれておらず、その後はリースと親交を深めましたぐらいで、何もなかったはずなのだ。なのにもかかわらず、今は如何だろうか。

全くストーリーとは違う出来事が起きている。リュシオルも私も、エトワールストーリーを全て知らないが為に、もしかしたら用意されていたイベント、クエストなのかも知れないが、こんなの乙女ゲームの範疇に収まらないものだと思った。

全然訳が分からない。


「ダメだ、なんでこうなってるのか分からないし、怖いし、リースが心配だし、私、私どうすれば」


私は、堪えていた涙が出そうになった。

怖かったのもそうだし、意味の分からないクエストに巻き込まれてしまったのもそうだが、それ以上に、何だかこれの全てが私が悪いような気がして、私のせいで起ってしまった出来事のような気がして、申し訳ない気持ちと罪悪感と、リースへの気持ちがぐちゃぐちゃになって涙となって溢れ出しそうになった。

リースへの気持ちというか、彼のことが心配すぎて、もう感情がぐちゃぐちゃになってしまっていたのだ。


私が泣いても、何も解決しないのに。

そんな私を見て、リュシオルは困ったように私の背中をさすっていた。

その間、周りでは貴族達がこんな雨の中迎えは来ないのだとか、寒いのだとか、全く厄日だとか口々に言っていて、その言葉が強く私の心に刺さって傷つつけた。この人達は何処まで行っても自分の事しか考えていないのだと。従者に強く当たるもの、同じ状況に置かれた貴族同士で喧嘩するものなど、不安不信の種が広がっていく。

皆置かれている状況は同じだというのに。


「う……っ」


私は、そんな人達を見て自分が責められているような感覚に陥って口元を手で覆った。

不満の矛先が私に向けられてきたからだ。

偽物の聖女がいるからこうなっただの、お前のせいだだのと罵声が飛び交い始め、私は耳を塞ぎたくなった。


(何で……どうして)


「お姉様……」

「トワイライト様!」


トワイライトも私に大丈夫だと言いたげに手を伸ばしたとき、遠くの方までいっていたブライトが戻ってき、私達の前まで来ると、トワイライトと向き合うと、彼女を説得するように話し始めた。


「トワイライト様、力を貸してくれませんか」

「わ、私が、ですか。まず、この状況を説明してもらわないと……何を手伝えば良いのかわかりません」


と、トワイライトはもっともな事をいって私の手を握った。彼女の手は震えており、私と同じで、この意味の分からない状況に怯え、混乱しているようだった。そりゃそうだと、私だけがこんな思いをしているのではないと、自分に活を入れた。


ブライトは、トワイライトの言葉を受け説明をと始めようとしたが、その前に彼女の魔法で天幕を作って欲しいと頼んだ。


「このままでは、皆凍え死んでしまいます。彼らの迎えの馬車は当分ここにこれないでしょうし、ここから自分の領地に帰るにもこの闇の中では不可能です。説明はしますから、どうかトワイライト様の力を貸して欲しいのです。僕だけでは……」


そう言って、ブライトは悔しそうに拳を握った。

自分の魔力が足りていないことや、何だかこの状況は自分が悪いとでも言うように私と同じ表情をしていた。私はそんなブライトを見て俄然、彼が何を知ってこの状況を説明してくれるのかと気になってしまった。

トワイライトは私達の方を見た後、わかりました。と返事をし、ブライトの従者や皇宮にいた魔道士達に連れられ貴族達の天幕を作る為に人混みの中に消えてしまった。

確かに、彼女の魔力量なら、それぐらい可能だろう。ブライトの言うとおり、この状況では馬車を出すこともできないだろうし、まずは雨風をしのげる天幕を張るのがベストだと思った。


「トワイライト様には、僕の従者の方から説明をしてもらいます。ですから、エトワール様達には僕から状況を説明させてください」


そういうとブライトは魔法で私達が全員は入れるぐらいの天幕を作り、ご丁寧に椅子まで用意してくれた。

私は、自分自身何も出来ていないと、アルバとリュシオルの濡れた髪と服を魔法でどうにか乾かしてあげた。

その間、ブライトは外を落ち着かない様子で見ており、いったりきたりしていたが、私達が聞く準備ができたと分かると、ふぅと息を吐いて深呼吸をした。


「まず、この闇の原因はエトワール様のお察しの通りリース殿下によるものです」

「で、でも、リースは光魔法を使えるし……これはどう考えても闇魔法……」


リースから感じられたのは負の感情そのものだった。彼から発せられたのは、闇魔法に似たようなもので、あの調査の時の怪物と同じような雰囲気を纏っていた。でも、あれとは比にならないぐらい強い憎悪や殺意、嫉妬といった感情が渦巻いているようにも思えた。

私は、途中で口を挟んでしまい、ハッと口を塞いだが、ブライトは大丈夫ですよとでも言わんばかりに、優しい笑みを浮べていた。その顔を見て少し安心したが、やはりこの原因がリースにあるという事実にショックを隠しきれなかった。

私の理想の男性であるリースが闇に落ちたと。

闇落ちは好きだし、光落ちというのもまた二次元では良いが、こう現実で起きるとこんなにも絶望的なものなのだと、頭の片隅でオタク全開の考えがうごめいていた。だが、それ以上にやはりリースが闇に飲まれてしまったことが単純に私としてショックだったのだ。


「そうです。リース殿下は、光魔法の魔力を秘めています。ですからこれは、意図的に、人為的に起こされたものなのです」

「つまり、リースを闇に落とした人間がいると」

「……ええ、でも少し違います」


と、ブライトは言った。ブライトは言い渋る。


「……人間じゃないってこと?」

「はい。人間の負の感情を餌にしその力を拡大する人ならざるもの……混沌です」


ブライトの衝撃の言葉に、この場にいた全員が息をのんだ。

乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います

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