第6話「密林の共鳴」
📷️シーン1:静寂の中の記憶
夜明け前、霧に包まれた密林をナヴィスたちは慎重に進む。
湿った空気に肌が張りつき、茂みの奥では不穏な気配が漂っていた。
先頭を歩くナヴィスは、黒とグレーの迷彩服を羽織り、額に装着したカメラレンズを指で軽く撫でた。
肩には碧素で構成された小型通信端末があり、そこから女性の声が優しく響く。
「通信安定。すずかAI、現在地確認済み」
「……ふぅ、ありがとう。すずか、赤外線センサーで索敵範囲を拡張してくれ」
「承認。紅外線モード展開。半径60メートルまで対応可能」
後方ではギアが、黒いスーツに光沢のある碧色のスーツジャケットを羽織りながら、腕の装置を操作していた。
「ナヴィス、あまり前に出るなよ。あの辺りは元・カムリン族の墓地跡だ。地形が不安定だ」
「わかってる……でも、どうしてもこのルートしかない」
ゼインは最後尾で警戒しながら歩いていた。
黒い戦闘ジャケットの裾が風に揺れ、右手の手甲には微かに碧素の光が滲んでいる。
「おい……ナヴィス、聞いていいか?」
「ん?」
ゼインは少し間を空けて言った。
「……昔、朝鮮半島で戦争が起こりそうだったって、本当か?」
ナヴィスは足を止め、軽く息をついた。
「……あぁ、本当さ。あれは……俺が生まれて間もない頃だった。中国が“フラクタル浸透作戦”ってやつで、あの土地を呑み込もうとした。人間同士の国境なんて、碧族には意味がないってな」
ギアが眉をひそめて口を挟む。
「俺も記録を見た。“灰素雲”が空にまで充満して、数万人が一瞬で飲み込まれた。非人道的だった」
すずかAIが静かに答える。
「その時、碧族が介入。エリア全域に“共鳴抑制フラクタル”を展開。地殻振動を停止させ、熱反応を抑制。結果、侵攻は停止された」
「記録には残ってないんだ。“碧族による制止”なんて、歴史に書けるわけない」
ナヴィスは唇を噛み、青い瞳を細めた。
「でも、あの時――俺たちは確かに“争い”を止めた。だから、俺はもう一度やる。今度は、記録に残す」
📷️シーン2:赫共産部隊との遭遇
その時、すずかAIが低い声で警告を発する。
「警告。生体反応6体、正面に接近中。武装済。認識コード:赫共産部隊」
「来たな……!」
ゼインが反射的に《リフレクター・スキン》を展開。全身に碧素の膜が浮かび上がる。
「ギア、展開装備は?」
「準備済み。出し惜しみはナシだぞ」
ギアの背中から碧素のアームが展開され、フラクタルブラスターが肩口に形成されていく。
前方の霧の中から、赫共産部隊の兵士たちが姿を現した。
全員が赤黒い戦闘服に身を包み、両腕に刻まれた赤のラインが光を帯びている。
「応戦開始だ――!」
ナヴィスは手のひらを前にかざし、地面に**《バースト・ブラインド》**を発動。
強烈な閃光が霧を裂き、敵兵の視界を奪う。
ゼインがその隙を逃さず、《アサルト・コード》で距離を詰める。
剣のように鋭く形成された碧素のエッジを纏い、敵の装甲を斬り裂いた。
「この程度かよ――!」
敵兵が《ブレイズスパーク》を展開するが、ギアが横から**《ギアシールド・タイプC》**で受け止め、火花が閃光のように舞い散った。
「こっちの方が上だって見せてやれ……!」
ナヴィスが続けて**《ラピッド・リンク》**を起動。ゼインと一時的な感覚共有を行い、二人の動きが同期する。
「……今だ!」
ゼインとナヴィスが挟撃し、赫兵たちを次々と沈めていく。
📷️シーン3:すずかの眼
戦闘の終わり、残骸と血の匂いが漂う中、ナヴィスが目を伏せた。
「ここもまた、記録しておかないとな」
すずかAIがそっと語りかける。
「あなたが記録することで、誰かが“真実”を知るでしょう」
「……あぁ。俺はただのカメラマンじゃない。俺たちの“存在”を証明する記録者だからな」
その声に、ゼインもギアも静かに頷いた。
そして、次なる戦いへと、彼らはまた一歩踏み出すのだった。
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