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甲斐田「もうそろそろ先生も居ないんじゃない?」
日が沈みだし白色の三日月がこちらを照らす
もちろん、見回りは居るだろうがもう少ない筈
星川「…そーだね」
少しの間があった後
ベンチから立ち上がり、クルリとこちらを見てくる
星川「ちょっと駄菓子屋寄るぞ」
甲斐田「あ、はい」
昼頃通った隠し道を再び通り
裏門の様な場所から外に出る
甲斐田「わぁ……!」
目の前にユラユラと流れる小川
沈みかけの光に、生まれたばかりの光が輝いては散っていく
あまりにも眩しくて
あまりにも美しかった
だから目を逸らした
だってあのまま見ていたら
失明してしまうから
星川「綺麗でしょ?」
甲斐田「ぇ…あぁ、うん。すっごい綺麗」
星川「……ふふ」
ついその声につられてその方を見た
星川さんが今までに見た事のない様な笑顔で笑っていた
満面の笑みという訳ではなく、どこか哀愁漂い
悲しそうな、だけど…とても嬉しそうだった
目を逸らした。だって
眩しかったから
星川「駄菓子屋行こっか」
甲斐田「あ、うん」
2人で歩き出した
足音が揃う時もあれば、バラバラな時もある
何も喋らなかった、喋れなかった
星川さんはずっと輝く反射する光を見ていた
散り行くその姿に、同情する様に
甲斐田「あの…星川さん」
星川「なぁーに?」
甲斐田「………いや、なんでもない」
星川「なんだよ…笑」
目の前を歩く彼女の髪の毛が揺れた
笑ったと同時に
僕は何を言いたかったんだろう
分からない
星川「そろそろつくよ」
そう言われて見慣れた細道に出る
初めて星川さんと遊んだ時
星川さんしか知らなかった駄菓子屋さん
初めて教えてくれた人が僕だったらしい
甲斐田「ははッ…なつ」
星川「んね、数ヶ月とか来てねぇよ笑」
歩いていくと、見慣れた赤い屋根が目に入る
なんだか心が暖かくなる
駄菓子屋さんの中に入ると
懐かしい香りと暖かみに包まれる
星川「アイス買おうぜ、暑いし」
甲斐田「ん、おっけ」
それぞれアイスを手に取り
レジに持って行き、近くの公園のベンチに座る
甲斐田「はむっ…」
バニラの香りと味が口に広がる
ちょっと頭は痛いけど、この感じも嫌いではない
甲斐田「ねぇ…星川さッ……」
「ねぇ…星川さん」と言おうとしたがやめた
星川さんの手に持たれてるアイスは溶けて、手にも垂れ始めてる
だけど星川さんはそれを気にせずに
手で目元を拭い、鼻をすすっていた
甲斐田「………」
やっぱ変だったんだよ
なんで言ってくれなかったの
甲斐田「ほら、アイス持つから、拭きな」
星川さんの手元に手をやると、自然に星川さんが手を離す
手を拭き、雫を拭取ろうとしているが、すぐに溢れ出てきてしまう様だ
星川「っ…ひくッ……グスッ…ぅっ、んくッ…」
星川さんの涙が溢れるたびに、アイスも溶けていく
手の感覚も、よく分からなくなって来た
甲斐田「…手、洗ってくるんで」
甲斐田「絶対、待ってて下さいね…!」
そう言うと、こくりと頷き
また下を向いてしまった
甲斐田「…」
ジャーッ……
冷たい水が手に染みる
夏なのに、妙に指先が痛い
甲斐田「ッ…なんでッ……?」
甲斐田「なんで言ってくれなかったのッ……」
確かに恋人でも何でもない
ただの友達だよ
別に恋愛感情なんて抱いてないけどッ…!
甲斐田「言ってくれてもよかったじゃんッ…!!」
溢れて来そうになる雫を抑えて
すぐに星川さんの所に向かった
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コメント
2件
初コメ失礼します! 今日一気見しました!とても素敵な作品で大好きです!続き待ってます〜