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《数時間後》
周りが暗くなり、夜を過ごす場所を模索している最中、三人は異変に気づいた。
「おかしいよね」
「あぁ、明らかにな」
「……?」
「魔物が少なすぎるんです、さっきのキウルーは4頭……普段なら10頭は群れを作って動いているはず」
「しかも、あのキウルー達以外魔物をまったく見てない、どういうことだ」
「……」
確かに見ていない。
そして、これほど歩いていると、普通なら魔物同士の争いの声や、鳥魔物の鳴き声がどこかから聞こえてくるはずだが…。耳に入るのは川のせせらぎと、ウッドリーワンドの微かな音だけだ。
「考えられるのは、他にもギルドからの依頼を受けた冒険者が魔物を狩った後、あるいは魔物たちが何かに怯えて巣に引きこもっている可能性の2つ」
「……どちらにしろおかしい現象」
「そうですね……日も落ちてきたし今日はここら辺で様子を____え!?」
リンが驚いた先を振り向くと奥の森の方から煙が立ち上っていた。
「おい、あそこって」
「……あそこは例の泉」
そう。
そこはリン達がずっと避けてきた危険な泉の場所。
「大変だ!あの煙はもしかしたらSOSかもしれない!」
リンは焦りに駆られながら地図を広げ、辿り着く道を確認しようとしたがショウは力強くリンの手を掴んで制した。
「おい、まさか行くって言うんじゃないだろうな?」
「当たり前だろ!助けに__」
「落ち着け!出発する前に話しただろ!あの泉は危険だって!それを犯してまで俺達が行く必要はない!」
「見殺しにするのか?ショウ」
「そうは言ってない、実際に行ってみるとあの煙は火を吹く魔物の仕業かもしれないだろ?もっと冷静になれって言ってるんだ」
「そ、そうだけど……」
「もしも、仮にもだが、魔物が居る山で焚き火をするような馬鹿、助けに行って俺たちまで死んだら元の子もないだろ」
「……焚き火は悪いの?」
ショウはその言葉を聞いて「まじかよ」と呟き説明をしてくれる。
「こんな魔物が多い山奥で焚き火なんてすると目印に魔物も寄ってくる……最悪の場合、冒険者を集団で襲ってくる山賊や人拐いも下手したら寄ってくるんだ、だからそんな面倒なやつらに極力気付かれないように俺たち冒険者は光の魔法を使うのが暗黙のルール、知らなかったのか?」
「……理由は知らなかった」
「じゃぁ覚えておけよ?他のパーティーと組んだ時に1人で焚き火の準備を始めたら叩き出されるぞ」
「……分かった」
ちなみにユキは全然気にしてる様子もなく焚き火をしていた……なんでも「外で料理をするなら断然焚き火です!火の通り方も普段とは違い面白いんですよ!」と言って「えいやっそいやっ」と薪をどんどん足して「フハハハハ!燃えろ燃えろ〜!」とかふざけてるくらいだ。
「……」
よくよく考えると「夜の当番は任せてヒロユキさんはテントで寝ててください!」と毎回ユキが夜の見張りしていたのはショウが言った様に実際焚き火に寄ってくる奴らの対処をしたりしてたのだろう、そう言うことのありがたみが解ったのも良いことだな。
「と、言うわけで俺達は夜に向けて準備を__」
しかし、リンは食い下がらなかった。
「でも、もしも本当に助けを呼んでるとしたら?ほら、こうも考えれない?強い魔物が現れて何でも誰でもいいからここに来て助けてほしい!って意思表示だとしたら」
「それはそいつの実力不足だ、弱い自分を恨ませとけ」
「くっ……」
リンは悔しそうな顔をして俺の方を向き
「……ヒロユキさんはどう思います?」
俺に意見を求めてきた。
「……」
「おい!ヒロユキは関係ないだろ!」
「いや!この依頼はヒロユキさんが受けたんだ、ヒロユキさんが決めた事なら僕も納得が出来る」
「いや、常識的に考えてだな!」
ショウとリンが言い合いをしている間に考える……真っ先に頭に浮かんだのは兄さんの事だ、兄さんならどうするだろうか?
兄さんなら……
「……ショウ、リン……俺は」
きっとこう言う。
「……様子を見に行く」
それを聞きリンは明るい顔になり、ショウはあり得ないと言う顔になる。
「おい、まじかよ」
「いや、ほらショウ!助けるとかじゃなく様子見だよ?」
「待てよ!様子を見に行ったらそれこそウッドリーワンドに操られて帰れなくなるぞ!わかってんのか!」
「決定権はヒロユキさんにあるよ、俺達は招待されてる側なんだ、ヒロユキさんが初心者とはいえ一番偉い、俺達は従うしかないんだよ」
「くそ!」
そういってショウが睨んできた。
すまんな。
「じゃぁ、今から行くよ、暗くなってきたし……はいヒロユキさん」
リンが一枚の魔皮紙を渡してくる、その魔皮紙に魔力を流すと丸くなって宙に浮き光の玉になって俺の周りを照らしてくれた。
その光の玉は俺が動くと自動でついてくる。
「……ほう」
こんなのあるのか……ユキと一緒に依頼してるときは夜は寝て動かないので知らなかったし洞窟は危険だからと俺は入らせてもらえなかった。
リンやショウにこの魔皮紙を知らないと言ったらまた何か言われそうなので黙っておく。
「じゃぁ行きましょう!」
「チッ」
「……わかった」
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「見えてきましたね」
「……あぁ」
少し遠くで道が開けている所が見えた、目的の泉だ。
「隠れて様子見をしましょう」
3人で道から外れ敢えて木々の中に入り、身を隠しながら進み焚き火の方を見ると……
「意外と美味しいね!32番さん!」
「それは良かったカロ」
その場には、絶世の美女がドロドロとした魚を、見惚れるべき美しさで、口に運んで居た……その光景はまさに夢幻的で、ただの食事とは思えぬほどに、まばゆい幻想に包まれていた。
だがその美女は__
「……あの時の……」
__ヒロユキと一緒に召喚されてきた勇者だった。