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リスたちを追いかけていくと、森がひらけて小さな丘に出た。そこだけ木々が輪のようにひらけていて、
真ん中に一本の花が立っていた。
花はまるで月をまるごと映したみたいに、
白く光っている。
花びらはまだ閉じていたけど、
根元からこぼれるように金色の粉が漂っていた。
「これが…ひかりの花…」
わたしはそっと近づいて、両手で花を包みこんだ。
すると、花がふわっと揺れて、
ぱあっと花びらが開いた。
光が一気に広がって、夜の森ぜんたいを明るくした。
そこからあまい香りと、
きらめく蜜が一滴、花の中心にあらわれた。
「……!」
その蜜を、小さな小瓶にそっとうけとめる。
瓶の中で、蜜は星みたいに輝いていた。
きっとこれをキャンディにすれば、
お兄ちゃんの体をあたためてくれる。
そのときだった。
胸の奥に、やさしい声がまた響いた。
『ミナ、あなたはよくここまで来ましたね』
「星の女王さま…?」
『その蜜は、光と優しさをひとつにしたもの。
大切な人を想う心がなければ、花は咲かなかったでしょう』
わたしは瓶を胸に抱いて、
「ありがとう…」と小さくつぶやいた。
リスたちがぴょんと肩の上に乗って、
「よかったね」と言うみたいに鳴いた。
夜の森はもう、ぜんぜんこわくなかった。