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「……左腕を、ちょっと借りてもいいですか?」
「あ、はい」とカーネはすぐに自らの腕をメンシスに差し出した。その細い手首には鈍色のブレスレッドがある。本来の特徴的な髪色を誤魔化し、メンシスに居場所を知らせる事の出来るマジックアイテムなのだが、髪色の事くらいしかカーネは知らないままだ。
「僕達ルーナ族には結婚した相手とお揃いのブレスレッドやアンクレットを身に付ける風習があるんです。確か、ヒト族にも似たような風習があるんですよね?国によっては、指輪だったり、ピアスだったりもするらしいですが、自分が身に付けるとしたら、カーネはどうしたいですか?」
結婚なんて夢のまた夢。政略結婚の駒にすらされる要素も無かったから、カーネは返答に少し困った。
「そうですねぇ……結婚指輪やピアスに別段憧れがある訳ではないので、それならシスさんの風習に合わせたいです。あ、でも……そうなると、このブレスレッドが邪魔になってしまいますか?」
「いいえ」と言い、メンシスが首を振る。 そもそもララ経由で彼が贈った品だ、邪魔なはずがない。
「実は、前々からそのブレスレッドのことが気になって、色々調べてみたんですよ。どうやら一点物らしく、それならと、こっそりお揃いの物を既に用意してあるんです」と、メンシスが悪びれもなく嘘を並びたてた。
「一点物なのに、お揃いを?」
矛盾した言葉にカーネが頭を傾げる。するとメンシスは、ニコッと笑い、「はい。同じ様に作ってみました」と彼女に告げた。
「ほら、そっくりでしょう?」
自分の手の平に乗せてカーネにそれを見せる。色味といい刻まれた文字といい確かにそっくりで、サイズの違いがなければ同じ物にしか見えぬ程だ。まぁ、そもそもどちらの品も彼が作成者なのだから、当然と言えば当然なのだが。
「す、すごいですね!アクセサリーも作れるだなんて、本当に器用なんですね」
瞳を輝かせるカーネの眩しい笑顔を前にして、少しだけメンシスの良心が痛む。そもそも本当は最初から二つあったのだとは、とてもじゃないが言えそうにはなかった。
「えっと、この色が気に入っているとかはありますか?」
「いいえ、特には。ただ、これには思い入れがあるので、外すとなると抵抗はありますけど……」
「大丈夫ですよ。常に身に付けていますし、そうだろうと思ってこれを用意したんですから」と伝えながら、メンシスが自分の手首にもブレスレッドを着ける。そして二つのブレスレッドを近づけると、その二つは呼応するみたいに光りだし、オパールのような色味へと変化していった。
「——わぁ」
「双方に婚姻の証となる魔法を付与しました。伴侶に危険が迫ると、赤みが強くなって知らせてくれます。魔力か神力をブレスレッドに込めると相手の居場所もわかりますよ」
公爵家の当主としての仕事はもう全て引き継いだ。もうカーネに隠れて何かを行う必要はないので、居場所を知られても問題は無くなった。それならば知っていて欲しい、求めて欲しい、自分と同じくらいに“僕”を拘束して欲しいという想いから付与した魔法であり、本来の婚姻の証となる魔法では『互いの居場所の察知機能』は付与されない。
「便利ですね」
「でしょう?」
好都合なことにカーネには、その魔法により自分が束縛されているという意識はない様だ。
「……綺麗」と嬉しそうにカーネが微笑む。その表情を見てメンシスも笑みを浮かべると、今度は彼女の手を取って、また別の場所へ移動し始めた。
「こっちへ」とだけ言われ、「あ、はい」とカーネが短く返す。祭壇のある部屋を出て、長い廊下を歩くメンシスに引っ張られるみたいな状態になっているせいで、カーネはずっと小走りだ。まだまだ体力の無い体では正直ついて行くのも大変なのだが、その表情は楽しそうに笑っている。かなり簡易的ではあったものの、結婚式みたいなものを神殿で挙げ、婚姻の証となったブレスレッドはとても綺麗に輝き、目の前には今日入籍したばかりの夫が居る。——その事が嬉しくって、幸せで、何をしても楽しく感じられた。
「……此処は?」
最上階にある部屋に連れられて入ったカーネが周囲を見渡す。誰かの寝所だった場所なのだろう。天蓋付きの大きなベッドが室内に置かれているのだが、その存在感が凄まじい。そのせいで、広い部屋のはずなのにそうとは感じられない程だ。
「この神殿がまだ使用されていた当時、カルム達の寝所だった部屋です。今は見学者達に貸し出す宿泊可能な部屋でしかありませんけどね」
もちろん、嘘だ。
そもそもこの二柱の神殿自体、宿泊どころか見学ですらも許可されない。外観を遥か遠くから観るくらいなら可能だが、そもそも近寄る事すら許されないのに、その事を伝える気も、彼には無いようである。
「……この部屋で、聖女達が体を休めていたんですか。なんだか感慨深いものがありますね」
「そうですね」とメンシスは返しはしたが、内心では、『ちっとも休んでなどいなかったんだけどな』と考えていた。どちらも“祝福持ち”であったが故に、それ程しっかり眠らずとも全然平気な身であったので夜通し子作りに励んでいたのだが、そうであったエピソードは教えずともいいだろうと考え、つい口にしてしまいそうになっていた言葉を飲み込んだ。
「今夜は此処に泊まりますよ」
「……此処に、ですか?」
再び周囲を見渡し、カーネが驚いた顔をする。無駄に豪華絢爛でセンスの無いティアンの部屋とは違い、シンプルながらも上質な物のみで設えた部屋はある意味では公爵家よりも豪華だと言えよう。そんな部屋に泊まるとなると、生い立ちのせいで根が貧乏性なカーネでは『……汚してしまったらどうしよう?』と段々心配になってきた。
「それとも、もっと豪華な部屋の方が良かったですか?」
メンシスに訊かれ、カーネが慌てて「いいえ、まさか!」と叫ぶみたいな声で言った。
「壊したらどうしようとか、汚してしまったらとか、そういう心配をしていただけです」
「んー……」と言いながらメンシスが軽く上を向く。
「それって、激しくって壊したり、汚したりしそうな事をお望みって事で間違い無いですか?」
そう言いながらメンシスは、カーネの手を取り、ベッドの方へ誘う。
「ち、違います!」と大声をあげるカーネの顔は真っ赤だ。だが繋がれた手を振り解いたりは出来ない、したくない。入籍して正式に『夫』となった相手にそんな事などしてはいけないという気持ちが先立つ。それに『解釈違いや、勘違いだったら?』と思うと、恥ずかしくって抵抗なんか一層出来なかった。
ベッドに腰掛けたメンシスがぐいっとカーネの体を引っ張り、自分の膝の上に跨らせる。そして彼女の大きな眼鏡を外すと、脇の方へぽんと置いた。
「あ、あの……」
何か硬いモノが体に当たっている気がする。普段ソコにそんな凹凸は無いはずなのに、何が自分に当たっているのかカーネにはわからない。なのに妙にソワソワとしてくるし、どちらからともなく甘い香りまでしてきている様だ。
「ん?」
彼も自分の眼鏡を外し、カーネの物の側に添える様に置く。そして彼女の頬を両手で包むと、カーネが「これって、何を……する、流れですか?」と赤い顔のまま問い掛けた。
「僕達は今日、結婚しましたよね」
「はい、そうです」と返し、カーネが頷く。
「新婚旅行として、大陸の中央部まで来ました」
「そ、そんな遠くまで来ていたんですね」
転移魔法のおかげで移動は一瞬だった為、そんなにも遠くだったとは想像もしていなかった。そのせいで驚きを隠せずにいるカーネの額に額を重ね、メンシスが言葉を続ける。
「神殿にも来て、誓いを交わしたんですから、あとはもう——」とまで告げ、メンシスが口元を綻ばせる。
「初夜をこなさないと」
「……しょや?」
「はい。初夜です」
じわじわと言葉の意味を理解し、カーネが赤い耳と頬を隠せぬまま窓の方へゆっくり顔を向ける。大きな窓の外に広がる光景はまだまだ明るく、『夜』とは到底言えそうには無い。
「えっと……まだ、明るいですよ?」
「明るいですねぇ」
「——でも」と言いながらメンシスはカーネの体を抱き締め、ベッドにゴロンと転がった。すると勝手に天蓋のカーテンが全て閉まり、二人の周囲が一気に暗くなる。突然の事に驚いて声を失っているカーネを押し倒し、メンシスは彼女の頭の横に両手をついた。
「……シスさん?」
「僕達は夫婦ですよ?これからは、『シス』と呼び捨てでお願いします」
「あ、そうですよね……。え、えっと、シ、シ……」
彼を呼び捨てようと思うと、妙に照れ臭い気持ちになり、上手く声が出てこない。
「僕の名前は、『シシ』ではありませんよ」
クスクスと彼に笑われたが、その姿は暗くて見えないままだ。
「……シス」
「カーネ」
名前を呼び合っただけで、メンシスの心臓が高鳴っていく。『メンシス』とはもう一生呼んでもらえない事だけは少し心残りではあるものの、『カルム』に『ナハト』と呼んではもらえない苦しさに比べれば誤差の範囲だった。
「あ、あの、ところで、『初夜』とは、結局は何をする行為なんですか?」
漠然とは知っていても、噂話から得た程度の知識では結局何をするのかがいまいちわからない。使用人達が口にしていた、『初夜だったのに、彼ったら、顔に似合わず激しくって』とか『せっかくの初夜だったのに、夫がせっかちで、めちゃくちゃ痛かった』だとかのやり取りをなんとなく聞いたくらいでは正しい意味を理解するには色々と無理があった。
「……えっと、言葉での説明を求められると、流石に僕も恥ずかしいんですが」
(え。は、恥ずかしい、行為なのか)
そう思うとカーネは反応に困ってしまった。だが無知故にやはり理解に至るまでは想像が膨らまず、無言のまま固まってしまう。
次第にカーネの目が少しだけ暗闇に慣れてきた。それと同時に急に肌寒くもなる。その事を不思議に思う間も無く、全裸状態になっているメンシスの姿で視界がいっぱいになった。
「——え?あっ……」
彼だけじゃない。自分もいつの間にか服が消えている事に気が付き、慌てて胸元を腕で覆い、そのままの流れでうつ伏せの状態に体勢を変えた。きっと手ずから脱がすなどといった手間を省き、とっとと魔法で消し去ったのだろうとカーネはすぐに気が付いた。
夜目のきくメンシスには最初からカーネの一挙一動を見ていた。恥ずかしさからこちらに背を向けたカーネの小さな背中を見て、恍惚とした笑みを浮かべる。色白いはずの柔肌には『白』を探す方が大変だなと思わせる程に数多く口付けの跡が残されているからだ。
(結局は我慢出来ず、毎夜の様にその背中をこっそり味わっていたが、これからは堂々と愛せるのか)
彼女には鏡で全身を見る習慣が無いのをいい事に、カーネの背中に執着の痕跡を色濃く残してきた。跡が消える前に前にと残しているうちに、いつの間にかとんでもない事になっていたんだが、此処までよくまぁ気が付かないものだと少し驚いてもいる。
背中を丸め、羞恥に震えるカーネの背中に唇と添える。そして指先で撫でるみたいな動きでメンシスは彼女の柔肌を愛撫し始めた。
「ひゃっ」
体を震わせ、カーネが視線を背後にやる。だが獣耳の生えた彼の頭と大きな尻尾が見えるだけで何をしているのかよくわからなかった。
「い、一体、何を?」
「『初夜』を言葉で説明するのが照れくさいので、実行に移しているだけですよ?」
成る程、と思っている隙にメンシスの唇がカーネの肌を滑り、強い執着の跡が更に増えていく。見られる心配が不要になったからか、その跡は背中以外にも及ぶ。肌を吸われるたびにカーネが甘い声をこぼす。ちくりとした痛みが妙に心地よく、じわじわと下腹部の奥が疼いていく。
「こっちを向いて、カーネ」
カーネの耳元に顔を寄せ、メンシスが熱っぽい声で言う。するとカーネは誘われるみたいにして素直に顔を彼の方へ向けた。その桜色をした瞳はすっかり蕩け、理性や羞恥心が失われつつある。その様子に満足したメンシスが噛み付くみたいな勢いでカーネの唇を奪った。そして半端に開いていた唇の隙間へ強引に舌を滑り込ませていく。その動きに驚き、カーネは一瞬瞳を見開いたが、彼の舌の動きのせいですぐぐずぐずに溶けていった。歯を舐められ、互いの舌が絡み合い、上顎を舌先で刺激される。もうそれだけで体の震えが止まらなくなっているというのに、メンシスは容赦なくカーネの秘裂に指を添えた。既にソコは愛液が滴り出ており、太ももや丸い臀部までもを濡らしていた。
(毎晩ほぐしてきた甲斐があったな)
流石に初めてではこうは濡れない。毎夜毎夜、深く眠るカーネの体を舌や指で貪ってきたおかげだなと、メンシスが満足気に口元を緩ませた。最後まで手出し出来ずにいたのはかなり苦しかったが、今夜でやっと全ての想いをぶつけられるのだと想うと、興奮し過ぎて目が眩んだ。
「ソ、ソコはダメです」
声を震わせ、今出せる精一杯の声量でカーネが静止を促す。だが蕩ける体から出た声では誘っているにも等しい声音だった。
「何故?」
「な、何故って、汚いですから」
「貴女は何処も汚くなんかないですけど、気になるなら綺麗にしてあげますね」
浄化魔法でもかけるのだろうと思い、「……お願いします」とカーネが呟く。するとメンシスは彼女の脚の方へ移動し、うつ伏せのままでいるカーネの臀部の間に顔を埋めていった。
「そういう意味で言った訳ではなく!」
熱くてぬるつく舌が秘裂に添えられ、余す事なく舐られた。秘裂の先で初々しく咲く肉芽を軽く吸われてカーネの視界が何度も明滅する。ぬっとと舌先が肉壁にまで及んだせいでカーネは何度も意識が飛びそうにまでなったが、いつまでも続く刺激の強さですぐに引き戻されてしまう。
「あぁっ!いや、やめっ、——んぐっ」
悲鳴に近い声がカーネの口から溢れ出る。強い享楽を無理矢理与えられ、ここまでいくともう苦しくって仕方がない。そんな姿を前にしたメンシスは陶然としたまま舌戯を続ける。一度達してしまえばいいと秘裂のナカに長い舌を押し入れると、カーネの体がビクッと激しく跳ねた。
「んおっ!」とあられもない声をあげ、白いシーツに縋り付く。強い羞恥心からいっそもう何処かへ逃げ出してしまいたいのに体の自由が全くきかない。それでも必死に、もうイヤだイヤだと子供みたいに駄々を捏ね、体をよじる。だが、そのせいで気持ちいい箇所に彼の舌が当たってしまい、カーネの体が再びビクッと跳ねた。二度三度繰り返し、体から否応無しに力が抜けていく。
小刻みに体を震わせ、「ぁ……あぁ……」と小さくこぼすカーネの甘い声がメンシスの耳をくすぐった。
ニヤリとした笑みを浮かべ、メンシスがカーネの体に覆い被さる。もうこれ以上は無理だ、早く、早く、愛液を存分に蓄えた蜜壺と化しているカーネのナカに挿れてしまいたい気持ちが抑えきれず、硬くそそり立った己の突起を濡れる秘裂に添えた。切先から滲み出ている汁と愛液とを混ぜるみたいに何度も互いの秘部を擦り合わせる。そして窪みに狙いを定めると、仄暗さの混じる笑みをメンシスは顔に浮かべた。
「最初は少し苦しいでしょうが、すぐに良くなりますからね」
「——え?」と返すも、それ以外の言葉を発する間も無く、どちゅっ!とメンシスの猛りがカーネの最奥を一気に犯した。だが恐れていた様な痛みは無く、ただただ胎の奥が重たいモノで満たされる様な錯覚をカーネが抱く。瞬時にして微かに残っていた理性と羞恥が全て焼き切れ、強烈な満足感のせいで頭の中が真っ白になった。何が起きたのかわからず思考が完全に止まる。体が無自覚のまま何度も小刻みにまた震え、ぎゅぎゅっと容赦無くナカが律動を繰り返し、共に果ててしまえと強要するみたいにメンシスを追い込もうとする。
「うっ……ぐっ!」
気味の悪い夜伽の実地教育なんか受けてなどこなかったから、彼の体は二十歳を迎えた今でも未経験のままだ。一応は『初めて』となる強い刺激を得て、メンシスが眉間に皺を寄せる。ただ挿れただけなのに直様持っていかれそうになったが、どうにかギリギリ耐え切ったみたいだ。
(あ、危なかった……)
寝バックの状態で挿れたせいもあってか、ただでさえ圧迫感が半端ないのに、カーネが二度目の絶頂を迎えてしまったからナカが蠢動を繰り返している。
「こんな短時間に二度もイクだなんて、そんなに良かったんですか?」
「い、イク?……よか……わか、んにゃ……」
呂律の回っていない口の端からは涎が溢れ出ている。だがそれを恥ずかしい拭ったり飲み込んだりする事すら叶わぬ程、カーネはもう息も絶え絶えだ。
「まだ始まったばかりなのに、今からコレでは先が思いやられますね」
少し意地の悪い声でそう言い、メンシスが馴染ませるみたいにゆるゆると腰を動かす。その度に硬く重たいモノにナカの敏感な箇所を突き上げられ、カーネは甘い声を何度もあげた。
「やっ、らめっ、う、うごか、にゃっ」
「そうなんですか?……でも、こうされた方が気持ちいいでしょう?」
熱い吐息混じりに耳元で囁かれ、ゾクッとした快楽がカーネの全身に走った。実際確かにその通りなのだが、改めてそう言われると恥ずかしくって堪らない。
「れ、れも……おもた、ぃっ」
体はほぼ重なってはいるが、体格差も考慮して流石に体重はかけていない。なのにどうして重いと感じているのかメンシスが不思議に思っていると、カーネが小さな声で、「ナカ、おもぃ、あちゅ、くて……もぉ」と今にも泣き出しそうな勢いでこぼした。そのせいでカーネのナカの圧迫感が更に酷くなった。ただでさえギリギリだったのに、先程よりも更に重く、硬く、質量まで増したソレは彼女が受け止め切れるモノではなくなりつつある。
「あ、んあぁぁっ!」
痛みはないが、息が苦しい。少し動かれるだけでも体の奥がズンと押し潰される。
「子宮、降りてきちゃってますね。欲しい欲しいって、早く孕ませてってお願いされているみたいで、嬉しいですよ」
より強い快楽を欲し、メンシスの動きが段々と早くなる。同時にカーネへの気遣いが薄くなり、性欲を満たそうとする本能的な動きへと変わっていった。
「あ、あぁぁっ、——ひっ、んぐっ!」
果てへ果てへと無遠慮な動きでまた追い込まれていく。打つ伏せのままでは逃げようがなく、まるで無理矢理犯されているみたいなのに、何故かそれが嬉しくも感じる。自分の全てを支配されている様な感覚が一層カーネを快楽の頂へと導いていく。
互いの肌がぶつかる音と、嬌声と水音とが耳の奥をも犯し、「んっ」とメンシスが小さく唸った時にはもう、二人同時に全てを吐き出していた。熱い白濁液が容赦無くカーネの最奥への注がれる。これで孕むなという方が無理があると思う程の量だ。小さく何度が体を震わせ、吐息を溢しながらメンシスが長い前髪を掻き上げる。汗で濡れているせいかその前髪は落ちる事なく、端正な顔立ちの全てが顕になった。
「……大丈夫ですか?」
優しい声色で問い掛けたが、息をする事すら難しくなっているカーネは、小さな動きで首を軽く振った。『無理です。激しすぎて、もう死にそう』と言いたい思いを込めたつもりだったのだが、メンシスはニコリと笑った。
「——もう一回、いいですよね?」
返事を待つ事なく、カーネのナカを占拠したままだったモノが硬さを取り戻す。ずるりと少し抜き、また奥へとの動きをゆっくり繰り返され、休む間も無く交合が繰り返されていく。何度も、何度も、何度も果てようがメンシスの性欲は鎮まる気配もなく、カーネの声が枯れてもそれは続いた。背後からだけじゃなく、正面からの交合や、手や太もも、口までもを使われ、清らかだった彼女の体はもうその全てをメンシスへと差す出す羽目になったのだった。
ひたすらに激しかった夜が明けて、朝日が寝所を照らし始めた。大きなベッドでは気絶したカーネが横なっている。汗や白濁液などで汚れに汚れた体やシーツはもうさっぱりと綺麗になっており、赤い執着の痕跡が無ければ普通に眠りについたと言っても皆が信じる程小ざっぱりとしている。
「……」
口元を緩ませ、枕に寄りかかって座っているメンシスがカーネの前髪にそっと触れた。たったそれだけの行為なのに、感慨深い気持ちになってくる。“カルム”と共に過ごしたベッドでまた、“カーネ”を胸に抱く事が出来たからだろう。まるで、ずっと止まっていた時間が再びきちんと動き始めたみたいだ。
「……早く、孕むといいのだが」
ヒト族とルーナ族とでは種の違いからなのか、子供が宿り難い。前世ではやっと宿った命を奪われるという結果に終わったが、今回は新たに“鏡”の聖痕を授けられたおかげでその心配は無くなった。生物学的な父親から取り返した“王冠”の聖痕は前の体とは相性が悪かったが、この体では本領を発揮してしまいそうだから、今後は魅力を軽減するマジックアイテムを用意しないとならないな——などと考えながら、メンシスは天蓋の天井を見上げてそっと瞼を閉じた。
(やっと、もうすぐ家族が揃う。これで全てが元通りだ……)
自分達の幸せを奪った者達への復讐はロロとララに譲ったからか、正直今もまだメンシスの気持ちは晴れてはいない。だが血濡れた手では聖女になるべき魂を持つ“カーネ”にはふさわしくないだろうと二人から諭されると、彼は何も言えなくなった。子供であるあの子らに、委ねてしまった。『報告』という形でしか知らずにいた事象を『カーネの夢』という形で体験し、自分の選択は間違っていたのかもしれないと後悔する事もあったが——
それでもやっと、ここまで漕ぎ着けた。
そう思えば少しだけ心が落ち着く。『平穏で、穏やかな幸せ』がこの先にはあるのだと、今なら信じられるからだろう。
疲れた顔で寝息を立てているカーネの横に寄り添い、メンシスが額を重ねてそっと目を瞑った。
「……貴女だけを、愛していますよ」
その声はカーネの夢の中にまで届いたのか、彼女は嬉しそうに笑ったのだった。
【最終話・こぼれ話 新婚旅行:完結】