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「グウェンダル……?」
仮面をつけていてもすぐにわかる。まさかこんな場所で彼と遭遇するとは思ってもみなかった。
派手な色柄のジャケットを着ている男性が多いなかで、シャツまで黒でまとめたグウェンダルは暗がりに溶け込むシンプルな装いだ。しかしながらそのたくましい体躯と上背の高さは隠しきれず、今も彼の背後では女性たちが舐めるような目つきで狙っている。
「……どうしてあなたがここに?」
グウェンダルは社交の場がそれほど得意ではないため、必要最低限のパーティーにしか行かなかった。どれだけ考えても仮面舞踏会に参加した理由がわからない。
「それは私のほうが聞きたいな。ここがどんな場所かわかっているのか?」
「どんな場所って、ただの仮面舞踏会でしょう?」
メリーティアの答えを聞くと、グウェンダルはため息をこぼした。
「君はまだ帝都に来て日が浅いから、そんなことだろうと思った。……君が参加するという噂を聞いて来てみてよかったよ。〝そういうつもり〟でここに来たわけではないのなら早く帰れ」
強引に腕を引かれて二、三歩進むと、膝がガクンと落ちかけた。
グウェンダルに抱き留められた瞬間、彼の香りにふわりと包まれる。ほとんど無意識にうっとりと胸板にすり寄ってしまった。
我に返り慌ててグウェンダルから離れる。
おかしい。強い酒を飲んだにしても、酔い方がふつうではない。
脈が速くなったり身体が熱くなったりといった症状は酔っている状態にも似ているが、グウェンダルの手が素肌に触れるたびにぴりぴりと痺れるような感覚があった。
「ここで提供されているものに口をつけたのか?」
「お酒を少し……度数が強くて酔ってしまったみたい」
呆れた様子のグウェンダルが耳元に顔を寄せてくる。吐息がかかるくすぐったさにメリーティアは小さく声をこぼし、肩を竦めた。
「飲み物にはおそらく媚薬が入っている。会場中に漂っているこの香りも、人を興奮させるような作用のある香が焚きしめてあるんだ。ここは爛れた大人の社交場だぞ、メリーティア」
「まさか……」
それを知らないケイリクスではないだろう。素性が隠せるため皇帝と密会するにはぴったりの場所かもしれないが、先にどういう場所なのか教えておいてほしかった。
そのような舞踏会とは縁遠いのに、グウェンダルは来るかどうかも定かではないメリーティアのために参加したというのだろうか。
「帰るぞ。ほら、掴まれ」
グウェンダルの力強い腕で腰を支えられると抗えない。頭がぼーっとして、彼の胸に寄りかかって甘えてしまいたかった。
けれどまだケイリクスを見つけられていないのだ。目的も果たせず帰るわけにはいかない。
グウェンダルから離れようとしたところで、別の男性に少々強引に抱き寄せられた。
柔らかなプラチナブロンドが頬をすべり、メリーティアは顔を強張らせる。
「――――陛下」
シー、とジェスチャーされて口を噤む。仮面舞踏会で相手の身分や素性を探るのはご法度だ。
とはいえ仮面をしていること以外普段のケイリクスの装いとほとんど同じなのだから、誰が見ても彼が皇帝だというのはバレバレであった。
ケイリクスはメリーティアを抱き締めたままグウェンダルに視線を向ける。
グウェンダルは感情の窺えない表情をしていた。
「彼女は先約があるんだ」
「申し訳ございません。体調が優れないように見えたので、声をおかけしてしまいました」
「いいんだよ。そなたもほかのレディと楽しむといい」
「いえ、私はもう帰ります」
グウェンダルは硬い声で答えると、メリーティアを一瞥してから踵を返した。声をかけてくる女性たちに対しては完全に無視を決め込んでいる様子だ。
メリーティアはその背をしばらく見つめていた。
もあ
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