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人生を変える決断って、大きな出来事じゃないことが多い。
誰にも気づかれないくらいの、小さな選択。
琉叶は、朝のホームルームの前、席に座りながら決めた。
――今日は、距離を取ろう。
無視じゃない。
避けるわけでもない。
ただ、自分から近づかない。
それだけ。
休み時間。
いつもなら、無意識に視線を向けていた方向を見ない。
話しかけられたら、普通に返す。
でも、自分からは行かない。
それだけのこと。
でも、それが思った以上にしんどかった。
心が勝手に動く。
体がそっちに向く。
それを、無理やり止める。
自分と戦っている感覚だった。
放課後。
洸が友達と話している姿を見て、胸が少しだけ痛んだ。
でも、同時に、ほんの少しだけ、楽だった。
――期待しなくていい。
――傷つかなくていい。
――考えなくていい。
完全に楽になったわけじゃない。
でも、確実に一歩だった。
琉叶は、心の中で小さく思った。
――これでいい。
――これが、今の私にできること。
前に進むって、走ることじゃない。
止まることでもない。
「戻らない」ことなんだと、そのとき、初めてわかった気がした。