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はごろもまごころ

4 - 第2話 泣けるドラマの罠

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2025年08月30日

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第2話 泣けるドラマの罠




配信


「こんばんは〜、“はごろもまごころ”だよ!」


カメラの前に、今日も二人の姿。

まひろは黄色い半袖シャツにデニムの半ズボン。足はぶかぶかのスニーカーで、まだ幼さの残るふくらはぎが見えている。髪はつやつやのぱっつん、瞳はきらきら。ランドセルは今日は部屋の隅に置かれていた。


ミウはパステルグリーンのワンピース姿。胸元の小さなブローチが光り、髪は緩やかなカールで肩にかかる。モカのカーディガンを羽織って、柔らかさを強調するように微笑んでいる。


「ねぇミウおねえちゃん。昨日のドラマ、観た?」

まひろが嬉しそうに声を上げる。


「え〜♡ 観たよぉ。泣けるやつでしょ? 家族が支え合うお話!」


「うん。僕も泣いちゃった。でも……なんか、変じゃない? 泣ける場面ばかりで、本当に“心にいい”のかなぁって」


コメント欄がざわつく。視聴者は「確かに泣かせすぎ」「作り物っぽい」と反応し始めた。





疑惑の芽生え


まひろは首をかしげ、眉を寄せる。

「人を泣かせてばかりいるドラマって、逆に心を疲れさせちゃうんじゃないかな」


ミウが頬に手を当て、ゆるく笑った。

「え〜♡ でも感動って素敵だよ? でも……もし製作の人が“泣けるかどうか”ばかり気にしてたら、ちょっと怖いよね」


「うん……僕はただ、みんなに“ほんとに感動してるのか”考えてほしいんだ」


無垢な声が、視聴者に疑いを芽生えさせていく。





レイNews記事化


その夜、ニュースサイト「レイNews」には記事が5本並んだ。


  1. 人気ドラマ、感動の押しつけか? 視聴者に疲労感も



  1. SNSで囁かれる『泣きすぎてしんどい』の声



  1. 制作現場の証言「まず泣かせろ、と繰り返される」



  1. 脚本家の過去発言を検証 “涙は数字”発言の真意



  1. 専門家コメント「感動はストレスにもなる」




本文は淡々としたニュース調。「一部の意見」を膨らませ、あたかも社会現象のように描く。脚本家が数年前に冗談交じりで語った言葉も「冷酷な価値観」として引用されていた。





群衆の暴走


翌日、SNSは「泣かせ商法」という言葉で溢れた。

「ほんとに疲れるだけだった」

「子どもが観て暗くなってた」

「もうこの脚本家の作品は観ない」


まとめサイトが「泣かせドラマ批判急増」と記事化。ワイドショーでは「感動ポルノ?」とコメンテーターが言い出す。


視聴率は急落。スポンサー企業は「ポジティブなイメージと合わない」と広告を取り下げた。

ドラマ制作側は急きょ脚本を修正するが、炎上は止まらなかった。





クライマックス


一週間後、番組は予定より早く最終回を迎えることが決まった。

「人々を泣かせた名作」は、「人々を疲れさせた失敗作」として歴史に刻まれる。





結末


同じ夜。

「はごろもまごころ」の配信画面に、ランドセルを抱えたまひろと、ふんわり微笑むミウが映った。


「僕……ただ“泣けるってほんとにいいことなのかな”って思っただけ」

まひろの目はきらきらしたまま。


ミウは微笑みを崩さずに言う。

「え〜♡ でも、みんなで考えられたんだから大成功だよね。

ね、まひろ?」


「うん!」


コメント欄は「気づきをありがとう」「正義の子どもだ!」で埋め尽くされた。


画面の裏で、ミウの指先は再び「レイNews」の管理画面を叩いていた。

翌朝用の新しい記事タイトルが、もう三本入力済みになっている。






画面の向こうで涙を流したのは視聴者だけではない、切り捨てられた制作陣もまた静かに泣いていた。

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